オープンソースのパスワードマネージャーであるBitwardenは、1億ドルの資金調達を行った。このラウンドにはソフトウェアとテクノロジーに特化したプライベートエクイティファンドであるPSGがリードし、Battery Venturesが参加した。
パスワードマネージャーソフトウェアの領域は、2022年1月に68億ドルのバリュエーションで6億2000万ドルの資金調達を行った1Passwordや、プライベートエクイティファームによって買収されたのち、2021年末に再び独立企業としてスピンアウトしたLastPassなどの競合が存在する領域で、近年のリモートワーク需要やクラウド型のアプリケーションの利用増加により、注目されている。
2015年に設立され、カリフォルニア州サンタバーバラを拠点とするBitwardenは、推測しにくいパスワードを自動生成し、安全かつデジタルに保管することを可能にし、予測しやすいパスワードを色々なサービスで使いまわさないようにするためのソフトウェアである。
Bitwardenは、無制限にパスワードストレージにアクセスできる無料プランに加え、シングルサインオン(SSO)やアイデンティティ管理などの高度なエンタープライズ機能を含む、有料のプレミアムツールやサービスを多数提供している。ここまでは、前述した他のパスワードマネージャー企業と大きくは変わらないが、Bitwardenの大きな差別化要素は、オープンソースのコードで構築されているという点にある。
これは、プロダクトのコードに透明性があるということであり、セキュリティに敏感な個人ユーザーや企業にとって、プロダクトの内部構造を完全に検査することができるため、評価されている。また、コードがオープンソースプロジェクトとして公開されているということは、世界中のオープンソース開発者がプロダクトのコードに貢献し、新機能の開発などを促進することができるということである。
さらに、Bitwardenがオープンソースであるという特徴に起因するさらに大きな差別化要素がある。それはセルフホスティングが可能であるということだ。つまり、自分のパスワードデータをBitwardenのサーバーを利用することなく管理することができる。
通常、パスワードマネージャーソフトウェアはそのサービス提供者のサーバー上で顧客のパスワードやクレジットカード情報が管理される。しかし、そのサービス提供者のサーバーがハッキングを受ければセキュリティのためのパスワードマネージャーであるのに元も子もない。一方、セルフホスティングをすれば、自分のデータの保存先を、他の利用者のデータが集中して管理されている保存先から分けることができるためデータ流出のリスクを下げることができる
近年の暗号通貨やWeb3技術への関心の高まりから、データプライバシーの重要性や少数のビック・テックに依存しないデータ管理が注目され始めている。ここに注力しているBitwardenは今後さらに評価されていく可能性が高いと考えられる。
Bitwarden
Bitwardenはこの資金調達の発表に関するブログ投稿にて、以下のことは今後も変わらず約束されるということを強調している。
- 必要な機能はすべて永久に無料で提供されること
- オープンソースであること
- セルフホスティング可能であること
- 追加の企業向け機能