Published 18 Nov 2025

不動産を法人で買うと節税になる?メリットとリスクを徹底解説

不動産を法人で買うと節税になる?メリットとリスクを徹底解説

今、熱い視線を集めているのが「不動産の法人化」という選択肢です。 個人ではなく、法人(資産管理会社など)を設立して不動産を所有・運営することで、様々な節税メリットを享受できる可能性があるのです。

1,000万円以上の余裕資金を保有する方にとって、資産をいかに効率良く増やし、そして守っていくかは重要なテーマです。


株式や投資信託など多様な選択肢がある中で、「不動産投資」ミドルリスク・ミドルリターン安定した収益が期待できるため、有力な運用先として常に注目されています。


しかし、不動産投資で一定以上の収益が上がるようになると、必ず直面するのが「税金」の問題です。


個人の所得税累進課税のため、所得が増えれば増えるほど税率も高くなり、最大で45%(住民税と合わせると約55%)もの税負担が発生します。


「せっかく不動産経営が軌道に乗っても、利益の半分近くが税金で消えてしまう…」


そんな悩みを抱える方々から今、熱い視線を集めているのが「不動産の法人化」という選択肢です。


個人ではなく、法人(資産管理会社など)を設立して不動産を所有・運営することで、様々な節税メリットを享受できる可能性があるのです。


この記事では、1,000万円以上の資産を運用したいと考えている方に向けて、不動産を法人で購入するメリット見落としがちなリスクデメリットを徹底的に解説します。


圧倒的な情報量と質を担保し、あなたの資産運用戦略に新たな視点を提供します。


最後まで読めば、あなたが不動産の法人化を検討すべきか、その最適なタイミングはいつなのか、そして成功させるための具体的なステップまで、明確に理解できるはずです。


第1章:なぜ不動産を「法人」で買うと節税になるのか?個人と法人の税率の違い

不動産を法人で所有すると節税になると言われる最も大きな理由は、個人に課される「所得税」と法人に課される「法人税」税率構造の違いにあります。


個人の所得税は「累進課税」

個人の不動産所得は、給与所得など他の所得と合算され、「総所得金額」に対して所得税が課されます。


この所得税は「累進課税」という仕組みが採用されており、所得が高くなればなるほど、より高い税率が適用されます。

個人の所得税・住民税の合計税率

課税される所得金額

所得税率

住民税率

合計税率

195万円以下

5%

10%

15%

195万円超 330万円以下

10%

10%

20%

330万円超 695万円以下

20%

10%

30%

695万円超 900万円以下

23%

10%

33%

900万円超 1,800万円以下

33%

10%

43%

1,800万円超 4,000万円以下

40%

10%

50%

4,000万円超

45%

10%

55%

※復興特別所得税は考慮していません。


表を見てわかる通り、課税所得が900万円を超えると税率は一気に43%に跳ね上がります。

法人税は「比例税率」

一方、法人の利益(所得)に対して課される法人税は、原則として「比例税率」です。


資本金1億円以下の中小法人の場合、所得に応じて税率が2段階になっていますが、個人ほどの急激な税率上昇はありません。

法人実効税率(資本金1億円以下の中小法人の場合)

課税される所得金額

法人実効税率(目安)

~400万円以下

約21%

400万円超~800万円以下

約23%

800万円超

約33%

※法人実効税率とは、法人税、地方法人税、法人住民税、事業税などを合計した、所得に対する実質的な税負担割合のことです。

【ポイント】

個人の所得税率は最大55%に達するのに対し、法人の実効税率は高くても約33%で頭打ちになります。


つまり、不動産所得と他の所得を合わせた課税所得が一定額を超えると、個人の税率が法人の税率を上回る逆転現象が起こるのです。


この税率の差こそが、不動産を法人化する最大の節税メリットの源泉となります。


第2章:【徹底解説】不動産を法人で購入する8つのメリット

法人化のメリットは、単純な税率差だけにとどまりません。ここでは、多角的な視点から8つのメリットを深掘りして解説します。

メリット1:圧倒的な節税効果

前述の税率差に加え、法人は個人事業よりも経費として認められる範囲が広く、様々な節税スキームを活用できます。


  • 所得の分散(役員報酬)
    法人化すると、自分自身や家族を役員に設定し、「役員報酬」という形で給与を支払うことができます。役員報酬は法人の経費として計上できるため、法人の所得を圧縮できます。さらに、給与を受け取った側は「給与所得控除」という、いわばサラリーマンの必要経費のような控除を受けられるため、世帯全体で見た場合の手残りを最大化することが可能です。


  • 経費計上できる範囲の拡大
    個人事業では経費として認められにくい項目も、法人であれば経費計上できるケースが増えます。

    • 生命保険料: 経営者を被保険者とする生命保険や医療保険の保険料を、一定の条件下で経費(損金)に算入できます。これは将来の退職金準備にも繋がります。

    • 退職金: 経営者自身や家族従業員に対して退職金を支払うことができ、これは法人の経費になります。退職金を受け取る側も、退職所得控除という非常に優遇された税制が適用されるため、大きな節税効果が期待できます。

    • 社宅: 法人名義で借り上げた物件を役員や従業員に貸し出す(社宅)ことで、家賃の一部を経費にできます。

    • 出張手当や車両関連費など

メリット2:円滑な相続・事業承継対策

不動産を個人で所有している場合、相続が発生するとその不動産自体が相続財産となり、評価額も高額になりがちです。


遺産分割で揉めたり、高額な相続税に悩まされたりするケースは少なくありません。

法人化することで、これらの問題を回避しやすくなります。


  • 相続財産が「不動産」から「自社株式」へ

法人名義の不動産は、直接の相続対象にはなりません。相続財産となるのは、その法人の「株式」です。 株式は不動産と違って分割しやすいため、複数の相続人に公平に財産を分けることが容易になります。

  • 相続税評価額の圧縮
    非上場会社の株式の評価額は、不動産そのものの時価評価額よりも低く抑えられる可能性があります。 これにより、相続税の課税対象となる財産の評価額が下がり、結果として相続税の負担を軽減できるのです。

  • 計画的な資産移転
    家賃収入は法人の利益となり、役員報酬として家族に支払うことで、生前から計画的に次世代へ資産を移転できます。 これは贈与税の対象とならないため、合法的に相続財産を減らす効果があります。

メリット3:所得の分散による世帯年収の最適化

メリット1でも触れましたが、家族を役員にすることで所得を分散できるのは非常に大きな利点です。


例えば、不動産所得が2,000万円ある場合、個人で受け取ると高い税率が課されます。


しかし、法人化して本人に1,000万円、配偶者に1,000万円の役員報酬を支払えば、それぞれに給与所得控除が適用され、低い税率区分で納税できるため、世帯全体での手取り額が増加します。

メリット4:損益通算と繰越控除の有利性

不動産経営では、大規模修繕などで一時的に大きな赤字が出ることがあります。


この赤字の取り扱いも、法人の方が有利です。


  • 損益通算の範囲
    法人の場合、不動産事業で出た赤字は、他の事業(例えば物販など)の黒字と相殺(損益通算)できます。

  • 欠損金の繰越期間が長い
    損益通算してもなお残った赤字(欠損金)は、翌年以降の黒字と相殺できます。この繰越が可能な期間が、個人(青色申告)が3年間であるのに対し、法人は10年間と非常に長くなっています。 これにより、長期的な視点での節税計画が立てやすくなります。

メリット5:融資(資金調調)の有利性と社会的信用の向上

一般的に、個人事業主よりも法人の方が社会的信用は高いと見なされます。 

そのため、金融機関から融資を受ける際に有利に働くことがあります。


事業計画や財務状況がしっかりしていれば、個人では難しい規模の融資を引き出し、より大きな物件を購入するなど、事業拡大のスピードを速めることも可能です。

メリット6:決算期を自由に設定できる

個人の場合は会計期間が1月1日から12月31日までと決まっていますが、法人は自由に決算期を設定できます。


例えば、繁忙期を避けて決算業務を行ったり、利益が出そうなタイミングをコントロールしたりと、戦略的な経営が可能になります。

メリット7:消費税の還付を受けられる可能性

※こちらの方法は専門的な知識を要し、税制改正のリスクもあるため、必ず弁護士や税理士等の専門家に相談してください


課税事業者を選択し、一定の条件を満たすことで、収益物件(建物部分)の購入時に支払った消費税の還付を受けられる場合があります。


特に高額な物件を購入する際には大きなメリットとなり得ますが、制度が複雑なため安易な判断は禁物です。

メリット8:経営の透明性と公私分離

法人化すると、個人の家計と事業の経理を明確に分ける必要が出てきます。


これにより、どんぶり勘定を防ぎ経営状況を客観的に把握しやすくなるというメリットもあります。


第3章:見落としがちな罠!不動産を法人で購入する5つのリスクとデメリット

多くのメリットがある一方で、法人化には無視できないリスクやデメリットも存在します


これらを理解せずに進めると、「こんなはずではなかった」と後悔することになりかねません。

リスク1:法人設立・維持にコストがかかる

法人を設立し、維持していくためには様々なコストが発生します。


  • 設立費用
    株式会社を設立する場合、定款認証手数料や登録免許税などで約25万円程度の費用がかかります。合同会社の場合はやや安く済みますが、それでも一定の初期費用は必要です。


  • 維持費用

    • 法人住民税の均等割: 法人は、たとえ事業が赤字であっても、最低でも年間約7万円の法人住民税(均等割)を納める義務があります。

    • 税理士報酬: 法人の決算申告は個人よりも複雑なため、税理士との顧問契約がほぼ必須となります。 これには年間数十万円の費用がかかります。

    • 社会保険料の負担: 役員報酬を支払う場合、原則として社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入が義務付けられます。 保険料は法人と個人で折半して負担するため、キャッシュフローを圧迫する要因になります。


リスク2:会計・税務処理の煩雑さ

個人の確定申告に比べ、法人の会計処理や税務申告は格段に複雑になります。


日々の経理処理から決算書の作成、法人税申告書の作成まで、専門的な知識が求められるため、税理士や弁護士等の専門家のサポートなしに行うのは現実的ではありません。

リスク3:法人のお金を自由に使えない

個人事業主であれば事業で得た利益は(納税後)自由に使えますが、法人の場合、会社のお金と個人のお金は厳格に区別されます。 


法人の利益を個人が使うためには、役員報酬や配当といった正規の手続きを踏む必要があり、勝手に引き出して生活費に充てることはできません。

リスク4:売却益に対する税率が不利になる場合がある

不動産を売却して利益(譲渡益)が出た場合の税金にも注意が必要です。


  • 個人の場合(譲渡所得)

    • 所有期間5年超(長期譲渡所得):税率 約20%

    • 所有期間5年以下(短期譲渡所得):税率 約39%

  • 法人の場合

    • 売却益は他の所得と合算され、法人税率(約33%) で課税されます。


つまり、5年以上所有した不動産を売却する場合、個人の方が税率面で有利になります。


短期的な売買を繰り返すのであれば法人が有利な場合もありますが、長期保有を前提とする場合は、出口戦略まで見据えて法人化を判断する必要があります。

リスク5:法人化して3年以内の相続に注意

相続税対策として法人化した場合、建物を法人に移してから3年以内に相続が発生すると、その建物の相続税評価額は時価(通常の取引価額)で評価されてしまいます。 


これでは評価額の圧縮効果が得られないため、特に高齢で法人化を検討する場合は注意が必要です。


第4章:あなたはどっち?法人化を検討すべき人の具体的な年収・所得ライン

では、具体的にどのくらいの所得があれば、法人化のメリットがデメリットを上回るのでしょうか。


一つの重要な判断基準となるのが「課税所得900万円」のラインです。

「課税所得900万円」の壁

前述の税率表を再度見ると、個人の所得税率は課税所得900万円を超えると33%となり、住民税と合わせると43%になります。 


一方、法人の実効税率所得が800万円を超えても約33%で頭打ちです。


この税率が逆転するポイントが、法人化を検討する一つの目安となります。

重要ポイント

ここでいう「課税所得」とは、不動産所得だけでなく、サラリーマンの場合は給与所得と不動産所得を合算した後の金額であることに注意してください。 


例えば、給与所得が700万円、不動産所得が200万円の場合でも、合計所得は900万円となり、法人化を検討する領域に入ってきます。

シミュレーション:課税所得1,500万円の場合の税額比較

-

個人の場合

法人の場合

課税所得

1,500万円

1,500万円

適用税率(住民税込)

43%(控除額1,536,000円)

約33%(実効税率)

税額(概算)

(1,500万円 × 43%) - 1,536,000円 = 491.4万円

1,500万円 × 33% = 495万円

役員報酬の活用

-

役員報酬1,000万円を支払い、法人の所得を500万円に圧縮

法人税:500万円 × 約23% = 115万円

個人の所得税等:(1,000万円 - 給与所得控除) × 税率 ≒ 150万円<br>・合計税額 ≒ 265万円


※上記は簡略化したシミュレーションです。実際には社会保険料や各種控除などにより変動します。


このシミュレーションからもわかるように、単純に税率を比較するだけでなく、役員報酬などのスキームを活用することで、法人化は手残りを最大化する強力なツールとなり得ます。


ただし、最適な役員報酬の額や社会保険料の負担なども含めて、専門の税理士に詳細なシミュレーションを依頼することが不可欠です。

専業大家の場合の目安

給与所得がない専業の不動産投資家の場合、より低い所得水準で法人化のメリットが出てきます。


一般的には、不動産の課税所得330万円から600万円を超えたあたりから検討を始めると良いでしょう。


第5章:不動産法人化の2つの方法「法人成り」と「新規法人設立」

不動産を法人で所有するには、大きく分けて2つの方法があります。

方法1:個人で所有する不動産を法人へ売却(法人成り)

すでに個人で収益不動産を所有している人が、新たに設立した法人にその不動産を売却する方法です。


メリット

  • 既存の物件を法人に移すことで、すぐに法人での不動産経営を開始できる。


デメリット・注意点

  • 譲渡所得税: 個人から法人への売却で利益が出た場合、個人に譲渡所得税が課される。

  • 不動産取得税・登録免許税: 法人は新たに不動産を取得するため、不動産取得税や所有権移転登記のための登録免許税がかかる。

  • 売買価格の設定: 時価とかけ離れた不当に安い価格で売買すると、税務署から否認されるリスクがある。適正な時価で取引する必要がある。


方法2:新規で不動産を購入する際に法人名義で取得

これから不動産投資を始める、あるいは物件を買い増すタイミングで法人を設立し、最初から法人名義で購入する方法です。


メリット

  • 個人から法人へ移転する際の譲渡所得税などがかからない。

  • 最初から法人での経営をスタートできるため、会計処理などがスムーズ。


デメリット・注意点

  • 設立したばかりの法人は実績がないため、金融機関からの融資審査が厳しくなる可能性がある。


どちらの方法が良いかは、個人の状況や所有している物件によって異なります。


特に「法人成り」の場合は、移転コストが将来の節税メリットを上回ってしまう可能性もあるため、慎重なシミュレーションが必要です。


第6章:失敗しないための不動産法人化・5つのステップと注意点

不動産の法人化は、計画的に進めることが成功のカギとなります。

ステップ1:目的の明確化

まず、「なぜ法人化したいのか」という目的を明確にしましょう。


「所得税の節税」「相続対策」「事業規模の拡大」など、目的によって最適な法人の形や戦略は変わってきます。

ステップ2:専門家への相談

法人化は税務・法務の専門知識が不可欠です。


必ず不動産に強い税理士や弁護士等の専門家に相談しましょう。


現状分析と詳細なシミュレーションを依頼し、本当に法人化すべきか、どのタイミングが良いかを客観的に判断してもらうことが重要です。

ステップ3:会社形態の決定

法人には「株式会社」と「合同会社」があります。


  • 株式会社: 社会的信用度が高いが、設立費用や手続きが合同会社に比べて煩雑。

  • 合同会社: 設立費用が安く、経営の自由度が高い。資産管理会社であれば、合同会社を選択するケースも多い。


どちらが良いかは一概には言えず、事業の将来的な展望なども踏まえて選択します。

ステップ4:法人設立手続き

定款の作成・認証、資本金の払い込み、法務局への登記申請など、法的な手続きを進めます。 


これらの手続きは司法書士や弁護士に依頼するのが一般的です。

ステップ5:不動産の取得・移転と事業開始

法人口座の開設、税務署への届出などを済ませ、不動産の購入や個人からの移転手続きを行います。


その後、法人としての不動産賃貸経営がスタートします。

【3つの重要注意点】

  1. 税理士選びが最も重要: 法人化の成否は、パートナーとなる税理士の力量に大きく左右されます。不動産税務の実績が豊富で、親身に相談に乗ってくれる専門家を選びましょう。

  2. 出口戦略(売却)まで見据える: 前述の通り、長期保有物件の売却は個人の方が税率上有利です。将来的な売却の可能性まで考慮した上で、法人化を判断することが大切です。

  3. 設立タイミングの見極め: 焦りは禁物です。「課税所得900万円」などの目安を参考にしつつも、自分の資産状況やライフプランに合わせた最適なタイミングを専門家と相談して見極めましょう。


まとめ

不動産を法人で購入・運営することは、特に課税所得が900万円を超えるような高所得者にとって、所得税や相続税の負担を大幅に軽減できる可能性がある、非常に有効な資産運用戦略です。

【法人化の主なメリット】

  • 所得税と法人税の税率差による節税

  • 家族への所得分散(役員報酬)

  • 経費として認められる範囲の拡大(退職金、生命保険など)

  • 円滑な相続・事業承継対策

  • 赤字の繰越期間が長い(10年間)


一方で、設立・維持コストの発生、会計処理の煩雑さ、資金の自由度が低いといったデメリットやリスクも存在します。


法人化は、すべての不動産投資家にとって万能な解決策ではありません。


メリットとデメリットを天秤にかけ、自身の所得水準、資産規模、家族構成、そして将来の目標などを総合的に考慮した上で、慎重に判断すべき経営判断です。


もしあなたが、不動産投資による税負担の重さに悩み、より効果的な資産形成を目指したいと考えているのであれば、最初の一歩として、不動産税務に精通した弁護士や税理士等の専門家に相談してみることを強くお勧めします。


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