1000万円以上の資産を運用する投資家の皆様にとって、確定申告は単なる義務ではなく、手元に資産を最大限残すための重要な戦略です。 しかし、多忙な投資活動の中で、適用できるはずの控除を見落としてしまい、本来支払う必要のない税金を納めてしまっているケースは少なくありません。
1000万円以上の資産を運用する投資家の皆様にとって、確定申告は単なる義務ではなく、手元に資産を最大限残すための重要な戦略です。
しかし、多忙な投資活動の中で、適用できるはずの控除を見落としてしまい、本来支払う必要のない税金を納めてしまっているケースは少なくありません。
この記事では、そのような「もったいない」状況を避けるため、多くの投資家が見落としがちな控除項目を網羅的にリストアップし、それぞれの活用方法を徹底的に解説します。
この記事を最後まで読めば、ご自身の確定申告で活用できる控除を洗い出し、賢く節税するための具体的なアクションプランを描けるようになるでしょう。
投資家こそ確定申告を戦略的に活用すべき理由
株式や投資信託などの利益に対して、特定口座(源泉徴収あり)を選択している場合、原則として確定申告は不要です。
証券会社が利益から約20%の税金を自動的に源泉徴収し、納税まで済ませてくれるため、手間がかからず非常に便利です。
しかし、この手軽さゆえに、本来受けられるはずの控除の機会を逃している可能性があるのです。
特に、複数の証券会社で取引をしている方、年間の取引で損失が出た方、あるいは海外資産への投資を行っている方は、確定申告を行うことで、納めすぎた税金が還付される(戻ってくる)可能性が十分にあります。
資産運用額が1000万円を超えてくると、利益や損失の額も大きくなるため、確定申告による節税効果は決して無視できません。
本記事で紹介する控除項目を一つでも多く活用し、ご自身の資産形成をさらに加速させていきましょう。
【一覧表】投資家が見落としがちな控除項目
まずは、どのような控除項目があるのか全体像を把握しましょう。
控除は、税金を計算する過程で「差し引く」ことを意味し、課税対象となる所得を減らす「所得控除」と算出された税額から直接差し引く「税額控除」の2種類に大別されます。
【詳細解説】見落としがちな控除項目とその活用法
ここからは、上の一覧表で挙げた各控除項目について、具体的な適用条件や手続きのポイントを詳しく解説していきます。
1. 所得控除:課税対象となる所得を減らす
所得控除は、納税者の個々の事情を税負担に反映させるための制度です。
全部で15種類ありますが、ここでは特に投資家が見落としやすい、あるいは活用メリットが大きいものを中心に解説します。
1年間(1月1日から12月31日まで)に支払った医療費が一定額を超える場合に受けられる控除です。
対象となる金額:原則として、支払った医療費の合計額が10万円を超える部分(最高200万円)。
注意点:年間の総所得金額等が200万円未満の場合は、「総所得金額等の5%」を超えた部分が対象となります。
見落としがちなポイント:
生計を一つにする家族の分も合算可能:ご自身の医療費だけでなく、配偶者や子供、両親など、生計を共にする親族のために支払った医療費も合算して申告できます。
対象となる医療費の範囲:
病院での治療費、処方薬代はもちろん、市販の風邪薬などの購入費も対象になる場合があります。
通院のための交通費(電車、バスなど公共交通機関)も含まれます。タクシー代は緊急時などやむを得ない場合に認められます。
インプラントなどの高額な歯科治療や、レーシック手術、不妊治療、AGA(男性型脱毛症)の治療費なども対象となる場合があります。
セルフメディケーション税制との選択:健康診断などを受けている人が、対象となる市販薬(スイッチOTC医薬品)を年間1万2,000円以上購入した場合に受けられる控除です。 医療費控除と同時に利用することはできず、どちらか有利な方を選択する必要があります。
【こんな投資家は要チェック!】
家族の誰かが入院や手術をした
年間を通じて通院することが多かった
自由診療(保険適用外)の治療を受けた
国や地方公共団体、特定の法人などに寄付をした場合に受けられる控除です。
「ふるさと納税」が有名ですが、それ以外にも対象となる寄付は多数存在します。
対象となる寄付の例:
国や地方公共団体への寄付
日本赤十字社や共同募金会などへの寄付
認定NPO法人や公益社団法人などへの寄付
特定の政治献金
見落としがちなポイント:
政党等寄附金等特別控除:政治資金団体への寄付など、一定の要件を満たす場合は、所得控除ではなく「税額控除」を選択することも可能です。税額控除は税額から直接差し引かれるため、所得税率が高い方にとっては所得控除より有利になる場合があります。
証明書類が必要:寄付をした団体から発行される「寄附金の受領証」などが必要になります。
【こんな投資家は要チェック!】
応援したいNPO法人や公益団体がある
出身大学や母校に寄付をした
政治活動を支援している
iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金が全額所得控除の対象となることはよく知られていますが、他にも対象となる掛金があります。
対象となる掛金:
iDeCo(個人型確定拠出年金) の掛金
小規模企業共済の掛金(主に個人事業主や小規模企業の役員が対象)
企業型確定拠出年金(企業型DC)で、従業員が任意で上乗せして拠出する掛金(マッチング拠出分)
見落としがちなポイント:
年末調整で申告を忘れた会社員の方でも、確定申告をすれば控除を受けることができます。
掛金の全額が所得控除の対象となるため、節税効果が非常に高いのが特徴です。
【こんな投資家は要チェック!】
iDeCoに加入しているが、年末調整で申告を忘れてしまった
個人事業主や法人役員として投資を行っており、小規模企業共済に加入している
災害、盗難、横領によって資産に損害を受けた場合に受けられる控除です。
対象となる損害の例:
自然災害(台風、地震、洪水など)による住宅や家財の損害
火災や爆発による損害
盗難による損害
横領による損害
見落としがちなポイント:
投資詐欺:詐欺による被害は「盗難」や「横領」に該当する可能性があり、雑損控除の対象となる場合があります。ただし、対象となるかどうかは個別の事案によるため、税務署や税理士への確認が必要です。
損失額の計算:損害金額から保険金などで補てんされた金額を差し引いた額が基準となります。
【こんな投資家は要チェック!】
自然災害で自宅や所有する資産に被害を受けた
投資詐欺や悪質な勧誘による金銭的被害に遭った
給与所得者(会社員)が、職務に直接必要な特定の支出をした場合、その合計額が「給与所得控除額の2分の1」を超えるときに、その超える部分を給与所得控除後の金額から差し引ける制度です。
対象となる支出の例:
通勤費:会社から支給される通勤手当でカバーできない部分
資格取得費:弁護士、公認会計士、税理士など、職務に直接必要な資格を取得するための費用
図書費:職務に関連する書籍や定期刊行物の購入費
衣服費:スーツや作業服など、勤務場所で着用が必要な衣服の購入費
交際費等:職務上の関係者に対する接待や贈答のための費用
見落としがちなポイント:
給与の支払者による証明が必要:これらの支出が職務に直接必要であったことについて、勤務先からの証明書が必要です。
ハードルは高いが該当すれば大きい:給与所得控除額の半分を超える必要があり、適用ハードルは低くありませんが、資格取得などで高額な支出があった年には適用できる可能性があります。
投資関連の費用:投資家としてスキルアップするためのセミナー参加費や書籍代などが、本業の職務(例:金融機関勤務など)に直接関連すると認められれば、対象となる可能性があります。
【こんな投資家は要チェック!】
金融機関に勤務しており、職務のために資格取得や高額な書籍購入をした
仕事に関連する支出が多いと感じている会社員
2. 税額控除:税金から直接差し引くパワフルな控除
税額控除は、算出された所得税額から直接金額を差し引くことができるため、節税効果が非常に高いのが特徴です。
米国株をはじめとする外国の株式に投資をしている方にとって、最も重要で見落としがちな控除の一つです。
外国で得た所得(配当金など)に対して、その国で税金が課され、さらに日本でも課税されると「二重課税」の状態になります。
この二重課税を調整するために、外国で納めた税金(外国所得税)を日本の所得税額から差し引くことができるのが外国税額控除です。
対象となるケース:
米国株の配当金を受け取った場合、通常は米国で10%の税金が源泉徴収されます。 この10%分を、日本の所得税から控除できます。
外国籍のETFや投資信託から分配金を受け取った場合も同様です。
手続きのポイント:
確定申告が必須:外国税額控除を受けるためには、必ず確定申告が必要です。
必要書類:
外国税額控除に関する明細書
外国所得税を課されたことを証明する書類(証券会社の「特定口座年間取引報告書」や「支払通知書」など)
注意点:
控除できる金額には上限があります(控除限度額)。
控除しきれない金額が出た場合は、翌年以降3年間にわたって繰り越すことが可能です。
【こんな投資家は要チェック!】
米国株やその他の外国株を保有し、配当金を受け取っているすべての方
海外ETFや海外籍の投資信託を保有している方
国内の法人(株式会社など)から受け取る配当金について、一定額を所得税額から差し引くことができる制度です。
これは、法人が法人税を納めた後の利益から配当を出しているため、個人段階での所得税との二重課税を調整する目的があります。
適用の条件:
配当所得について、「総合課税」を選択して確定申告する必要があります。
対象となる配当金:国内上場株式の配当金、国内株式投資信託の分配金などが対象です。 J-REITの分配金や外国株式の配当金は対象外です。
総合課税と申告分離課税の選択:
総合課税:他の所得(給与所得など)と合算して、所得が多くなるほど税率が高くなる累進税率で計算されます。配当控除が使えます。
申告分離課税:他の所得とは分離して、一律の税率(所得税15.315%、住民税5%)で計算されます。配当控除は使えませんが、株式の譲渡損失と損益通算ができます。
どちらが有利か?
一般的に、課税される所得金額が695万円以下の場合は、総合課税を選択して配当控除を受けた方が、税負担が軽くなる傾向があります。
課税所得がそれ以上になると、総合課税の税率が高くなるため、申告分離課税の方が有利になることが多いです。
注意点:
2023年分の確定申告から、所得税と住民税で異なる課税方式を選択することができなくなりました。
総合課税を選択すると合計所得金額が増加するため、扶養控除や国民健康保険料に影響が出る場合があります。
【こんな投資家は要チェック!】
国内の高配当株に多く投資している
給与所得などを合算した課税所得が695万円以下である
3. 投資家なら絶対に忘れてはいけない「損失」の申告
利益が出た時の税金だけでなく、損失が出た場合にそれを将来の利益と相殺する制度を知っておくことは、長期的な資産形成において極めて重要です。
年間の株式や投資信託などの取引で、売却損(譲渡損失)が出た場合に利用できる制度です。
損益通算とは?
その年の譲渡損失を、他の証券口座での譲渡益や、申告分離課税を選択した配当金・分配金と相殺することです。
例:A証券で50万円の利益、B証券で30万円の損失が出た場合、損益通算をすれば課税対象となる利益は20万円に圧縮できます。
繰越控除とは?
損益通算をしてもなお引ききれない損失が出た場合、その損失を翌年以降3年間にわたって繰り越し、将来の譲渡益や配当金等から差し引くことができる制度です。
例:今年200万円の損失が出た場合、この損失を繰り越せます。来年100万円の利益が出ても、繰り越した損失と相殺することで、来年の利益に対する税金は0円になります。残りの100万円の損失は、さらに翌々年まで繰り越せます。
手続きのポイント:
毎年、確定申告が必要:損失の繰越控除の適用を受けるためには、損失が出た年だけでなく、その翌年以降、取引がない年であっても連続して確定申告を行う必要があります。 これを忘れると、繰越控除の権利がなくなってしまうため、最大限の注意が必要です。
特定口座(源泉徴収あり)で取引していても、この制度を利用するためには確定申告が必須です。
【こんな投資家は要チェック!】
年間のトータルで投資成績がマイナスになった方
将来の利益に備えて、今年の損失を有効活用したい方
申告漏れを防ぐための最終チェックリスト
確定申告の準備が整ったら、提出前に以下のリストで最終確認を行いましょう。
[ ] 全ての所得を把握したか?
複数の証券会社の取引履歴を確認したか?
株式の売買損益、配当金、分配金のすべてを計上したか?
[ ] 所得控除で使えるものはないか?
家族全員分の医療費の領収書は集めたか?
ふるさと納税以外の寄付はないか?
iDeCoなどの掛金証明書は手元にあるか?
災害や盗難などの被害はなかったか?
[ ] 税額控除で使えるものはないか?
(海外投資家)外国株の配当金はないか?外国税額控除の準備はしたか?
(国内株投資家)配当金の課税方式(総合課税 or 申告分離課税)は検討したか?
[ ] 損失の申告は必要ないか?
今年の取引で損失は出ていないか?
昨年以前から繰り越している損失はないか?(その場合、今年も申告が必要)
[ ] 必要書類はすべて揃っているか?
特定口座年間取引報告書
各種控除証明書(保険料、iDeCoなど)
医療費の明細書
マイナンバーカード(または通知カード+本人確認書類)
まとめ:賢い確定申告が、あなたの資産を未来へつなぐ
1000万円以上の資産を運用する投資家にとって、税金はリターンと同じくらい重要な要素です。確定申告は、その税金を最適化するための強力なツールとなります。
特に、多くの投資家が見落としがちな「外国税額控除」、課税所得によっては大きな節税につながる「配当控除」、そして将来の税負担を軽減する「損失の繰越控除」は、絶対に押さえておきたい3つの重要ポイントです。
この記事で紹介した控除項目を一つひとつ丁寧に確認し、ご自身の状況に当てはまるものがないか検討してみてください。
最初は複雑に感じるかもしれませんが、一度理解すれば、翌年以降も継続して活用できる一生モノの知識となります。
もし、ご自身のケースで判断に迷う場合や、手続きが複雑だと感じる場合は、税理士や弁護士などの専門家に相談することも有効な選択肢です。
正しい知識を身につけ、戦略的な確定申告を実践することで、大切な資産を守り、さらなる成長へとつなげていきましょう。
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