1,000万円以上の資産を運用する投資家が「リバランス」という資産運用の基本テクニックを活用し、合法的かつ効果的に株式譲渡益に対する税金を最小化するための具体的な方法を、徹底的に解説します。
はじめに
「順調に株式投資で利益が出ているものの、確定申告のたびに多額の税金を納めることに頭を悩ませていないだろうか?」
1,000万円以上の金融資産を運用する投資家にとって、資産の増加に伴い、株式譲渡益にかかる税金は無視できない大きなコストとなります。
利益の約2割が税金として徴収される現実を前に、効率的な資産形成を目指す上で「節税」は極めて重要なテーマです。
しかし、多くの投資家が節税と聞くと「複雑で難しい」「専門家でないと無理だ」と考えてしまいがちです。
そこで本記事では、1,000万円以上の資産を運用する投資家が「リバランス」という資産運用の基本テクニックを活用し、合法的かつ効果的に株式譲渡益に対する税金を最小化するための具体的な方法を、徹底的に解説します。
この記事を最後まで読めば、あなたは以下の知識とスキルを習得できます。
株式譲渡益にかかる税金の基本的な仕組み
リバランスがなぜ税金対策に有効なのかというメカニズム
明日から実践できる4つの具体的なリバランス節税術
ケーススタディを通じた実践的なシミュレーション
税金対策を行う上での注意点と長期的な資産形成の考え方
単なる理論の解説に留まらず、具体的な数字や表を多用し、あなたが自身のポートフォリオに当てはめて考えられるよう、分かりやすく解説を進めていきます。
リバランスを単なる資産配分の調整作業から、戦略的なタックス・マネジメント(税金対策)へと昇華させ、あなたの資産形成を次のステージへと引き上げましょう。
第1章:株式譲渡益にかかる税金の基本を再確認する
効果的な節税戦略を立てる前に、まずは敵を知る必要があります。
つまり、株式譲渡益にどのような税金が、どれくらいの税率でかかるのかを正確に理解することが第一歩です。
1. 譲渡益にかかる税金の種類と税率
個人が上場株式等を売却して得た利益(譲渡益)には、「申告分離課税」という方式で税金が課されます。
これは、給与所得や事業所得など他の所得とは合算せず、譲渡益単体で税額を計算する方法です。
税率の内訳は以下の通りで、合計で20.315%となります。
例えば、100万円の譲渡益が出た場合、203,150円が税金として徴収されることになります。
この税率をいかにコントロールするかが、本記事の主題です。
譲渡益の計算方法は以下の通りです。
譲渡益 = 譲渡価額(売却価格) - 必要経費(取得費 + 売却手数料など)
2. 特定口座と一般口座の違い
株式投資を行う際、主に「特定口座(源泉徴収あり)」「特定口座(源泉徴収なし)」「一般口座」の3種類の口座から選択します。
税金対策を考える上で、この口座の違いを理解することは非常に重要です。
多くの投資家は「特定口座(源泉徴収あり)」を利用しているかと思います。
この口座は手間がかからず便利ですが、後述する「損益通算」や「繰越控除」といった節税策を最大限に活用するためには、確定申告が鍵となります。
3. 2025年からの税制改正(ミニマムタックス)について
2025年以降、合計所得金額が非常に高い、いわゆる超富裕層を対象とした「ミニマムタックス」が導入されます。
これは、年間の合計所得から3.3億円を控除した金額に22.5%を乗じた金額が、従来の計算方法による所得税額を上回る場合、その差額を追加で納税するという制度です。
M&Aによる株式売却など、極めて大きな利益を得る場合には影響が出る可能性がありますが、多くの個人投資家にとっては、現行の20.315%が基本となると考えてよいでしょう。
第2章:リバランスとは何か?なぜ税金対策になるのか?
税金の基本を理解したところで、いよいよ本題である「リバランス」について解説します。
リバランスの本質を理解することが、効果的な節税への近道です。
1. リバランスの基本的な考え方
リバランスとは、資産配分の比率を定期的に見直し、当初定めた目標の比率に戻すことを指します。
例えば、資産1,000万円を「国内株式50%:外国株式50%」の比率で運用を開始したとします。
当初のポートフォリオ: 国内株式500万円、外国株式500万円
1年後、外国株式が好調で大きく値上がりし、国内株式は横ばいだったとします。
1年後のポートフォリオ: 国内株式500万円、外国株式700万円(合計1,200万円)
資産配分比率: 国内株式 約41.7%、外国株式 約58.3%
このまま放置すると、当初想定していたよりも外国株式への投資比率が高まり、ポートフォリオ全体のリスクが大きくなってしまいます。
そこでリバランスを行います。
リバランスの方法: 値上がりして比率が増えた外国株式の一部を売却し、その資金で比率が減った国内株式を買い増します。
目標比率の再計算: 総資産1,200万円の50%ずつなので、国内株式600万円、外国株式600万円が目標。
売買の実行:
外国株式を100万円分売却する(700万円 → 600万円)
国内株式を100万円分購入する(500万円 → 600万円)
リバランス後のポートフォリオ: 国内株式600万円、外国株式600万円となり、再び「50%:50%」の比率に戻る。
このように、リバランスはポートフォリオのリスクを一定に保つためのメンテナンス作業なのです。
2. リバランスが税金対策につながるメカニズム
リバランスのプロセスに注目してください。「値上がりした資産を売却し、値下がりした資産を購入する」という行為が自然と含まれています。
これが税金対策の鍵を握ります。
値上がりした資産を売却 = 利益の確定
値下がりした資産を売却 = 損失の確定
リバランスは、利益確定と損失確定を計画的に行う絶好の機会を提供してくれます。
つまり、どのタイミングで、どの銘柄の利益や損失を確定させるかを投資家自身がコントロールできるのです。
このコントロールこそが、後述する「損益通算」や「年間の利益確定額の調整」といった具体的な節税テクニックの土台となります。
ただ漠然と利益が出たから売る、損失が出たから塩漬けにする、という場当たり的な対応ではなく、ポートフォリオ全体を最適化するプロセスの中で、戦略的に税金を最小化していくことが可能になるのです。
第3章:税金を最小化するリバランスの具体的な実践術
ここからは、リバランスを活用した4つの具体的な節税テクニックを、詳細な手順と共に解説していきます。
テクニック1:【損益通算】を最大限に活用する「損出しリバランス」
損益通算とは、同一年内の譲渡益(利益)と譲渡損(損失)を相殺できる制度です。 これをリバランスに応用したのが「損出しリバランス」です。
<仕組み>
ポートフォリオ内に含み益が出ている銘柄Aと、含み損を抱えている銘柄Bがあるとします。
この時、銘柄Aを売却して利益を確定すると、その利益に対して20.315%の税金がかかります。
しかし、リバランスのタイミングで含み損のある銘柄Bも同時に売却(損出し)することで、銘柄Aの利益と銘柄Bの損失を相殺し、課税対象となる利益を圧縮することができるのです。
<具体例>
銘柄A:+80万円の含み益
銘柄B:-50万円の含み損
<実践手順>
ポートフォリオの確認: 年末(12月)が近づいてきたら、自身のポートフォリオ全体の含み損益を確認します。
利益確定額の算出: その年にすでに確定している譲渡益、またはリバランスで利益確定を予定している金額を計算します。
損出しする銘柄の選定: 利益確定額と相殺できるように、含み損を抱えている銘柄の中から売却候補を選びます。
ポイント: 将来性が低い、ポートフォリオ内での役割が終わった、など長期的な視点でも売却が妥当な銘柄を選ぶことが重要です。
売却の実行: 利益確定する銘柄と、損出しする銘柄を同一年内に売却します。
(任意)同一銘柄の買い戻し: 損出しした銘柄Bが将来的には値上がりすると考えており、ポートフォリオに組み入れておきたい場合、売却した翌営業日以降に買い戻すことも可能です(日計り取引とならないよう注意)。
この「損出しリバランス」は、特に年末に意識して行うことで、その年の納税額を効果的にコントロールできます。
テクニック2:【NISA(非課税制度)】を徹底活用する戦略的リバランス
2024年から始まった新NISAは、年間360万円(生涯で1,800万円)までの投資で得た利益が非課税になる、非常に強力な制度です。
この非課税メリットをリバランスに組み込むことで、税負担をゼロにすることも可能です。
<ポイント>
NISA口座と課税口座(特定口座や一般口座)では、リバランスの考え方が根本的に異なります。
NISA口座内でのリバランス: いくら利益を確定しても非課税。売却枠は翌年以降に復活するため、柔軟なリバランスが可能です。
課税口座でのリバランス: 利益確定を伴う売却には20.315%の税金がかかる。
<実践戦略>
利益確定はNISA口座を優先する:
リバランスで利益確定が必要になった場合、まずはNISA口座内の資産を売却対象とします。これにより、税金を一切払うことなく利益を確定し、その資金を他の資産の購入に充てることができます。「NISA内でのスイッチング」を基本とする:
例えば、NISA口座内で「株式ファンド」と「債券ファンド」を50%ずつ保有しているとします。株式が値上がりして比率が60%になった場合、株式ファンドの一部を売却し、その資金で債券ファンドを買い増すことで、非課税のままリバランスが完了します。課税口座の含み損とNISA口座の利益確定を組み合わせる:
課税口座で大きな含み損が出ている場合、これを損出しして損失を確定させます。同時に、NISA口座で含み益が出ている資産を利益確定します。NISAの利益は非課税なので、課税口座の損失を翌年以降に繰り越す「繰越控除」の枠を温存することができます。
<注意点>
課税口座で保有している株式や投資信託を、NISA口座に直接移管することはできません。
NISA口座で運用したい場合は、一度課税口座で売却し、得られた資金でNISA口座で新たに買い付ける必要があります。
この際、課税口座での売却益には税金がかかる点に注意が必要です。
テクニック3:【年間利益のコントロール】で税負担を平準化する
一度に大きな利益を確定させると、その分納税額も大きくなります。
リバランスを定期的に行うことで、利益確定のタイミングを複数年に分散させ、単年での税負担を抑えることが可能です。
<考え方>
相場が好調でポートフォリオ全体に大きな含み益が出ている場合、一度に全てを利益確定するのではなく、数年に分けてリバランスを行うことで、利益確定額を平準化します。
<具体例>
総資産2,000万円のポートフォリオが3,000万円になり、1,000万円の含み益が出ているとします。
一度にリバランス(利益確定)する場合:
例えば500万円の利益を確定させると、約101万円(500万円 × 20.315%)の税金が発生。数年に分けてリバランスする場合:
1年目:200万円の利益確定 → 税額 約40.6万円
2年目:200万円の利益確定 → 税額 約40.6万円
3年目:100万円の利益確定 → 税額 約20.3万円
このように分割することで、一度にキャッシュアウトする税額を抑えることができます。
また、扶養に入っている配偶者などがいる場合、年間の合計所得金額によっては配偶者控除などに影響が出る可能性があるため、利益額のコントロールは重要です。
テクニック4:【繰越控除】を戦略的に利用する未来志向のリバランス
繰越控除とは、損益通算してもなお引ききれなかった損失を翌年以降3年間にわたって繰り越し、将来の利益と相殺できる制度です。
この制度を利用するには、損失が出た年に必ず確定申告をする必要があります。
<仕組み>
相場全体が下落し、ポートフォリオに大きな含み損が発生した年は、絶好の「仕込み」のチャンスです。
<実践手順>
損失の確定(損出し): 相場下落時、ポートフォリオ内の含み損銘柄をあえて売却し、損失を確定させます。
確定申告: その年の損失額を確定申告し、繰越控除の手続きを行います。
将来の利益と相殺: 翌年以降、相場が回復して利益が出た際に、繰り越した損失と相殺することで、将来の税金を大幅に削減できます。
<具体例>
2025年: 相場下落。リバランスで100万円の損失を確定し、確定申告。
2026年: 相場が回復。リバランスで80万円の利益を確定。
繰り越した100万円の損失と相殺。
80万円 - 100万円 = -20万円。
この年の利益80万円に対する税金は0円。
残りの20万円の損失はさらに翌年へ繰り越し可能。
2027年: さらに相場が上昇。リバランスで50万円の利益を確定。
前年から繰り越した20万円の損失と相殺。
50万円 - 20万円 = 30万円。
この年は30万円に対してのみ課税される。
もし繰越控除を利用しなければ、2026年と2027年で合計130万円(80万円 + 50万円)の利益に対して、約26.4万円の税金を支払うことになります。
繰越控除は、取引がない年でも毎年連続して確定申告をしないと権利が失効してしまうため、注意が必要です。
第4章:ケーススタディで学ぶリバランス節税術
理論を学んだところで、より実践的な2つのケースを想定して、どのようにリバランスと節税術を組み合わせるかシミュレーションしてみましょう。
前提: 総資産1,500万円を運用中。目標ポートフォリオは「国内株式40%:先進国株式40%:新興国株式20%」。
ケース1:相場が好調で、含み益が大きいポートフォリオのリバランス
1年後、特に先進国株式が大きく値上がりし、ポートフォリオが以下のように変化したとします。
<課題>
先進国株式の比率が50%まで上昇し、リスクが高まっている。
新興国株式の比率が14%まで低下している。
ポートフォリオ全体で300万円の含み益がある。
<リバランスと節税戦略>
目標資産額の再計算:
総資産1,800万円 × 40% = 720万円(国内株式、先進国株式)
総資産1,800万円 × 20% = 360万円(新興国株式)
売買計画(損益通算の活用):
売却:
先進国株式:900万円 → 720万円(180万円を売却し、利益確定)
新興国株式:250万円 → 360万円(買い増しのため売却なし)
損出し: 新興国株式の一部(例えば50万円分)を一度売却して損失を確定し、すぐに買い戻すことで50万円の損失を意図的に作る。
購入:
国内株式:650万円 → 720万円(70万円を購入)
新興国株式:250万円 → 360万円(110万円を購入)
税金計算:
先進国株式の売却益:仮に取得費を考慮し、180万円の売却で100万円の利益が出たとします。
新興国株式の売却損:50万円の損失。
損益通算後の課税対象額: 100万円 - 50万円 = 50万円
納税額: 50万円 × 20.315% = 101,575円
もし損出しを行わず、単純に先進国株式の利益100万円を確定させていた場合、納税額は203,150円でした。
この戦略により、約10万円の節税に成功しつつ、ポートフォリオを理想的な状態に戻すことができました。
ケース2:相場下落時におけるリバランス(繰越控除の活用)
相場全体が下落し、ポートフォリオが以下のように変化したとします。
<課題>
ポートフォリオ全体で200万円の含み損を抱えている。
資産配分のズレは比較的小さいが、将来のための布石を打ちたい。
<リバランスと節税戦略>
損失の確定(損出し):
このタイミングで、最も含み損の大きい国内株式を100万円分売却し、100万円の損失を確定させます。リバランス(買い増し):
売却で得た資金100万円と、追加の資金を使い、比率が下がっている資産や割安になったと考えられる資産を買い増します(このケースでは大きなリバランスは不要かもしれませんが、機械的に実行します)。確定申告(繰越控除):
その年の確定申告で、100万円の譲渡損失を申告します。これにより、翌年以降3年間、この100万円の損失枠を利用できる権利を得ます。翌年以降の展開:
翌年、相場が回復し、リバランスで70万円の利益が出たとします。
繰り越した100万円の損失と相殺できるため、この70万円に対する税金は0円になります。
さらに残りの30万円の損失枠を翌々年に繰り越せます。
このように、相場下落時は悲観的になりがちですが、リバランスと繰越控除を活用することで、将来の税負担を軽減するための絶好の機会と捉えることができるのです。
第5章:リバランス節税を行う上での5つの注意点
これまで解説してきたリバランス節税術は非常に強力ですが、実践する上でいくつか注意すべき点があります。
1. 取引コストを考慮する
リバランスには株式や投資信託の売買が伴うため、売買手数料や信託財産留保額といったコストが発生します。 節税効果がこれらの取引コストを下回ってしまっては本末転倒です。特に、頻繁すぎるリバランスはコストを増大させるため注意が必要です。
2. 短期的な税金対策に囚われすぎない
最も重要なのは、長期的な資産形成という本来の目的です。税金を抑えることだけを考え、将来性のある銘柄を無理に売却したり、ポートフォリオのバランスを崩したりしては元も子もありません。リバランスは、あくまで長期的な資産配分を維持する過程で行うべきです。
3. リバランスの頻度とタイミング
リバランスの最適な頻度に決まりはありませんが、一般的には年に1回程度が目安とされています。 毎回完璧な比率に戻す必要はなく、「資産配分が当初の計画から±5%ズレたら」といった自分なりのルールを決めておくと、感情的な売買を防ぐことができます。
4. 税制は変更される可能性がある
本記事で解説した税率や制度は現時点のものです。税制は毎年のように改正される可能性があるため、常に最新の情報を国税庁のウェブサイトなどで確認する習慣をつけましょう。
5. 不安な場合は専門家に相談する
繰越控除の確定申告など、手続きが複雑で不安な場合は、税務署や税理士などの専門家に相談することをお勧めします。 間違った申告をしてしまうと、ペナルティが課される可能性もあります。
まとめ
本記事では、1,000万円以上の資産を運用する投資家向けに、株式譲渡益に対する税金を最小化するためのリバランス術を体系的に解説しました。
最後に、重要なポイントをもう一度確認しましょう。
株式譲渡益には約20%の税金がかかることを常に意識する。
リバランスは、ポートフォリオのリスク管理だけでなく、利益確定と損失確定を計画的に行うための絶好の機会である。
4つの節税テクニックを組み合わせることで、税負担を大幅に軽減できる。
損益通算: 利益と損失をぶつけて課税対象額を圧縮する。
NISA活用: 非課税メリットを最大限に活かし、税負担ゼロでの利益確定を目指す。
年間利益コントロール: 利益確定を数年に分散させ、単年の負担を平準化する。
繰越控除: 下落時の損失を将来の利益と相殺するための「未来への投資」。
リバランスは、取引コストや長期的な視点を忘れず、年1回などを目安に機械的に行うことが成功の鍵。
これまで何気なく行っていたリバランスも、税金という視点を加えるだけで、これほどまでに戦略的な資産運用ツールへと変わるのです。
さあ、まずはご自身のポートフォリオを棚卸しすることから始めてみてください。どの資産にどれくらいの含み益があり、どの資産に含み損があるのか。
そして、今年の年末に向けて、あるいは来年以降の計画として、どのようなリバランスが可能か。
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