株式会社ジャパン・オーガニック・イールド(以下、JOY)は、未利用の植物資源や廃棄される植物を使って、高付加価値な健康・美容・生活商品を提供する企業だ。これは世界で初めてのビジネスモデルだといい、日本を超えて世界での活躍を期待されている。
植物資源のアップサイクルや、植物が持つ「エクソソーム」の価値や効果、世界を見据えた今後の展望や現在の動きについて、代表取締役の丹藤信平氏に伺った。インタビュアーは、エンジェル投資家の福田和博氏が務める。
作り手にも使い手にも高い価値を提供。植物エクソソームを活用した製品開発
福田:最初に、御社の事業概要を教えてください。
丹藤:弊社は「ボタニカル革命」というビジョンのもと、植物が含む「エクソソーム」を原料に、様々な製品を作っています。「エクソソーム」とは、細胞から分泌される小胞体で、副作用を引き起こすことなく生体機能を回復、維持させるなどの健康効果が期待されています。ただ、非常に高価で、一部の人しか使えないのが現状です。それを、当たり前のようにあらゆる人が使えるような社会を目指しています。
⇧JOYが掲げる「ボタニカル革命」
製品の開発においては、未利用や廃棄されてしまう植物を原料とし、それらからエクソソームを含む水細胞液を取り出します。また、その際に残される乾燥した植物や、一緒に取れる油も原料として使い、アップサイクルしながら植物をあますところなく製品化しています。このビジネスモデルは世界初で、弊社以外に植物アップサイクルで植物エクソソームを含む原料を提供している会社はほかにありません。本来は産業廃棄物となる植物を買い取り、安価で植物エクソソームを利用できる製品を開発する。生産農家から農家のある地域、販売する方、消費者の全員がWINであるビジネスモデルを目指しています。
福田:具体的にどのような製品を開発されているのですか?
丹藤:第1弾として発売した製品が、世界初の飲む植物エクソソームである「シマアザミ細胞液」です。奄美群島徳之島原産のシマアザミを原料としており、腸内環境や肝機能にはたらきかけ、免疫改善やコレステロール値、尿酸値の改善が期待できます。そして第2弾として発売したのが、スキンケアやヘアケアに効果が期待できる「ドラゴンリーフ細胞液」です。世界で初めて、ドラゴンフルーツの葉っぱと茎を原料として開発されました。ドラゴンフルーツの葉っぱと茎は元来捨てられていたもので、実を出荷するのと、葉と茎を裁断して処理する費用が同じくらいの場合もあるそうです。
⇧JOYが提供する製品群
福田:今まで捨てていたものをアップサイクルしてこんなに効果の高いものができるとは、素晴らしいですね。丹藤さんはどういうルートでその製法にたどり着いたのですか。
丹藤:製法については、2019年に起業した時に紹介で知りました。ただ、それまではこの製法があまり活用されてなかったんですね。というのも、この製法で作られたものがなぜ良いのかがよくわかっておらず、ビジネスモデル化されていなかったんです。そこで私は効果の源泉が植物エクソソームであるということを発見し、ビジネスモデル化することで製法に息吹を吹き込んだのです。
福田:原料も丹藤さんのつながりなどで存在を知ったのですか?
丹藤:原材料についてもストーリーがありまして、私が起業する3ヶ月前に訪れた沖縄で、沖縄の植物の可能性に気づいたんですね。その後、展示会で奄美シマアザミという植物の存在を知りました。もともと奄美シマアザミは、奄美大島の長寿の秘訣なのではないかと研究がされていたんですね。その素晴らしさに、これを使って何かしたいと思うようになったんです。さらに、偶然なことに大学時代の友人が奄美群島の徳之島出身で。そのつながりで、ドラゴンフルーツの葉と茎にも出会い、この2つを原材料にして作ろうと決めました。
福田:活用されていなかった製法と、丹藤さんが出会った材料とがうまく結合して、このような素晴らしい商品が生まれてきたと。イノベーションは既存のアイディア同士を結合させることによって生まれると言われますが、まさにそれですね。
注目されるボタニカルと、世界に広がるJOY
福田:私はボタニカル業界に関してあまり詳しくないので教えていただきたいのですが、ボタニカル製品の業界の動向や広がりをどのように捉えていますか?
丹藤:植物をベースにしたボタニカル業界は世界的にトレンドになっていると思います。その理由として大きいのは、SDGsの流れが活発化する中で、サステナブルな社会のために石油や動物由来の製品ではなく、植物由来のものが注目されるようになっていることが挙げられます。実は、世界中の有機物の99.9%が植物なんですよ。人間と動物を足しても0.1%しかない。そこで、植物のアップサイクルをしたり置き換えたりする流れがあるんですね。例えば、先の方にある実以外の大部分が捨てられてきたトウモロコシをバイオ燃料にしたり、ほとんど全ての化粧品会社が使っているブチレングリコールという防腐剤を、トウモロコシやサトウキビ由来のものに置き換えたり。こうした動きが世界的に活発になっています。
福田:JOYさんも名前に「JAPAN」が入っていますし、ぜひ世界で活躍していただけたら嬉しいですね。これからの事業展開に向けての取り組みを教えてください。
丹藤:今取り組んでいることとして大きく3つあります。1つ目は、原料である植物エクソソーム水を他者に提供する、ODM原料提供です。やはりシマアザミとドラゴンリーフだけではなかなか広がりにくいので、いろいろな会社に植物エクソソーム水を活用いただくことで、産業として大きくなっていくと思っています。ひいては、この植物ボタニカル革命を世界に広げていくことにもつながると考えています。2つ目が、OEM製品提供です。弊社が提供元となり、いろいろな会社がブランドをつけて売ることで製品の幅を広げていくことを狙いとしています。こうして、原料と製品の両側面から産業としての基盤を広げていきたい考えです。
⇧ボタニカル産業を築く、2つの取り組み
そして、3つ目がエビデンスの強化です。今までは、エビデンスが十分でなかったことが弊社の弱点でした。そこで、学会との関係を強化し、エビデンスをしっかりと構築していく取り組みを進めています。例えば、だんだんと確かなものになってきたドラゴンリーフ細胞液のヘアケアの効能です。北海道科学大学の若命教授とともに研究を進めており、n数を増やしてエビデンスをとって学会発表していきたいと思っています。ほかにも、新規の原料としてサトウキビ由来のエクソソーム水を作りまして。これが血糖値を下げることに効果があるというデータが出ており、糖尿病分野における権威の先生と組んで、エビデンスを構築して学会発表をしようと考えています。これができた暁には、サトウキビ産業と糖尿病治療が劇的に変わる可能性もあるのです。
福田:サトウキビ産業は労働集約型で生産性が低く持続が難しいと言われる中で、アップサイクルして生かすことができたら、付加価値向上になり、新しい産業にもなり、糖尿病に対するアプローチにもなるとは素晴らしいですね。まさに「革命」とも呼べる動きがある今、今後の展望を教えてください。
丹藤:「ボタニカル革命」を世界で広げていくため、4段階の計画を進めています。第1段階が、植物基礎製品の自社開発と発売です。これは実際にシマアザミとドラゴンリーフの製品として形になりました。そして第2段階が、国内の各地にボタニカルファクトリーを建設することです。2023年の第4四半期に、提携している会社が山形県の高畠と鹿児島県の徳之島に工場を作ったことで、これも達成されました。
⇧JOYが考える、ボタニカル革命の展望
丹藤:第3段階が、植物エクソソーム製品の海外輸出です。こちらも、2024年4月から台湾に輸出を始めたところです。また、ロシアとベトナム、中国、韓国、東南アジア諸国などとも商談を進めています。最後となる第4段階が、世界各地にボタニカルファクトリーの工場を作ることです。これが今後成し遂げたいことで、5年、10年先と見据えて取り組んできました。しかし、既にインドネシアなどの国からお話が来ていまして。想定よりも早く、この段階に進めるかもしれないというところですね。
また、これと同時進行で取り組みたいのが、Webベースでのプラットフォーム構築です。生産農家から消費者までを一気通貫で繋げるプラットフォームを作り、そこで生産農家がメーカーや販売者を見つけたりできるような場を作りたいと思っています。また、日本語だけでなく各国の言語で使えるようにすることで、世界中にこのビジネスモデルを広げ、最終的には里山・農業再生、貧困解消まで繋げていきたいです。
福田:これからが非常に楽しみです。おそらく、こういった事業展開には資金が必要になると思いますが、御社の資金調達に対する今後の計画を教えてください。
丹藤:ここまでにお話した中に関連した部分で言うと、学会とタッグを組んでのエビデンス構築に膨大な資金がかかっています。実は今年から来年の初めにかけての1年間だけで2,500万円の資金が必要なのです。これに加えて、プラットフォームの構築に最低1,000万円、OEMとODM、自社製品の拡販や事業拡大資金も合わせて、6,000万円から1億ぐらいの資金を集めたいと考えています。
その資金でこれからさらにボタニカル革命を加速していきたいと思っていますし、弊社のビジネスモデルは世界に打って出ることができると思っています。そんなビジネスモデルを応援していきたい思いのある事業家の方や、私たちと手を組んでこの植物エクソソーム製品を世界に広げていきたいという方は、ぜひ事業を一緒にしながら、資金提供もしていただけたらと思います。
インタビューを終えて
この執筆をきっかけに、はじめて「植物エクソソーム」なる存在を知った。生物の授業で聞いたような言葉が多く、正直なところ最初は「そんなにすごいものなのか」と半信半疑でいた。しかし、インタビューを通じて製品の話を聞いてみると、丹藤さんが引き寄せた製法と材料の組み合わせによって生まれた、イノベーションとも呼べるようなものだった。そして何より、このビジネスモデルやJOYの掲げる「ボタニカル革命」のビジョンは大きな可能性を秘めており、大きな価値のあるものだと感じている。日本から世界へ羽ばたいていく企業として、今後の展開が楽しみだ。
【担当ライター】安藤 ショウカ
植物由来のエクソソーム原料を中心に、健康・美容系商品の開発・販売を手がけるジャパン・オーガニック・イールドです。農業廃棄物や植物細胞中の液体などの「未利用植物資源」をもとに高付加価値の健康・美容・生活商品を提供することで、里山や農業の再生を目指します。現在鹿児島県徳之島産のアマミシマアザミ細胞液と、ドラゴンフルーツ葉茎を活用したドラゴンリーフ細胞液を商品化しています。
【PROTOCOLプロフィールページ】
https://protocol.ooo/companies/57d39067-675e-4937-ad82-3de7901fd928
社名:株式会社ジャパン・オーガニック・イールド Japan Organic Yield Co., Ltd.
創立年月日:2019年(令和元年)7月25日
本社所在地:〒113-0034 東京都文京区湯島2-1-11サンビル202
TEL:03-5340-7440 (代表)
FAX:03-4243-2970
代表取締役社長:丹藤 信平(たんとう しんぺい)
資本金:6,000万円(2024年8月1日現在)
事業内容:植物由来の健康食品・飲料、化粧品などの原料および製品の開発製造販売
企業理念:よろこびの創造と分かち合い
企業ビジョン:ボタニカル革命(植物エクソソームがもたらす健康・美容革命と里山・農業再生)
丹藤信平氏 プロフィール
1990年 早稲田大学法学部卒業後、中外製薬に入社し、国際法務、経営企画などを経験。米国カーネギーメロン大学MBA取得後、米コンサルティング会社モニターグループ コンサルタント、欧州系医薬品企業ユーシービージャパン事業企画・法務部長、経営戦略本部長などを歴任。米国系医療機器企業ボストン・サイエンティフィック・ジャパンの事業企画部長、法人営業戦略部長などを経て、 2019年 株式会社ジャパン・オーガニック・イールド設立、代表取締役就任。モットーはWe Can Changeで、ボタニカル革命で世界を変えることを願い日々励んでいます。
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【PROTOCOLプロフィールページ】
https://protocol.ooo/users/2021df74-fecf-4937-a1a9-d5f2df624a64
【参考】既存記事や各種SNSへのリンク集
会社HP
けいはんなプラザ 入居者情報
ひも解くトーク
#82 丹藤 信平 様(株式会社ジャパン・オーガニック・イールド)これまで使われなかった植物をアップサイクルして作る化粧品とは?ボタニカル革命とは? をひも解く
プレスリリース
『ボタニカル革命』が2023年度流行語大賞候補に選定! (2022年4月1日) - エキサイトニュース
インタビュアー 起業支援家/エンジェル投資家 福田和博氏 プロフィール
東北大学工学部機械知能工学科→大学院情報科学研究科を修了。
㈱東芝 研究開発センターでICT分野の研究開発に従事後、ソニー㈱でオーディオ商品の企画・戦略・事業開発を担当。
2015年に横浜で起業し、複数の新規事業の立上げとM&A Exitを経験後、起業支援家/エンジェル投資家としてハンズオン型で支援中。
(一社)日本ワーケーション協会 公認ワーケーションコンシェルジュ
iU(情報経営イノベーション専門職大学)客員教授
NEXs Tokyo(東京都スタートアップ支援施設)投資家メンター
【PROTOCOLプロフィールページ】
https://protocol.ooo/ja/users/55c8607d-f7a1-46ea-94e5-593785e8db41