Published 04 Aug 2024

【神谷卓宏】運動を超える予防医療に挑み続ける研究者&起業家

【神谷卓宏】運動を超える予防医療に挑み続ける研究者&起業家

https://protocol.ooo/articles/kamiya

※こちらの記事を転載しております


ORKAホールディングス株式会社 (以下ORKA)は、「運動を超える、新たな病気予防の手段を創造する」というPURPOSEの下、成長し続ける健康の新常識のパイオニア企業である。徹底した科学的根拠を用いて、ジムやサプリメント、研究など様々な角度から人々の健康にアプローチする。「副作用のない病気予防商品を作る」という理念を掲げ、日々健康という社会課題に取り組み続けてきたORKAの代表取締役神谷卓宏氏にインタビューで、事業への想い、ビジネスモデル、そして今後の展望などについて語っていただいた。インタビュアーは、エンジェル投資家の福田和博 氏が務める。



ORKAとは?時代は、運動を超える予防医療へ

インタビューを始める前、神谷氏はその方が展開が分かりやすいだろうという配慮で、簡単にピッチで事業の説明をしてくださった。


神谷:僕たちのPURPOSEは「運動を超える、新たな病気予防の手段を創造する」ことです。運動は医学の世界では万能薬と言われており、運動以上に効果を出せるものはないと言われています。だからこそ、これを超える新しい予防医療を作りたいというのが僕たちの挑戦です。
現在、「治る」時代が来ているのにも関わらず24年間連続で病気になる人々は増え続けています。しかし、予防医療の現状は、効果的とされている運動と食事はエビデンス不足な上、医師の積極的な介入が難しい、また一般消費者が購入できる機能性食品や完全栄養食品は効果効能が低いといった問題があります。そこで、医師が介入可能で運動や食事に代わる新たな病気予防手段というものが今求められています。それが、僕たちが5年間の独自研究の末に発見し、特許を申請中の運動効果を超える代謝向上・病気予防の方法、「腸内環境との共生」です。
僕たちは、腸内細菌との共生が運動より効果的な上、脳の活動にも良い影響を与えるということを発見し、事業を腸内細菌へと舵切りをしました。そして、今回独自の治験と現場の医師の声を基に開発した効果効能抜群の病気予防商品が「FROLA」になります。



神谷:ビジネスモデルに関しては、toCでは他の大企業が市場を埋めている中勝つのは厳しいと感じ、toB、医療機関向けのサプリメントとして販売していくことを決めました。海外では、エビデンスベースサプリメント(EBS)と呼ばれています。海外の成功事例だと、ZO SKIN HEALTH、日本の会社だと契約クリニック5,000院で純利益1億円(2019年)を出しているMSS(サプリメントの会社)などが挙げられます。2040年までに、疾患が10%増加すると言われていますから、その中でも需要の多いアレルギー疾患やED領域などの29診療科目別に僕たちはエビデンスをもったサプリメントを開発して、訴求していこうと考えています。
マーケティング手法は契約医院が5,000院に達するまで、サプリメントの会社では世界的にもあまり類をみない学会発表とブース展示で顧客獲得を進めていく予定です。薬と同じ方法にはなりますが、サプリメントの世界では新規性のあるマーケティング手法になります。
将来のロードマップとしては、2029年にシリーズCで売り上げ60億をあげ、その期待値5倍が300億ということでIPOを目指しています。そして、2035年に「10年生存率」というビッグデータを取得して、海外進出していく。とにかく海外でも僕たちがEBSを確立しようと思っています。



トレーニングジムから脳腸相関へ

福田:まず、 Forbesでのインタビューでは、当初の「脳活動を高め健康を増進するためトレーニングジム」の事業から、脳と腸が連携する「脳腸相関」の研究に大きく舵を切った経緯が語られていますが、あらためて簡単に教えて頂けますか?
―神谷:トレーニングジムの事業を行う上で、運動に限界を感じたことがきっかけです。運動で健康増進を目指すにはいくつか問題点がありました。まず、時間的・肉体的負荷が強いため普及しにくいこと。そして、当時は原因不明でしたが、そもそも運動をしても代謝が上がらない方も多々散見されました。しかし、近年の遺伝子解析技術の飛躍的な発展により、腸内細菌叢の全容が明らかになるにつれ、その原因は腸内細菌が作る代謝物が私たちの生理機能や様々な疾患に深く関わっているから、ということが判明しました。
脳科学という難解な研究テーマをベースにしていた弊社からすると、このように要因が"腸内細菌"ということさえ判明すれば脳腸相関研究を取り入れることは容易でした。そこで、大きく舵を切ったのが現実ですが、別の研究に手を出したというよりは、弊社的には研究を加速できる時が来たという印象です。



医師と患者のジレンマの解消:対処療法から原因療法へ
福田:創業以来「医科学データを基に社会問題の解決に貢献すること」を目的とした研究開発を行っていらっしゃいますが、そのような事業に至ったご自身の想いや経緯があれば教えてください。
―神谷:きっかけは、大学での健康プログラムの研究です。そのプログラムの対象者は、病院で対処療法(薬物療法)のみの方々でした。そういった被験者の方々は「薬を飲み続けなければならない」という現実に向き合い、「原因療法」をするため試行錯誤した結果、大学での健康プログラムに参加するからです。
一方、各領域の医師の方々もそんな「薬を飲ませ続けなければならない」という現状を非常に問題視しており、健康に対する保険診療での限界を感じています。例えば、インフルエンザの予防接種が保険適用外であることやブラッシングの推奨しかできない保険適用内の歯周病治療など、医師の方々もこの現状をどうにかできないかと悩んでいます。
そこで僕たちは、「薬を飲ませ続けなければならない」医師と「薬を飲み続けなければならない」患者のジレンマを打破したいと思いました。そして、その時一番効果的と言われていた運動を軸に、メディカルフィットネスを立ち上げたというのが最初の事業の経緯と想いになります。
―福田:確かに、国民皆保険制度であり、また病気になってから治すといった風潮が強い日本において予防医療の文化は醸成されにくいですね。イギリスとかだと医療費は無料だけど軽傷だと何カ月も待たなくちゃいけない分、自分で気を付ける習慣はできるかと思いますが…。こういった医療崩壊に伴う予防医療の普及という残念なストーリーを防ぎつつ、日本で予防医療を普及させるという難しい課題に対して、どのようなことを思い取り組まれていますか?
―神谷:僕たちも最初は一次予防への参入を考えました。しかし、いかに低コストで、「マイナスがない人たち」に将来マイナスになる危険性を訴求するというのは、他の企業が圧倒的なプライシングやマーケティング力を持っている中で限界を感じました。
そこで発想の転換をして、僕たちはすでに病気になってしまい危機感を感じている人を治せばいいのではないか、と考えました。そこの層の人たちには一番響きますし、僕たちは医師と患者のジレンマについて知っていたので。ですから、僕たちは彼らに対する簡易的なソリューションを提供する、ということが挑戦だと思っています。


*サプリメントの会社として革新的なビジネスモデル


―福田:そこでto Cではなくto B、医療業界とのタッグや学会とブース展示といった新たなマーケティング手法に着目しつつ、薬とはまた違うアプローチで人々を健康に導こうとしているのですね。実際やってみて手ごたえや反応はどうですか?
―神谷:まだこれからではありますが、弊社のメディカルフィットネスに来てくださっている病院の先生たちがどんどん導入してくださっているのを見ると、みんなこれを欲しがっているんだな、という手ごたえは感じます。
―福田:そのような手ごたえを感じている中で、新たなマーケティング商法やFROLA、そして今後出てくる商品の販売にチャレンジしていこうということですね。
―神谷:はい、以前D2Cで販売したらどういう人が買ってくれるかっていうテストマーケティングをした時、購入者の3割の方が医療関係者だったんです。ということは、やはり僕たちのtoBのアプローチは間違っていないな、ということで自信がつきました。to Cの販路も病院の先生たちのサンプリング機能を果たすものとして残してはいますが、今後はto Bに注力していこうと思っています。
―福田:私も個人投資家として、今どんな医療系が熱いのか知りたくて学会なども見に行ったりしますが、その横で色々な関連事業者の方々がブース展示やっているのを見ていて、確かにそこの販路にはあまりサプリメントはないというイメージがありますので、売り方のイノベーションになるのではないかとも思いますね。



永遠のテーマ:「運動を超える手法」を考え続ける
福田:現在資金調達を進めていると思いますが、調達した資金の使い先としてどのようなものを想定していますか?
―神谷:二つあります。一つは、ブース展示。やはり非常にコストがかかってきていて、年間で約5,000万円くらいするのでそこが主となるかなとは思います。そして、二つ目は研究開発を進め、世界で誰も発見していない新しいデータを取得しに行く、ということです。やはり、僕たちにしか気づけない研究の着眼点があるので、そこにも資金を投入したいと考えています。
―福田:なるほど、その研究に関しては、必ずしも腸内細菌やシンバイオーシスに限らず、色々な分野にチャレンジされていく予定ですか?
―神谷:主には、腸内細菌をベースにしたものになります。でも僕たちはやはり、最終的には「その人たちが健康になればそれでいい」と思っているので、腸内細菌にこだわる必要はないと思っています。もし見つけた手法が運動や腸内細菌を超えるような効能を持っているのであれば、それでいいと思っています。そういう手法を見つけるのが僕たちの永遠のテーマですし、一生考えていかなければならない内容かな、と思います。


*運動を超える予防医療に挑戦し続けるORKA

―福田:運動を超えるってなかなかのパワーワードですね。運動は価値あると分かっていながら、習慣づかない人が多い中で、運動は運動でやるとしても、それと同時にそれを超える効果をサプリメントとその習慣的な指導を通じてサポートしていくという御社のアプローチにすごく新しさを感じます。



ポテンシャルは無限大、世界に挑戦し続けるORKA
福田:海外進出に関しても想定されているということですが、どういうエリアや国を第一歩にしたいとお考えですか?
―神谷:現実的なのは、ドイツを検討しています。理由としては日本の医療体制と同等であり、EBSが未成熟であること。そして、日本以上のサプリメント服用率、フィットネス人口の多さ、レギュレーション等における輸出入などの行いやすさを踏まえ、ヨーロッパの拠点として非常に導入しやすいと考えています。
またEBSが盛んなアメリカへの参入も考えてはいますが、アメリカに関しては一番のハードルとして医師とのリレーションシップの獲得の難しさというものがあります。
―福田:そうなんですね。最後に今後に向けて伝えておきたいことやアピールしておきたいことなどはありますか?
―神谷:僕たちは、このビジネスに非常にポテンシャルを感じています。このサプリメントの会社として斬新なマーケティング手法に関しては、例えばメディカルサプリメントの会社のMSSさんは、ブース展示のみで1年間で1,500院以上と契約をして、それで純利益を1億〜2億円ほど出していますし、またサプリメントの市場自体も市場の成長率として10%〜20%くらい年々成長していっている非常にホットな市場です。
ですから、今伸びているサプリメントの市場でブース展示・学会発表というマーケティング手法を取る僕たちの事業は今後もとてもポテンシャルがあると信じています。


―福田:最近、薬価の点数も段々と削られていて、ジェネリックなども全然点数にならないので、医者も儲けが厳しいという話も聞いたりします。そういう意味では、医者もある程度収入源として、御社のサプリメントを提供できたりすると、クリニックや院の経営にプラスになる要素もあるのではと思いますね。
今回は、色々とお話いただきありがとうございました。 



インタビューを終えて
超高齢社会が深刻な社会問題となる中、ORKAは時代の変化に柔軟に対応しつつ、新たな健康の常識、「予防医療」の文化を築こうとしているということがとてもよく伝わってきました。神谷さんの冷静で論理的な語り口調の裏に見え隠れする社会課題解決への熱い想い、そしてORKAの斬新なマーケティング方法を初めとし、手段にとらわれずに理想を追い求めるその姿勢は、きっと人類の永遠のテーマである健康に革命をもたらしてくれるであろうという期待を持たせてくれました。病気は、「治す」ものから「予防」するものへ、そんな世の中が一日でも早く訪れることを祈って、今後もORKAへの期待が膨らみます。
【担当ライター】Hinako Saito

ORKAホールディングス株式会社事業概要
「運動を超える新しい予防医療を創造する」というPURPOSEを掲げ、ジム、サプリメント、研究など多岐に渡る手法で健康という社会課題の解決に挑戦し続けるスタートアップ企業。2014年設立時のメディカルフィットネス事業から始まり、現在は研究開発を続けながら、シンバイオーシスの研究をベースにした病気予防商品「FROLA」などのエビデンスベースサプリメントの販売も行う。
【PROTOCOL プロフィールページ】
https://protocol.ooo/companies/orka
社名:ORKAホールディングス株式会社
URL:https://orka-inc.com/
所在地:東京都目黒区上目黒2-43-18 NAKAME GALLERY STREET
設立:2014年5月20日
代表者:代表取締役 神谷卓宏
資本金:53,138,000円
事業内容:
1. 研究開発事業(ORKA (orka-inc.com))
2.フィットネス事業
3.エビデンスサプリメントの販売(FROLA|運動と腸内細菌の研究から生まれたサプリメント (orka-inc.com))
PURPOSE:運動を超える、新たな病気予防の手段を創造する
MISSION:健康づくりの多角的アプローチを実現する
PROMISE:「科学的根拠に基づいた健康に関する研究開発」を重要視する
SERVICE:研究と健康をつなぐ、多角的なデータを基にした総合的な健康開発

神谷卓宏氏 プロフィール


1990年群馬県桐生市生まれ。早稲田大学大院スポーツ科学研究科修了後、京都大学大学院人間・環境学研究科細胞生物学・生命科学研究室共同研究者として生理学研究に従事。ヒトの脳波や内分泌系の応答、腸内細菌叢変化など「脳腸相関」を研究テーマにしている。「副作用のない病気予防商品を作る」という理念の下、2014年に「大学の研究所を株式会社で」をテーマに倫理委員会より許可を受けた施設「ORKA」を設立して以来、運動や脳腸相関など様々な角度から健康という社会問題に取り組み続ける。ForbesJAPANやDiscoverJapanにて「旬な男たち」「新時代をつくるクリエイター」として取り上げられた経歴も持つ。
【PROTOCOL プロフィールページ】
https://protocol.ooo/companies/orka
 


【参考】既存記事や各種SNSへのリンク集
【関連リンク】
【酪酸菌を生きたまま届ける】独自のボトルキャップを開発。腸内細菌✖脳波のデータ研究を進める「ORKA」2024年始動のヘルステック新規事業に向け準備中 | ORKAホールディングス株式会社のプレスリリース (prtimes.jp)
ORKAホールディングス株式会社の会社情報と資金調達 | NIKKEI COMPASS - 日本経済新聞
事業再構築補助金卒業枠採択のORKAホールディングスがエンジェル投資家より資金調達を実施 | ORKAホールディングス株式会社のプレスリリース (prtimes.jp)
研究から生まれた、腸内細菌の新たな概念「シンバイオーシス(共生)」|マクアケ - アタラシイものや体験の応援購入サービス (makuake.com)
脳腸相関研究は日本社会の課題解決の鍵となるか | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
アメリカ・韓国に比べて低い日本のフィットネス普及率。解決のヒントは健康思考にあり | ハフポスト LIFE (huffingtonpost.jp)
ORKAホールディングス株式会社|note



インタビュアー 起業支援家/エンジェル投資家 福田和博氏 プロフィール

東北大学工学部機械知能工学科→大学院情報科学研究科を修了。
㈱東芝 研究開発センターでICT分野の研究開発に従事後、ソニー㈱でオーディオ商品の企画・戦略・事業開発を担当。
2015年に横浜で起業し、複数の新規事業の立上げとM&A Exitを経験後、起業支援家/エンジェル投資家としてハンズオン型で支援中。
(一社)日本ワーケーション協会 公認ワーケーションコンシェルジュ 
iU(情報経営イノベーション専門職大学)客員教授
NEXs Tokyo(東京都スタートアップ支援施設)投資家メンター

【PROTOCOLプロフィールページ】
https://protocol.ooo/ja/users/55c8607d-f7a1-46ea-94e5-593785e8db41

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