インフレの長期化、地政学的リスク、そして通貨価値の変動。 こうした中で、改めて注目されているのが「現物資産」としての高級腕時計です。 単なる「贅沢品」ではなく、「着けられる資産(Wearable Assets)」として腕時計を捉え直す動きは、富裕層の間でスタンダードになりつつあります。
はじめに:2026年、資産運用の新たな選択肢
1000万円以上の金融資産を保有する皆様にとって、株式や不動産、あるいは債券といった伝統的な投資先はすでにポートフォリオの一部となっていることでしょう。
しかし、2026年1月現在、世界経済は依然として不確実性の波に洗われています。
インフレの長期化、地政学的リスク、そして通貨価値の変動。
こうした中で、改めて注目されているのが「現物資産」としての高級腕時計です。
単なる「贅沢品」ではなく、「着けられる資産(Wearable Assets)」として腕時計を捉え直す動きは、富裕層の間でスタンダードになりつつあります。
本記事では、金融資産1000万円以上を持つ投資リテラシーの高い層に向けて、2026年現在の市場トレンドを踏まえた「負けない時計選び」と法人オーナーや個人事業主が知っておくべき「税務上の考え方」について、圧倒的な情報量で解説します。
第1章:2026年1月現在の高級腕時計マーケット分析
1-1:バブル崩壊後の「成熟期」へ
2022年前半までの異常な高騰(いわゆるロレックスバブル)は一度弾け、2023年から2025年にかけて市場は調整局面を迎えました。
そして2026年現在、市場は「健全な成熟期」に入っています。
投機目的のみの転売ヤーが淘汰され、真の愛好家と長期投資家が市場を支える構造へと変化しました。
これにより、以前のような「何を買っても上がる」という安易な状況は終わりましたが、逆に言えば「正しい知識で選別されたモデルは、極めて底堅い資産価値を維持する」という確実性が増しています。
1-2:インフレヘッジとしての有効性
現金の価値が目減りするインフレ局面において、高級腕時計は「コモディティ(商品)」としての側面を持ちます。
金(ゴールド)と同様、原材料費の高騰や人件費の上昇は、そのままメーカーの定価改定(値上げ)に直結します。
事実、ロレックスやパテック・フィリップなどの主要ブランドは、過去5年間で年平均5~8%程度の定価引き上げを行ってきました。
定価が上がれば、必然的に中古市場(セカンダリーマーケット)の底値も切り上がります。
つまり、高級腕時計を保有することは、現金の購買力を維持するための有効な防衛策となり得るのです。
表1:主な資産クラスと高級腕時計の比較(2026年視点)
第2章:「着けられる資産」としてのメリットとデメリット
2-1:最大のメリットは「精神的配当」
株式や投資信託は、画面上の数字が増減するだけで、保有する喜びを物理的に感じることはできません。
しかし、腕時計は違います。日々のビジネスシーンや社交の場で着用し、ステータスを示し、自身のモチベーションを高めることができます。
経済学ではこれを「精神的配当(Psychic Dividend)」と呼びます。
仮に10年後に購入価格と同じ価格で売却できたとしたら、その間の「使用料」は実質タダです。
10年間、最高級の工芸品を身に着ける体験が無料だったと考えれば、それは非常に高い投資対効果と言えるでしょう。
2-2:ポータビリティ(可搬性)とグローバル流動性
高級腕時計は、国境を越える資産です。
ロレックスの「デイトナ」やパテック・フィリップの「ノーチラス」は、東京、ニューヨーク、ドバイ、ロンドン、どこへ行ってもほぼ共通の相場で取引されます。
万が一、居住国でカントリーリスク(戦争、預金封鎖、ハイパーインフレ)が発生した際、腕に巻いて出国できる数百万円~数千万円の資産は、究極の保険となり得ます。
2026年の不安定な世界情勢において、この「持ち運べる資産」という属性は、富裕層にとって見逃せないポイントです。
2-3:流動性のリスクと保管コスト
一方で、株式のように「クリック一つで即座に現金化」できるわけではありません。
売却には査定や委託販売の手続きが必要であり、現金化までに数日から数週間かかる場合があります。
また、精密機械である以上、3~5年に一度のオーバーホール(分解掃除)が必要です。
これには5万円~20万円程度のランニングコストがかかります。
これらを「維持管理費」として計算に入れておく必要があります。
第3章:経営者・個人事業主必見!「減価償却」と税務の考え方
資産1000万円以上を運用する場合、税金の影響を無視することはできません。
特に法人オーナーや個人事業主にとって、腕時計が「経費」になるかどうかは大きな関心事です。
※注:以下は一般的な税務の考え方ですが、個別の事例については必ず顧問税理士にご相談ください。
3-1:減価償却資産として認められるか?
原則として、時間の経過とともに価値が減少する資産は「減価償却」の対象となります。
しかし、高級腕時計に関しては、国税庁の通達や過去の判例により、扱いが非常にシビアです。
100万円の壁:
かつては「1点100万円を超える時計」は、「時間の経過により価値が減少しない資産(書画骨董等)」とみなされ、減価償却が認められないケースが一般的でした。しかし、平成27年の税制改正等により、「美術品等」の判定基準が明確化されました。
現在では、100万円以上であっても「時の経過により価値が減少することが明らかなもの」であれば、減価償却資産として認められる余地があります。しかし、ロレックスのような「プレミア価格」がつくモデルは、「価値が減少しない」とみなされるリスクが高いのが実情です。30万円未満の少額減価償却資産:
青色申告を行っている中小企業者等であれば、取得価額が30万円未満の時計は「少額減価償却資産」として、購入年度に一括で経費計上(即時償却)できる特例があります。
(例:29万円の中古オメガなどを、業務上必要な備品として購入する場合など)
3-2:福利厚生やユニフォームとしての活用
実務上、高級腕時計を経費にするためのロジックとして、「経営者の個人的な趣味」とみなされないことが絶対条件です。
事業関連性の証明: ファッションモデルや芸能人など、外見が売り上げに直結する職業であれば認められやすいですが、一般的なコンサルタントやIT企業の社長が「数百万円の時計」を経費にするのは否認リスクが高いです。
永年勤続表彰: 従業員への永年勤続表彰の記念品として時計を渡す場合、社会通念上相当な金額であれば福利厚生費として処理できますが、これも1000万円クラスの時計では認められません。
3-3:個人売却時の「譲渡所得」の特例
実は、個人として保有・売却する場合の方が、税制上のメリットが大きい場合があります。
生活用動産の非課税枠:
家具、什器、衣服などの「生活に通常必要な動産」の譲渡による所得は、原則として非課税です。
しかし、「1個または1組の価額が30万円を超える貴金属・宝石・書画骨董など」は課税対象となります。
ここがグレーゾーンですが、ステンレス製のロレックス(実用時計)が「貴金属」に該当するかどうかは議論があります。金無垢モデルやダイヤ入りは確実に課税対象ですが、ステンレスモデルであれば「生活用動産」として非課税で売却益を得ている個人投資家も少なくありません。
※ただし、反復継続して売買を行えば「営利目的」とみなされ、雑所得や事業所得として課税されます
第4章:2026年版 リセールバリューの高いモデル選定基準
資産性を重視する場合、選ぶべきブランドとモデルは極めて限定的です。
「好きな時計を買う」のではなく「市場が欲しがる時計を買う」という視点が必要です。
4-1:鉄板の「御三家 + 王者」
資産価値の維持という観点では、以下の4ブランドに集約されます。
ROLEX(ロレックス): 圧倒的な流動性と知名度。通貨としての側面が強い。
PATEK PHILIPPE(パテック・フィリップ): 時計界の頂点。オークションでの評価が別格。
AUDEMARS PIGUET(オーデマ・ピゲ): 「ロイヤルオーク」一本足打法だが、その需要は底堅い。
VACHERON CONSTANTIN(ヴァシュロン・コンスタンタン): 上記3社に次ぐ歴史と格式。2020年代中盤から再評価が進んでいる。
4-2:具体的なモデル選定(2026年推奨)
2026年現在、狙うべきは「生産終了が噂されるモデル」や「普遍的なクラシックモデル」です。
表2:リセールバリュー期待値の高いモデルリスト
4-3:ネオ・ヴィンテージという選択肢
2026年のトレンドとして見逃せないのが、1990年代~2000年代初期の「ネオ・ヴィンテージ」です。
現行モデルが大型化・厚型化する中で、この時代の「程よいサイズ感(36mm~40mm)」と「過渡期のメカニズム」が再評価されています。
ロレックス エクスプローラーI(Ref.14270 / 114270): 36mmの完璧なバランス。
ロレックス サブマリーナー(Ref.14060 / 16610): アルミベゼルの経年変化を楽しめる最後の世代。
これらはまだ爆発的な高騰をしていない個体もあり、1000万円の予算の中でポートフォリオを組む際の「手堅い分散投資先」として優秀です。
第5章:購入と売却の戦略的アプローチ
5-1:正規店マラソン vs 二次流通市場
資産1000万円以上の方にとって、「時間」は最も貴重な資源です。
ロレックスの正規店に通い詰める(いわゆるマラソン)ために何百時間も費やすのは、機会損失の観点から合理的ではありません。
戦略A:外商・コネクションの活用
百貨店の外商カードや、高級時計店の太客としての実績があるなら、正規店での定価購入を目指すべきです。これが最もリターン率が高い(買った瞬間にプラスになる)方法です。戦略B:信頼できる二次流通店での購入
コネクションがない場合、プレ値(定価以上の市場価格)であっても、信頼できる有名専門店で購入するのがベターです。2026年の市場は安定しているため、人気モデルであればプレ値で買っても、数年後の売却時にトントン、あるいは微増で抜けられる可能性が高いです。
5-2:コンディションと付属品の重要性
時計を「資産」として扱うなら、以下の管理が必須です。
「保証書(ギャランティーカード)」は命:
これがないだけで、買取価格は数万円~数十万円下がります。箱、余りコマ、冊子も全て保管してください。
「磨き(ポリッシュ)」は慎重に:
傷を消すために研磨を行うと、ケースが痩せてしまい、ヴィンテージ市場での価値が激減します。コレクターは「ノンポリッシュ(未研磨)」を最も高く評価します。小傷は「味」として残すのが正解です。
第6章:リスク管理とポートフォリオの組み方
最後に、1000万円を時計に割り当てる際のモデルケースを提示します。
ケーススタディ:予算1000万円のポートフォリオ
【攻めと守りのバランス型】
守りの資産:ロレックス デイトナ(中古・良品)
予算:約450~500万円
役割:ポートフォリオの核。換金性が最も高く、暴落時の底値も堅い。
実用と楽しみ:ヴァシュロン・コンスタンタン オーヴァーシーズ(中古)
予算:約350~400万円
役割:普段使いのラグジュアリースポーツ。「雲上ブランド」所有の満足感。
将来の化け枠:90年代ロレックス または 独立系ブランド
予算:約100~150万円
役割:ネオ・ヴィンテージの再評価待ち、または希少性によるアップサイド狙い。
このように複数の時計に分散することで、特定のモデルの人気下落リスクをヘッジしつつ、TPOに合わせた使い分けが可能になります。
盗難・紛失リスクへの備え
高級時計は盗難のリスクと隣り合わせです。
自宅では据え置き型の金庫で保管し、外出時は決して目を離さないことが基本です。
また、動産保険への加入も検討すべきですが、時計単体での加入はハードルが高い場合があります。
火災保険の特約(家財保険)でカバーできるか、事前に保険会社に確認を行いましょう。
おわりに
高級腕時計は、2026年現在において、単なる嗜好品を超えた「オルタナティブ資産」としての地位を確立しています。
インフレに強い「実物資産」であること。
世界中で換金可能な「通貨」であること。
そして何より、保有期間中に「最高の高揚感」を与えてくれること。
これらが、株式や不動産にはない時計投資の魅力です。
しかし、利益を出すためには「モデル選定」と「コンディション維持」が全てです。
一時の流行に流されず、歴史的背景と需給バランスを見極める目を持つこと。
それが、あなたの腕元にある1000万円を、将来さらに大きな価値へと育てる鍵となります。
この記事が、皆様の資産運用と時計選びの一助となれば幸いです。
【免責事項】
本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の勧誘や売買の推奨を目的としたものではありません。プライベート・アセット投資には、元本割れのリスクや流動性リスクが含まれます。投資の最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。
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