Published 17 Nov 2025

相続税対策にもなる「不動産×法人」二段構え戦略

相続税対策にもなる「不動産×法人」二段構え戦略

相続税対策として非常に有効な「不動産」と「法人」を組み合わせた、二段構えの戦略について、徹底的に解説します。

1000万円以上の資産を保有する方々にとって、資産を「守り」そして「増やす」ことは重要な課題です。


特に、次世代への資産承継を考えたとき、相続税は避けて通れない大きな壁となります。


本記事では、相続税対策として非常に有効な「不動産」と「法人」を組み合わせた、二段構えの戦略について、徹底的に解説します。

なぜ今、「不動産×法人」戦略が注目されるのか?

日本では超高齢化社会が進行し、相続の件数も年々増加しています。


それに伴い、相続税に関する悩みやトラブルも増え続けているのが現状です。


現金や預貯金だけで資産を保有していると、その額面通りが相続税の課税対象となるため、多額の税負担が発生する可能性があります。


そこで注目されるのが、不動産を活用した相続税対策です。


不動産は現金と異なり、相続税評価額が時価よりも低く評価される傾向にあります。 


さらに、その不動産を法人で所有・管理することで、所得税や相続税において二重の節税効果が期待できるのです。


本記事を読み進めることで、1000万円以上の資産を持つあなたが、どのように資産を運用し、次世代へ円滑に承継していくべきか、その具体的な道筋が見えてくるでしょう。

第一の矢:なぜ不動産は相続税対策に有効なのか?

まず、なぜ不動産が相続税対策の第一歩として有効なのか、その仕組みを理解しましょう。

現金と不動産の相続税評価額の違い

「相続税」は、亡くなった人が残した財産の価値(相続税評価額)に基づいて計算されます。 


ここで重要なのが、財産の種類によって評価方法が異なるという点です。


  • 現金・預貯金:額面通りの金額が評価額となります。1000万円の現金は、1000万円として評価されます。

  • 不動産(土地):国税庁が定める「路線価」を基に評価されます。路線価は、一般的に市場価格の70%~80%程度とされています。

  • 不動産(建物):「固定資産税評価額」がそのまま評価額となります。これも市場価格より低く設定されることが一般的です。

具体例

1億円の現金を保有している場合と、1億円で土地を購入した場合の相続税評価額を比較してみましょう。


資産の種類

市場価格(時価)

相続税評価額(目安)

現金

1億円

1億円

土地

1億円

8000万円

(路線価が時価の80%の場合)


このように、同じ価値の資産でも、不動産として保有することで相続税評価額を圧縮できるのです。

賃貸不動産によるさらなる評価額の圧縮

さらに、その不動産を賃貸に出すことで、評価額をさらに引き下げることが可能です。 


他人に貸している不動産は、所有者が自由に使用できないという制約があるため、その分評価額が減額されるのです。

第二の矢:法人化による圧倒的な節税メリット

不動産による相続税評価額の圧縮だけでも十分な効果がありますが、さらに「法人化」を組み合わせることで、その効果を最大化し、所得税対策にも繋げることができます。

法人化(プライベートカンパニー設立)とは?

不動産投資における「法人化」とは、個人で所有・管理している不動産を、自身が設立した会社(プライベートカンパニー)に移管することです。


これにより、不動産から得られる家賃収入などは個人の所得ではなく、法人の利益として計上されることになります。

法人化による5つの主要メリット

不動産事業を法人化することで、主に以下の5つのメリットが享受できます。

1. 所得税・住民税の節税

個人の所得税は累進課税で最大55%(所得税45%+住民税10%)ですが、法人税の実効税率は約30%前後です。 


年間の不動産所得が一定額(目安として900万円)を超える場合、法人化した方が税負担を抑えられる可能性があります。


個人と法人の税率比較(所得900万円超の場合)


-

個人の場合

(所得税+住民税)

法人の場合

(実効税率)

税率

43%~55%

約30%前後


2. 経費計上範囲の拡大

法人化すると、個人事業主では経費として認められにくい費用も、法人の経費として計上しやすくなります。 


例えば、家族を役員にして支払う役員報酬退職金の支給経費として認められます。

3. 所得の分散による節税

家族を法人の役員にし、役員報酬を支払うことで、所得を分散できます。


所得が分散されれば、一人ひとりに適用される所得税率が低くなり、家族全体での手取り額を増やすことが可能です。

4. 相続税の直接的な課税対象から除外

不動産を法人名義にすることで、その不動産自体は個人の相続財産から切り離されます。


これにより、相続発生時の課税対象財産が減少し、相続税額を大幅に軽減できる可能性があります。

5. 円滑な事業承継

個人で不動産を所有している場合、相続時に不動産そのものを分割する必要があり、トラブルの原因となり得ます。 


一方、法人化していれば、相続財産は会社の「株式」となります。 


株式を贈与したり、相続させたりすることで、不動産事業をスムーズに次世代へ引き継ぐことが可能です。

不動産法人化の具体的なスキーム

法人化にはいくつかの方法がありますが、代表的な3つのスキームをご紹介します。


スキーム名

概要

メリット

デメリット

不動産所有方式

個人が所有する不動産を法人に売却または現物出資する方式。

節税効果が最も高い。

家賃収入の全てが法人の収益となる。

不動産の移転コスト(不動産取得税、登録免許税など)がかかる。

サブリース方式

個人所有の不動産を法人が一括で借り上げ、入居者に転貸する方式。

不動産の所有権移転が不要なため、初期費用を抑えられる。

法人の所得は家賃収入の一部(10%~15%程度)に限られる。

管理委託方式

不動産の管理業務のみを法人に委託する方式。

手続きが最も簡単で、手軽に始められる。

法人の所得は管理料のみとなり、節税効果は限定的。


どのスキームが最適かは、保有する不動産の規模収益法人化の目的によって異なります。


専門家である税理士に相談し、シミュレーションを行った上で判断することが重要です。

「不動産×法人」戦略を成功させるための注意点

多くのメリットがある一方で、デメリットや注意点も存在します。


安易な判断はせず、リスクを十分に理解した上で実行に移しましょう。


  • 法人設立・維持コスト:法人の設立には登記費用などの初期コストがかかります。 また、税務申告や社会保険への加入義務など、法人を維持していくためのランニングコストも発生します。

  • 赤字でも発生する法人住民税:法人は、たとえ赤字であっても法人住民税の均等割(最低でも年間7万円程度)を納める義務があります。

  • 不動産売却時の税率:個人が長期保有(5年超)した不動産を売却した場合の税率は約20%ですが、法人が売却した場合は法人税率(約30%前後)が適用されるため、税負担が重くなる可能性があります。

  • 専門家のサポートが不可欠:不動産の法人化は、税務や法務に関する専門的な知識が必要です。 税理士や司法書士などの専門家に相談し、最適なプランを立てることが成功の鍵となります。

1000万円以上の資産を持つあなたへ:具体的なアクションプラン

では、1000万円以上の資産を保有している方は、具体的にどのようなステップで資産運用と相続対策を進めていけば良いのでしょうか。


  1. 生活防衛資金の確保:まずは、万が一に備えて6ヶ月から1年分の生活費を「生活防衛資金」として確保しましょう。 この資金は、すぐに引き出せるように預貯金で保有しておくのが基本です。

  2. 余剰資金での資産運用:生活防衛資金を確保した上で、残りの余剰資金を資産運用に回します。 1000万円あれば、株式投資や投資信託、不動産投資など、多様な選択肢から自分に合った運用方法を選べます。

  3. 長期・分散投資を心がける:資産運用は、短期的な値動きに一喜一憂せず、長期的な視点で取り組むことが重要です。 また、複数の資産に分散して投資することで、リスクを低減できます。

  4. 不動産投資の検討:資産ポートフォリオの一部として、不動産投資を検討しましょう。特に、相続税対策を意識するのであれば、都心の収益物件などが候補となります。

  5. 法人化のシミュレーション:不動産所得が年間600万円から900万円を超えるようになったら、法人化を検討するタイミングです。 税理士に相談し、法人化した場合の節税効果やコストを具体的にシミュレーションしてもらいましょう。

  6. 相続を見据えた株主構成:法人を設立する際は、将来の相続を見据えて株主構成を慎重に決定する必要があります。 将来の相続人となる子や配偶者を株主とすることで、相続財産の増加を抑制できます。

まとめ:未来を見据えた賢明な資産戦略を

1000万円以上の資産を築き上げた今、次なるステップは、その大切な資産をいかにして守り増やし、そして次世代へと円滑に引き継いでいくかです。


「不動産」を活用して相続税評価額を圧縮し、さらに「法人」という器を用いることで所得を分散し税負担を最適化する。


この二段構えの戦略は、単なる節税対策に留まらず、あなたの資産を守り、家族の未来を豊かにするための強力なツールとなり得ます。


もちろん、法人化にはコストや手間がかかるため、全てのケースで最適な選択とは限りません。


しかし、本記事で解説したメリットとデメリットを正しく理解し、専門家のアドバイスを受けながら慎重に検討することで、あなたの資産状況に合わせた最良の道筋が見つかるはずです。


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