Published 21 Jan 2026

「米国債」だけが正解ではない。利回り5%超を狙うなら知っておきたい、劣後債とハイブリッド証券のリスク・リターン

「米国債」だけが正解ではない。利回り5%超を狙うなら知っておきたい、劣後債とハイブリッド証券のリスク・リターン

今、機関投資家や富裕層の間で再注目されているのが「劣後債(Subordinated Debt)」や「ハイブリッド証券(Hybrid Securities)」です。 本記事では、米国債だけでは物足りないと感じている方に向けて、これらの資産クラスの仕組み、魅力、そして絶対に知っておくべきリスクについて、圧倒的な深さで解説します。

資産運用において、長らく「王道」とされてきた米国債。


しかし、2026年1月現在、金利環境の変化に伴い、単に米国債(国債)を持っているだけでは、かつてのような魅力的なインカムゲインを得ることが難しくなりつつある局面も見られます。


資産1000万円以上を保有し、より効率的に資産を増やしたい、あるいはインフレに負けない強いポートフォリオを構築したいと考える投資家にとって、「利回り5%超」という水準は一つの大きな目標です。


その目標を達成するために、今、機関投資家や富裕層の間で再注目されているのが「劣後債(Subordinated Debt)」「ハイブリッド証券(Hybrid Securities)」です。


本記事では、米国債だけでは物足りないと感じている方に向けて、これらの資産クラスの仕組み、魅力、そして絶対に知っておくべきリスクについて、圧倒的な深さで解説します。


1:2026年の投資環境と「利回り5%」の壁

2022年から続いた世界的な利上げサイクルが一巡し、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策が「正常化」へと向かっている2026年1月現在。


米国債(10年物)の利回りは、安定資産としては魅力的ですが、「資産を大きく増やす」という観点では、物足りなさを感じる場面も出てきています。


特に、日本のインフレ率が定着しつつある中、為替リスクを考慮した実質リターンを確保するためには、より高い利回り(イールド)をポートフォリオに組み込む必要があります。

なぜ米国債「だけ」では不十分なのか

米国債は「世界で最も安全な資産」と言われますが、安全性と利回りはトレードオフ(相関関係)にあります。


  • 安全性が高い = 利回りは低くなる

  • リスクを取る = 利回りは高くなる


資産が1000万円を超える場合、全額を低リスク資産に置くのは「機会損失」です。


ポートフォリオの一部(サテライト枠)で、適度な信用リスクを取り全体の利回りを底上げする戦略が有効です。


そこで選択肢となるのが、国債よりも格付けが低いものの、株式よりは安全性が高い「社債」の領域、特に特殊な条件がついた債券です。


2:劣後債とハイブリッド証券とは何か?

「名前は聞いたことがあるけれど、難しそう」と敬遠されがちなこれらの証券ですが、仕組みを理解すれば、非常に合理的な投資対象となります。


(1)劣後債(Subordinated Debt)

劣後債とは、発行体が経営破綻(デフォルト)した際、元本や利息の支払順位が普通の社債(シニア債)よりも低く設定されている債券のことです。


「万が一の時に後回しにされる」というリスクを負う代わりに、シニア債よりも高い金利が設定されています。


主にメガバンクや大手保険会社などの金融機関が、自己資本比率を高める目的で発行します。

(2)ハイブリッド証券(優先証券など)

ハイブリッド証券とは、「債券」「株式」の両方の性質を持つ証券の総称です。


代表的なものに「優先証券」「CoCo債(AT1債)」があります。


  • 債券のような性質: 定期的に利息(配当)が支払われる。満期や繰上償還(コール)がある。

  • 株式のような性質: 配当の支払いが停止される可能性がある。弁済順位が極めて低い。


これらは、発行体にとっては「資本」として計上できるメリットがあり、投資家にとっては「株式に近いリスクを取ることで、債券としては破格の利回りを得られる」というメリットがあります。


3:リスク・リターンの構造を理解する(資本構造のヒエラルキー)

投資判断において最も重要なのは、その証券が企業の資本構造(キャピタル・ストラクチャー)のどこに位置するかを理解することです。


下に行くほどリスクが高くなり、利回りが高くなります。


順位

種類

リスク

リターン

(利回り目安)

特徴

1

預金・担保付債

極めて低い

低い

(0.1%~)

最も優先的に保護される。

2

シニア債

(普通社債)

低い

中程度

(3%~4.5%)

一般的な米国債や優良企業の社債。

3

劣後債

中程度

高い

(4.5%~6.0%)

本記事の主役。

シニア債より高利回り。

4

優先証券

(ハイブリッド)

高い

非常に高い

(5.5%~7.5%)

株式に近いリスクだが、高配当。

5

普通株式

非常に高い

変動

(配当+値上がり)

最後の最後に残余財産が分配される。


※利回り目安は2026年1月時点の米ドル建てを想定したイメージです。


この表から分かるように、劣後債や優先証券は、「株式ほどの値動きリスクは負いたくないが、国債や普通社債より高いインカムが欲しい」という投資家のニーズに合致する「ミドルリスク・ミドルリターン」の商品です。


4:投資家が知っておくべき「3つの固有リスク」

高い利回りには理由があります。表面的な利率(クーポン)だけで飛びつくのではなく、以下のリスクを許容できるかどうかが、投資判断の分かれ目となります。

リスク1:繰上償還の見送り(コール・スキップ)

多くの劣後債やハイブリッド証券には、発行から5年後や10年後に、発行体が早期に元本を返済できる「コール日(繰上償還日)」が設定されています。


通常はコール日に償還されますが、市場環境が悪化し、発行体が「新しく債券を発行して借り換えるより、今のまま高い利息を払い続けた方がマシだ」と判断した場合、償還が見送られる(スキップされる)ことがあります。


  • 影響: 元本が戻ってこない期間が延び、債券価格が下落する可能性があります。

リスク2:利払いの繰り延べ・停止

業績が悪化した場合、発行体の判断で利息や配当の支払いを「一時停止」できる条項がついているものが多くあります。


普通社債であれば利払い停止は即デフォルトですが、ハイブリッド証券では「契約上の権利」として認められている場合があります。

リスク3:元本削減(ライトダウン)と株式転換

これが最大のリスクです。


特に欧州の銀行が発行する「CoCo債(AT1債)」などで注意が必要です。


発行体の自己資本比率が一定水準を下回った場合や公的支援が必要と認定された場合に、元本が強制的にゼロになる(全損)か、強制的に株式に転換されるリスクがあります。

※2023年に起きたクレディ・スイスの事例は記憶に新しいところです。AT1債が無価値化された教訓から、投資家は「目論見書(タームシート)」の条項、特に「トリガー条項」を厳密に確認する必要があります。


5:【実践編】1000万円以上保有者のためのポートフォリオ戦略

では、具体的にどのように資産運用に組み込むべきでしょうか。


2026年の市場環境を踏まえた、1000万円以上の資産を持つ投資家向けの戦略を提案します。

戦略1:コア・サテライト戦略の徹底

全資産をハイブリッド証券にするのは危険すぎます。


  • コア資産(資産の70%~80%): 米国債、投資適格級のシニア社債、全世界株式インデックスなど、流動性と安全性が高いもの。

  • サテライト資産(資産の20%~30%): 劣後債・ハイブリッド証券。ここで利回り5~7%を狙い、ポートフォリオ全体の利回りを底上げします。

戦略2:発行体は「G-SIBs」クラスに限定する

劣後債投資で最も避けるべきは「発行体の破綻」です。


そのため、投資対象は「G-SIBs(グローバルにシステム上重要な銀行)」に認定されているような、世界的なメガバンクや財務基盤が盤石な超巨大企業(通信・エネルギー大手など)の発行するものに限定すべきです。


「聞いたこともない企業の利回り8%」よりも、「JPモルガンや三菱UFJフィナンシャル・グループの利回り5.5%」を選ぶのが、資産を守りながら増やす鉄則です。

戦略3:既発債(セカンダリー)市場の活用

新発債(新しく発行される債券)だけでなく、すでに市場で取引されている既発債にも目を向けましょう。


2022年~2023年の金利上昇局面で発行された債券の中には、債券価格が額面(100)を大きく下回り、例えば「単価85」などで売られているものがあります。


これらを購入すれば、高い利息収入に加え、満期(または償還)時に「100-85=15」というキャピタルゲイン(償還益)も狙うことができます。


6:購入方法と税金について

どこで買えるのか?

劣後債やハイブリッド証券は、一般的なネット証券の「債券」ページでも一部取り扱いがありますが、品揃えは限定的です。


  • 対面証券(大手証券会社): 富裕層向けに多くのラインナップを持っています。担当者に「米ドル建ての既発劣後債で、格付けがA格以上のものはありますか?」と聞くと良いでしょう。

  • IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー): 証券会社に属さない専門家を通じて、より専門的な債券選定のアドバイスを受けるのも有効です。

税制上の注意点(特定口座・一般口座)

日本の個人投資家の場合、外国債券の利子や譲渡益は、原則として申告分離課税(20.315%)の対象となり、株式や投資信託との損益通算が可能です(特定口座・源泉徴収ありの場合)。


ただし、為替差益に関しては扱いが複雑になる場合があるため、必ず証券会社の報告書を確認するか、税理士に相談することをお勧めします。


7:まとめ ~2026年は「質」を見極める年~

「米国債」だけが正解ではない。


これが、2026年1月現在の資産運用のリアルです。


資産1000万円以上の投資家にとって、劣後債やハイブリッド証券は、適切にリスクコントロールを行えば、「株式投資のような不確実性を避けつつ、国債以上の確実なキャッシュフローを得る」ための最強のツールとなり得ます。


本記事のポイント

  1. 利回り5%超を狙うなら、劣後債・ハイブリッド証券は避けて通れない選択肢。

  2. 資本構造(シニア>劣後>株式)を理解し、自分がどこまでリスクを取れるか見極める。

  3. コール・スキップや法的弁済順位のリスクを正しく恐れる。

  4. 発行体は世界的な超優良企業に絞り、欲張りすぎない。


投資の世界において、知識は最大の防御であり、最大の武器です。


米国債という「守り」の資産に加え、劣後債という「攻め」の債券を賢く組み合わせることで、あなたの資産運用は一段上のステージへと進化するでしょう。


今こそ、担当の証券マンやIFAに「今のポートフォリオに、質の高い劣後債を組み込む余地はありますか?」と問いかけてみてください。


その一言が、これからの資産形成を大きく変えるきっかけになるはずです。



【免責事項】
本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の勧誘や売買の推奨を目的としたものではありません。プライベート・アセット投資には、元本割れのリスクや流動性リスクが含まれます。投資の最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。


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