Published 08 Jan 2026

債券投資の新しい選択肢。「銀行」の代わりに企業へ貸し付ける『プライベート・デット』の利回りとリスク

債券投資の新しい選択肢。「銀行」の代わりに企業へ貸し付ける『プライベート・デット』の利回りとリスク

資産1000万円以上を保有する準富裕層・富裕層の間で、今、最も注目を集めているアセットクラスがあります。 それが「プライベート・デット(Private Debt)」です。 これは、株式のような激しい値動きを避けつつ、伝統的な債券や預金を大きく上回る利回りを狙う「ミドルリスク・ミドルリターン」の投資手法です。

2026年1月現在、資産運用を取り巻く環境は大きな転換点を迎えています。


かつて「安全資産の王様」と呼ばれた国債や日本国内の銀行預金だけでは、インフレ率に勝つことが難しい時代が定着しました。


資産1000万円以上を保有する準富裕層・富裕層の間で、今、最も注目を集めているアセットクラスがあります。


それが「プライベート・デット(Private Debt)」です。


これは、株式のような激しい値動きを避けつつ、伝統的な債券や預金を大きく上回る利回りを狙う「ミドルリスク・ミドルリターン」の投資手法です。


かつては機関投資家や一部の超富裕層にしか門戸が開かれていなかったこの市場が、2026年の現在、個人の有力な選択肢として開放されつつあります。


この記事では、資産運用のプロフェッショナルな視点から、プライベート・デットの仕組み、2026年最新の利回り水準、そして決して無視できないリスクについて、どこよりも詳しく解説します。


第1章:なぜ今、「プライベート・デット」なのか?

2026年の投資環境と「銀行」の限界

2026年1月、世界経済は「金利のある世界」への適応を続けています。


米国や欧州の政策金利は高止まりから緩やかな調整局面に入ったとはいえ、以前のようなゼロ金利時代に戻る気配はありません。


一方で日本国内に目を向けると、金利はわずかに上昇したものの、大手銀行の定期預金金利は依然としてインフレ率を下回る水準です。


「銀行にお金を置いておくだけでは、実質的な資産価値が目減りする」


この事実に気づいた資産1000万円以上の層が、株式(S&P500やオルカン)への集中投資リスクを回避するために求めているのが「株式とは異なる動きをする、高利回りのインカムゲイン資産」です。


そこで白羽の矢が立ったのが、プライベート・デットです。

プライベート・デットとは何か?

プライベート・デットとは、一言で言えば「銀行を通さずに、投資家(ファンド)が直接企業にお金を貸し付けること」を指します。


通常、企業が資金調達をする場合は以下の2つの方法が一般的です。


  1. 銀行借入(間接金融)

  2. 社債発行・株式上場(公開市場での直接金融)


しかし、中堅企業や新興企業、あるいは買収(M&A)資金を必要とする企業の中には、「銀行の審査基準ではスピードが遅い」「一般的な社債市場では柔軟な条件設定ができない」といったニーズを持つ企業が多数存在します。


こうした企業に対し、投資家から集めた資金を貸し出し、その対価として「高めの金利」を受け取る。


これがプライベート・デットの基本的な仕組みです。


第2章:伝統的資産との違いと「利回り」の源泉

プライベート・デットの最大の魅力は、その利回りの高さにあります。


では、なぜ国債や社債よりも高いリターンが得られるのでしょうか。


その理由は「イリキディティ・プレミアム(流動性プレミアム)」にあります。

イリキディティ・プレミアムとは

プライベート・デットは、株式市場や国債市場のように、証券取引所で毎日売買できるものではありません。


一度投資すると、数ヶ月から数年間は資金が拘束されるケースが一般的です。


「好きな時に換金できない」


この不便さ(流動性の低さ)を引き受ける対価として、上乗せされる利回りのことをイリキディティ・プレミアムと呼びます。


長期での資産形成を前提とするならば、日々の換金性は必ずしも重要ではありません。


このプレミアムを享受できるかどうかが、資産を増やすスピードを左右します。

資産クラス別の比較表(2026年1月基準)

以下は、一般的な資産クラスとプライベート・デットの比較です。


資産クラス

主な

投資対象

期待利回り(年率)

流動性(換金しやすさ)

リスク

特徴

銀行預金

(国内)

日本国債等

0.01% ~ 0.5%

極めて高い

極低

元本保証だが増えない

先進国国債

(米国債等)

政府

4.0% ~ 5.5%

高い

低~中

金利変動リスクあり

投資適格社債

大手優良企業

4.0% ~ 5.5%

高い

企業の信用力に依存

ハイイールド債

信用力が低い企業

6.0% ~ 8.0%

中~高

公開市場で価格が変動

プライベート・デット

非上場企業等

8.0% ~ 12.0%

低い

中~高

価格変動が小さく高利回り

株式

(S&P500等)

上場企業

7.0% ~ 10.0%

高い

値動きが激しい


※利回りは市場環境により変動します。外貨建ての場合は為替リスクも考慮が必要です。


変動金利によるインフレ耐性

多くのプライベート・デット(特にダイレクト・レンディング)は、「変動金利」を採用しています。


これは、「基準金利(SOFRなど) + スプレッド(上乗せ金利)」で貸出金利が決まる仕組みです。


  • 固定利付債(通常の国債など): 金利が上昇すると、債券価格は下落する。

  • プライベート・デット: 金利が上昇すると、受け取れる金利収入が増える。


2026年のように、金利水準が不透明な環境下において、金利上昇リスクに強い(あるいは金利上昇を味方にできる)という性質、ポートフォリオを守る上で非常に強力な武器となります。


第3章:プライベート・デットの具体的な種類

一口にプライベート・デットと言っても、投資対象によってリスク・リターンが異なります。ここでは主要な3つの戦略を紹介します。

1.ダイレクト・レンディング(Direct Lending)

現在、個人投資家がアクセスできるプライベート・デットの中で最も主流なのがこれです。


銀行融資の代わりに、中堅・中小企業(ミドルマーケット)へ直接融資を行います。


  • 特徴: 比較的安定している。融資対象企業のキャッシュフローを原資とする。

  • 担保: 多くの場合、企業の資産や株式を担保に取る「シニア・セキュアード(優先担保付)」の形式をとるため、万が一企業が破綻しても回収順位が高い。

2.メザニン・デット(Mezzanine Debt)

「中二階」を意味するメザニンは、通常の融資(シニアローン)と株式(エクイティ)の中間に位置します。


  • 特徴: シニアローンよりも返済順位が低い(劣後する)分、利回りが高く設定される。

  • リターン: 金利収入に加え、新株予約権(ワラント)などが付与され、企業の成長に応じたアップサイド(値上がり益)を狙える場合がある。

3.ディストレス・デット(Distressed Debt)

経営不振や破綻懸念のある企業の債権を安値で買い取り、企業再生や資産売却を通じて利益を得る手法です。


  • 特徴: ハイリスク・ハイリターン。「ハゲタカファンド」の手法に近い。

  • 対象: 上級者向けであり、一般的な個人投資家のコア資産には不向き。


第4章:投資家が知っておくべき「3つのリスク」

「利回りが高い」ということは、必ず裏側にリスクが存在します。プライベート・デット投資を検討する際は、以下のリスクを許容できるか自問自答してください。

1.信用リスク(デフォルトリスク)

貸付先の企業が倒産し、お金が返ってこないリスクです。


銀行が融資を渋るような企業に貸し付けるケースもあるため、一般的に国債や優良社債よりデフォルト率は高くなります。

対策: 数百社以上に分散投資しているファンドを選ぶことが鉄則です。1社が倒産しても、全体への影響を軽微に抑えることができます。

2.流動性リスク(換金できないリスク)

前述の通り、プライベート・デットは「売りたいときにすぐ売れない」資産です。


多くのファンドでは、四半期ごとの解約制限や、解約手数料(ペナルティ)を設けています。

対策: 全財産を投資してはいけません。10年使わない余裕資金、あるいはポートフォリオの10%~20%程度に留めるのが賢明です。

3.透明性の欠如(ヴァリュエーションの不透明さ)

上場株式のように毎日株価が出るわけではありません。


ファンドが算出する評価額(NAV)を信じることになりますが、市場のショックが価格に反映されるまでにタイムラグがあります。


対策: 実績があり、監査法人のチェックを受けている大手運用会社(ブラックストーン、アレス、KKR、ブルーオウルなど)の商品を選ぶことが重要です。


第5章:資産1000万円以上の投資家が実践すべき投資戦略

では、実際にどのように投資すれば良いのでしょうか。


2026年現在、日本国内の個人投資家がプライベート・デットに投資する方法は大きく広がっています。

投資方法の選択肢

1.BDC(Business Development Companies)への投資

米国市場に上場している「事業開発会社」の株式を購入する方法です。


  • メリット: ネット証券(SBI証券や楽天証券など)の口座があれば、米株と同じように1株から購入可能。いつでも売買できる。

  • デメリット: 株式市場の変動の影響を直接受けるため、本来のプライベート・デットの強み(価格の安定性)が薄れる。

  • 代表銘柄: Ares Capital (ARCC)、FS KKR Capital (FSK) など。

  • 利回り: 配当利回り9%~11%程度(米ドルベース)。

2.国内証券会社・銀行が取り扱う「非上場投信(私募ファンド)」

大手証券会社やプライベートバンク部門が富裕層向けに販売している投資信託です。


  • メリット: 価格変動がマイルド。日本の金融機関が選定した商品であるため、安心感がある。

  • 条件: 最低投資金額が300万円~1000万円以上、あるいは「適格機関投資家等特例業務」の届出が必要なプロ向けファンドなど、ハードルが高い場合がある。

  • 2026年の傾向「公募投信」として、小口(1万円程度)から購入できるプライベート・デット関連ファンドも登場し始めています。目論見書をよく確認しましょう。

3.オルタナティブ投資プラットフォーム(Fintech)

近年急成長している、オンラインで完結する貸付ファンドへの投資サービスです。


  • メリット: 手軽に始められる。

  • 注意点: 運営会社の信頼性を見極める必要がある。過去には行政処分を受けた事業者もあったため、大手金融機関が出資しているプラットフォームを選ぶのが無難です。

ポートフォリオへの組み入れ例

資産1000万円以上を持つ投資家の場合、以下のようなアロケーション(配分)が推奨されます。


【保守的なポートフォリオ例】

  • 現金・預金: 30%(生活防衛資金・暴落時の買付余力)

  • インデックス株式(全世界・S&P500): 40%(長期的な成長エンジン)

  • 債券(米国債・優良社債): 20%(安定性)

  • プライベート・デット: 10%(利回りの底上げ)


【インカムゲイン重視のポートフォリオ例】

  • 現金・預金: 20%

  • 高配当株式: 30%

  • REIT(不動産): 10%

  • プライベート・デット: 20%

  • その他債券: 20%


プライベート・デットを2割程度組み込むことで、ポートフォリオ全体の利回りを1%~2%程度押し上げることが期待できます。


また、株式との相関性が低いため、株式市場が暴落した際のクッション役としても機能します。


第6章:2026年以降の展望と注意点

「質への逃避」が始まる

2020年代前半のプライベート・デット・ブームにより、市場には多額の資金が流入しました。


これにより、融資競争が激化し、質の悪い企業への貸付が増えている懸念もあります。
2026年以降は、「運用会社の選別能力」が問われるフェーズに入ります。


  • トラックレコード(運用実績): 過去の不況期(リーマンショックやコロナショック)をどう乗り越えたか。

  • オリジネーション能力(案件発掘能力): 銀行が手を出さない「危ない案件」ではなく、銀行の手が届かない「優良なニッチ案件」を見つけられるか。


これらを見極めるためには、単に「利回りが高いから」という理由だけでマイナーなファンドに飛びつくのは危険です。


世界的に実績のある大手運用会社(ブラックロック、ブラックストーン、KKR、カーライルなど)が関与している商品を選ぶことが、失敗しないための第一歩です。

為替リスクの管理

海外(主に米国)のプライベート・デットに投資する場合、円ベースでのリターンは為替レートに大きく左右されます。


  • 円高リスク: 1ドル150円で投資し、償還時に130円になっていれば、為替差損で高金利が吹き飛びます。

  • 為替ヘッジ: 「為替ヘッジあり」のクラスを選ぶことで為替リスクを低減できますが、日米金利差分のヘッジコスト(実質的な手数料)がかかり、利回りが2%~4%程度低下する可能性があります。


2026年は日米金利差が縮小傾向にあるとはいえ、依然としてヘッジコストは無視できません。


自身の資産全体の為替比率を考慮し、「ヘッジあり」と「ヘッジなし」を使い分ける戦略が求められます。


結論:プライベート・デットは「第3の柱」になり得る

資産1000万円を超えた投資家にとって、資産を守りながら増やすためには、株式一辺倒の投資から脱却し、分散を図ることが不可欠です。


「銀行」の役割を投資家が担う。

このプライベート・デットという仕組みは、金融の民主化の象徴とも言えます。


流動性が低いというデメリットを正しく理解し、余裕資金の一部を振り向けることで、あなたのポートフォリオはより強固で、より高いキャッシュフローを生み出すものへと進化するでしょう。

<本記事の要点まとめ>

  1. 高利回り: 年率8%~10%(米ドルベース)程度の期待リターン。

  2. 変動金利: 金利高止まりの環境下でも収益力を維持しやすい。

  3. リスク: 換金しにくく、貸付先の倒産リスクがある。

  4. 投資法: BDC(株式市場)、投資信託(証券会社)、私募ファンド等を使い分ける。

  5. 戦略: 資産全体の10%~20%を目安に分散投資する。


2026年の資産運用において、プライベート・デットはもはや「特殊な投資」ではありません。


リスクとリターンを正しく理解した賢明な投資家だけが享受できる、新しい時代のスタンダードな選択肢なのです。



【免責事項】
本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の勧誘や売買の推奨を目的としたものではありません。プライベート・アセット投資には、元本割れのリスクや流動性リスクが含まれます。投資の最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。


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