Published 17 Nov 2025

米国ETFの二重課税にならないように:1000万円以上保有する投資家必見の資産運用術

米国ETFの二重課税にならないように:1000万円以上保有する投資家必見の資産運用術

米国ETF投資における二重課税の仕組みを徹底的に解説し、それを合法的に回避するための「裏ワザ」である外国税額控除について、具体的な手順から注意点まで網羅的に解説します。 さらに、最強の非課税制度であるNISAの活用法や1000万円以上の資産を持つ投資家が取るべき最適戦略まで踏み込み、あなたの資産形成を加速させるための実践的な知識を提供します。

米国ETFは、世界経済の成長を捉えるための強力なツールとして、多くの日本の投資家から人気を集めています。


しかし、その一方で「二重課税」という無視できない問題が存在します。


特に1000万円以上の資産を運用する投資家にとって、この税金の負担はリターンを大きく損なう要因となりかねません。


本記事では、米国ETF投資における二重課税の仕組みを徹底的に解説し、それを合法的に回避するための「裏ワザ」である外国税額控除について、具体的な手順から注意点まで網羅的に解説します。


さらに、最強の非課税制度であるNISAの活用法1000万円以上の資産を持つ投資家が取るべき最適戦略まで踏み込み、あなたの資産形成を加速させるための実践的な知識を提供します。

第1章:なぜ米国ETFで二重課税が発生するのか?その仕組みを徹底解説

米国ETFから配当金(分配金)を受け取ると、私たちの手元に届くまでに2段階の課税を受けています。これが「二重課税」の正体です。


  1. 米国での現地課税:まず、配当金が支払われる米国で10%が源泉徴収されます。

  2. 日本での国内課税:次に、米国で税金が引かれた後の金額に対して、日本国内で20.315%(所得税15.315%+住民税5%)が課税されます。

▼米国ETFの配当金にかかる税金の流れ

課税段階

課税国 

税率

備考

第1段階

米国

10%

現地で源泉徴収される

第12段階

日本

20.315%

米国での課税後の金額に対して課税


例えば、米国ETFから年間10万円の配当金を受け取った場合を考えてみましょう。


  • 米国での課税:100,000円 × 10% = 10,000円

  • 日本での課税対象額:100,000円 - 10,000円 = 90,000円

  • 日本での課税額:90,000円 × 20.315% = 18,283円

  • 合計の納税額:10,000円 + 18,283円 = 28,283円

  • 最終的な手取り額:100,000円 - 28,283円 = 71,717円

何もしなければ、配当金の約28.3%が税金として徴収されてしまうのです。


この国際的な二重課税を調整するために用意されているのが、次章で解説する「外国税額控除」という制度です。

第2章:【本題】米国ETFの二重課税を回避する「裏ワザ」とは?

この二重課税問題を解決する合法的な「裏ワザ」、それが「外国税額控除」です。


外国税額控除とは、外国で納めた税金(この場合は米国で源泉徴収された10%)を、日本で納めるべき所得税や住民税から差し引くことができる制度です。 


この手続きを行うことで、二重に課税されている部分を取り戻し、税負担を軽減することが可能になります。

【外国税額控除の仕組み】

  • 目的:国際的な二重課税を調整し、投資家の過度な税負担をなくすこと。

  • 方法:確定申告を行うことで、外国で支払った税額を日本の税額から控除する。

  • 対象:米国ETFの配当金など、海外で源泉徴-収された税金がある所得。


ただし、注意点として、外国税額控除には控除限度額が設けられています。 


その年の所得や他の控除の状況によって、米国で支払った税金の全額が戻ってくるとは限りません。


控除限度額の計算は少し複雑ですが、基本的にはその人の所得税額が多いほど、控除できる上限も大きくなる仕組みです。

第3章:【完全ガイド】外国税額控除の具体的なやり方と確定申告の手順

外国税額控除を受けるためには、会社員であっても確定申告が必要です。 


ここでは、具体的な手順をステップバイステップで解説します。

ステップ1:必要書類の準備

まずは、確定申告に必要な書類を揃えましょう。


主に以下の書類が必要です。


  • 確定申告書:税務署や国税庁のウェブサイトから入手します。

  • 外国税額控除に関する明細書:確定申告書と同様に入手します。

  • 特定口座年間取引報告書:利用している証券会社から、通常は翌年の1月中旬ごろに電子交付または郵送で届きます。 この書類には、年間の配当金額や源泉徴収された税額(国内・国外)が記載されており、申告書作成の基となります。

  • 源泉徴収票:勤務先の会社から受け取ります。

ステップ2:確定申告書の作成(国税庁「確定申告書等作成コーナー」が便利)

国税庁のウェブサイトにある「確定申告書等作成コーナー」を利用すれば、画面の案内に従って入力するだけで、比較的簡単に申告書を作成できます。

▼主な入力の流れ

  1. 収入・所得金額の入力:源泉徴収票の内容を転記します。

  2. 株式等の配当所得等の入力:「特定口座年間取引報告書」の内容を入力します。ここで、配当金の収入金額、源泉徴収税額(所得税・住民税)、そして最も重要な「外国所得税の額」を入力する項目があります。

  3. 税額控除の入力:入力の最終段階で「税額控除」のセクションに進み、「外国税額控除」を選択します。

  4. 外国税額控除に関する明細書の作成:「特定口座年間取引報告書」に記載されている外国所得税の額や、配当金の額などを基に、「外国税額控除に関する明細書」に必要な情報を入力していきます。

  5. 控除額の自動計算:必要情報を入力すると、システムが所得税と住民税それぞれの控除限度額と、実際に控除される金額を自動で計算してくれます。

ステップ3:申告書の提出

作成した確定申告書は、以下のいずれかの方法で提出します。


  • e-Tax(電子申告):マイナンバーカードとスマートフォン(またはICカードリーダライタ)があれば、自宅からオンラインで提出でき非常に便利です。

  • 郵送:管轄の税務署に郵送します。

  • 税務署へ持参:管轄の税務署の窓口に直接提出します。


提出期限は、原則として翌年の2月16日から3月15日までです。

第4章:【シミュレーション】外国税額控除で一体いくら戻ってくるのか?

では、実際に外国税額控除を利用すると、どのくらいの税金が戻ってくるのでしょうか。


ここでは、1000万円以上の資産を運用する投資家を想定したモデルケースでシミュレーションしてみましょう。


【前提条件】

  • 課税所得金額:700万円(所得税率23%)

  • 米国ETFの年間配当金額:50万円

ケース1:外国税額控除を利用しない場合

  1. 米国での源泉徴収額
    500,000円 × 10% = 50,000円

  2. 日本での課税対象額
    500,000円 - 50,000円 = 450,000円

  3. 日本での源泉徴収額(所得税・住民税)
    450,000円 × 20.315% = 91,417円

  4. 合計納税額
    50,000円 + 91,417円 = 141,417円

  5. 最終手取り額
    500,000円 - 141,417円 = 358,583円

ケース2:外国税額控除を利用した場合

確定申告を行い、外国税額控除を適用します。


控除限度額の計算は複雑なためここでは概算としますが、課税所得700万円の場合、米国で徴収された50,000円は十分に控除限度額の範囲内に収まる可能性が非常に高いです。


  • 還付される可能性のある最大額:50,000円


この50,000円が、まず所得税から控除され、控除しきれない分は住民税から控除される形で還付されます。

▼結果の比較

-

外国税額控除なし

外国税額控除あり

合計納税額

141,417円

91,417円

最終手取り額

358,583円

408,583円

差額

-

+50,000円


このシミュレーションのように、年間50万円の配当がある場合、確定申告をするだけで約5万円も手取り額が増える計算になります。


1000万円以上の資産を運用し、配当金額がさらに大きくなれば、この差はより拡大します。


手間を惜しまずに確定申告をすることが、いかに重要かがお分かりいただけるでしょう。

第5章:【注意点】外国税額控除を使う前に知っておくべきこと

非常にメリットの大きい外国税額控除ですが、利用する際にはいくつかの注意点があります。

  1. 控除限度額がある
    前述の通り、外国で支払った税金の全額が必ずしも還付されるわけではありません。 控除限度額は以下の式で計算されます。
    所得税の控除限度額 = その年の所得税額 × (その年の国外所得総額 ÷ その年の所得総額)
    所得が低い場合や、国外所得の割合が極端に小さい場合などは、控除しきれないケースも考えられます。

  2. 3年間の繰越控除が可能
    その年の所得税・住民税から控除しきれなかった外国税額は、翌年以降3年間にわたって繰り越して控除を受けることができます。

  3. 確定申告の手間がかかる
    当然ながら、確定申告という手続きの手間が発生します。しかし、e-Taxなどを活用すれば、一度やり方を覚えてしまえば翌年以降はスムーズに行えるようになります。還付される金額を考えれば、その手間をかける価値は十分にあると言えるでしょう。

  4. 国民健康保険料に影響が出る可能性
    配当所得を申告分離課税ではなく、総合課税で申告した場合、合計所得金額が増加し、国民健康保険料が上がってしまう可能性があります。 ご自身の所得状況に合わせて、どちらの課税方式が有利になるかを確認することが重要です。

第6章:【NISA活用術】二重課税問題を「そもそも発生させない」最強の選択肢

ここまで外国税額控除について解説してきましたが、実はよりシンプルかつ強力な解決策が存在します。


それが新NISA(少額投資非課税制度)の活用です。


NISA口座内で米国ETFを保有し、配当金を受け取った場合、日本国内の税金(20.315%)が完全に非課税になります。

【NISA口座のメリット】

  • 国内課税がゼロ:通常20.315%かかる税金が非課税になるため、手取り額が大幅に増加します。

  • 確定申告が不要:外国税額控除のような面倒な確定申告の手間が一切かかりません。

【NISA口座の重要な注意点】

NISA口座を利用する上で、絶対に知っておかなければならないことがあります。


それは、米国の現地課税10%は課税され、かつ外国税額控除を適用することはできないという点です。


NISAはあくまで日本の税制優遇制度であるため、海外での課税には影響を及ぼしません。


また、日本で非課税となっているため、「二重課税」の状態にはあたらず、外国税額控除の対象外となります。

▼口座別の税金比較(配当金10万円の場合)


口座の種類

米国課税(10%)

日本課税(20.315%)

最終的な

税負担

手取り額

備考

課税口座(申告なし)

10,000円

18,283円

28,283円

71,717円

-

課税口座(外国税額控除あり)

10,000円

18,283円

約18,283円

約81,717円

確定申告で約1万円還付

NISA口座

10,000円

0円

10,000円

90,000円

最も有利



上の表を見れば一目瞭然ですが、ほとんどの投資家にとってNISA口座で米国ETFを保有することが、手取り額を最大化する最も有利な選択肢となります。

第7章:1000万円以上保有する投資家への最適戦略

これまでの情報を踏まえ、1000万円以上の資産を持つ投資家が取るべき具体的な戦略を提案します。

戦略1:最優先でNISAの非課税保有限度額(1800万円)を使い切る

年間360万円の投資枠を最大限に活用し、まずはNISA口座を埋めることを最優先に考えましょう。


特に、配当利回りの高い高配当ETFなどは、NISAの非課税メリットを最大限に享受できるため、優先的にNISA口座で購入することをおすすめします。


戦略2:NISA枠を超えた分は課税口座で運用し、必ず外国税額控除を行う

1000万円、2000万円と資産が増えていくと、NISAの生涯非課税限度額1800万円を超える部分が出てきます。


その部分は課税口座(特定口座など)で運用することになりますが、その際は手間を惜しまず、必ず確定申告をして外国税額控除を適用しましょう。


資産額が大きくなるほど配当金の額も増え、外国税額控除による還付額も大きくなります。この一手間が、長期的なリターンに大きな差を生むのです。

【1000万円投資家のポートフォリオ戦略例】

  1. NISA口座(成長投資枠・つみたて投資枠):S&P 500や全世界株式に連動するインデックス型の米国ETFをコア資産として積み立てる。高配当ETFなどもこちらに配置。

  2. 課税口座(特定口座):NISA枠で収まらない部分のサテライト資産や、追加のコア資産を運用。配当金を受け取ったら、翌年に必ず外国税額控除の確定申告を行う。


この「NISA」と「課税口座+外国税額控除」のハイブリッド戦略こそが、1000万円以上の資産を持つ投資家が税金を最適化し、資産を効率的に成長させるための最適解と言えるでしょう。

まとめ

本記事では、米国ETFの二重課税問題と、その対策について詳しく解説しました。


最後に、重要なポイントを振り返ります。


  • 米国ETFの配当金には、米国(10%)と日本(20.315%)で二重に課税される。

  • 課税口座で発生した二重課税は、確定申告で「外国税額控除」を申請すれば取り戻せる可能性がある。

  • 「NISA口座」を活用すれば、日本国内の税金が非課税になり、確定申告も不要で最も手取りが多くなる。

  • ただし、NISA口座では米国の10%課税は回避できず、外国税額控除も使えない。

  • 1000万円以上の投資家は、まずNISA枠を最大限活用し、超えた分を課税口座で運用して外国税額控除を行う「ハイブリッド戦略」が最適。


税金は、資産運用における見過ごされがちなコストです。


しかし、正しい知識を身につけ、適切な手続きを行うことで、その負担を大きく軽減することができます。


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