「これ以上上がるのか?」「今から買うのは高値掴みではないか?」 ——1000万円以上の金融資産を保有する個人投資家にとって、この判断は容易ではありません。 しかし、結論から言えば、資産保全の観点において「金は依然として『買い』である」と言えます。
2025年12月現在、金(ゴールド)価格は歴史的な高値圏を推移しています。
「これ以上上がるのか?」「今から買うのは高値掴みではないか?」
——1000万円以上の金融資産を保有する個人投資家にとって、この判断は容易ではありません。
しかし、結論から言えば、資産保全の観点において「金は依然として『買い』である」と言えます。
ただし、それはキャピタルゲイン(値上がり益)だけを狙う投機的な買いではなく、ポートフォリオ全体を守るための「保険」としての買いです。
本記事では、2025年末時点の最新市場環境を分析し、資産の5%を金に割り当てることの合理的根拠と富裕層が取るべき具体的な投資戦略を徹底解説します。
1:2025年12月・金価格高騰の背景と市場環境
まず、なぜ金がこれほどまでに買われているのか、その構造的な要因を整理します。
これらは一時的なブームではなく、世界経済の構造変化に起因するものです。
①中央銀行による「脱ドル」の加速
2022年以降顕著になった新興国(グローバルサウス)および中国の中央銀行による金購入は、2025年も継続しています。
外貨準備における米ドルの比率を下げ、制裁リスクのない「無国籍通貨」である金を積み増す動きは、金価格を下支えする最大の岩盤となっています。
②地政学リスクの常態化
中東情勢や欧州の紛争リスクは依然としてくすぶり続けており、「有事の金」としての需要が消えることはありません。
投資家は、株式や債券といった「誰かの負債」である資産から、信用リスクのない実物資産へと資金をシフトさせています。
③根強いインフレと通貨安懸念
主要国でのインフレ率はピークアウトしたものの、過去10年のような低インフレ時代には戻っていません。
特に日本の投資家にとっては、「円の購買力低下」が切実な問題です。
円建て金価格の最高値更新は、金自体の価値上昇に加え、円という通貨の弱さを反映しています。
金価格上昇の主要因(2025年12月時点)
2:なぜ「5%」なのか?ポートフォリオへの組入効果を検証
資産1000万円以上を持つ層にとって、最も避けるべきは「資産の大幅な毀損」です。
ここで「ポートフォリオの5%」という数字が黄金律として浮上します。
「逆相関」が生むリスク低減効果
金は、伝統的に株式や債券とは異なる値動きをします。
特に株式市場が暴落するようなショック時(リーマンショックやコロナショック等)に、金は逆に上昇、あるいは下落幅が限定的である傾向があります。
2025年の市場データを用いたシミュレーションを見てみましょう。
検証条件:
ポートフォリオA: 全世界株式 100%
ポートフォリオB: 全世界株式 95% + 金 5%
ポートフォリオのリスク・リターン検証(想定値)
※最大ドローダウン:資産がピークから最大どれだけ減ったかの下落率
解説
5%の金を組み入れるだけで、リターンをほとんど犠牲にせず、最大下落幅(ドローダウン)を有意に抑えることができます。
資産額が大きくなるほど、1%の下落金額も大きくなります。
1000万円の資産において、下落を7%(70万円分)食い止める効果は、精神的な安定に大きく寄与します。
「守り」こそが最大の「攻め」
投資の世界では「市場に居続けること」が最も重要です。
暴落時に資産が激減し、狼狽売りをしてしまえばそこで終わりです。
金という「クッション」を5%持っておくことで、株式市場の調整局面でも冷静さを保ち、結果として長期的な資産形成が成功します。
3:富裕層が選ぶべき「金」投資の最適解
「金を買う」と言っても、その手段は多岐にわたります。
資産規模や目的に応じた最適な手段を選ぶ必要があります。
手段1:金ETF(上場投資信託)・投資信託
【推奨層:資産形成期、NISA活用者】
最も手軽でコストが低い方法です。
特に東証上場の金ETF(例:1540 純金上場信託)や低コストの投資信託は、株式と同じ口座で管理でき、売買手数料も安価です。
メリット: 流動性が高い、少額から投資可能、保管コスト不要。
デメリット: 実物が手元にあるわけではない(交換可能なETFもある)。
手段2:実物資産(金貨・インゴット)
【推奨層:資産保全期、相続対策、究極のリスクヘッジ】
1000万円以上の資産を持つ場合、ペーパーアセット(金融資産)だけでなく、物理的に保有できる実物資産を持つ意義は大きいです。
メリット: 金融システム破綻時でも価値が残る、所有の満足感。
デメリット: スプレッド(売買手数料)が高い、保管リスク(盗難等)、売却時の税金計算が複雑。
手段3:金鉱株
【推奨層:サテライト枠での積極運用】
金価格にレバレッジがかかったような動きをします。
配当が出る銘柄もありますが、変動率が激しいため「保険」としての機能は薄れます。
あくまでリターン追求用です。
投資手法の比較一覧
4:最高値圏での買い方・戦略「一括か?積立か?」
「今は高値だから、下がってから買いたい」と考えるのは自然です。
しかし、2025年の相場において「待っている間にさらに上がってしまった」という機会損失のリスクも無視できません。
戦略1:時間の分散(ドル・コスト平均法)
現在保有している現金の5%を一気に金に換えるのではなく、12〜24ヶ月かけて毎月定額を積み立てる手法です。
高値掴みのリスクを平準化できるため、心理的なハードルが最も低い方法です。
戦略2:コア・サテライト戦略の適用
コア(守り): 資産の3〜5%程度まで、時間をかけて金ETFや積立で構築。
サテライト(調整): 短期的な急落局面があれば、スポット購入で実物(コインや小型バー)を買い増す。
「押し目」を待つべきか?
2025年現在、明確な「押し目(大幅な下落)」が来る保証はありません。
もしポートフォリオに金が0%なら、「本日、まず目標額の1/3を買う」ことを推奨します。
残りの2/3を半年〜1年かけて購入することで、機会損失と高値掴みの両方のリスクをヘッジできます。
5:1000万円以上の投資家が知っておくべき「税金」の罠
資産運用において税務知識は必須です。
特に金投資は、購入形態によって課税区分が異なります。
①ETF・投資信託の場合
区分: 譲渡所得・配当所得(分離課税)
税率: 一律20.315%
特徴: 株式や債券との損益通算が可能。特定口座・新NISA対応。
アドバイス: ポートフォリオのリバランスを行う際、損益通算ができる点は非常に有利です。管理の手間を嫌う富裕層にはこちらが向いています。
②実物(地金・金貨)の場合
区分: 譲渡所得(総合課税)
税率: 給与所得などと合算して累進課税(最大55%)。
特別控除: 年間50万円の特別控除あり。
長期保有優遇: 5年超保有で課税対象額が1/2になる。
アドバイス: 5年以上保有する前提であれば、税制メリットを享受できる可能性があります。しかし、短期売買には不向きです。また、売却益が大きくなると所得税率が跳ね上がるため、売却のタイミング(退職後など所得が低い時期)を計画する必要があります。
6:2026年に向けたアクションプラン
最高値を更新し続ける金相場に対し、私たちはどう向き合うべきか。最後に具体的なアクションプランを提示します。
ステップ1:現状の把握
ご自身の総資産(預金、株式、債券、不動産等)を洗い出し、その中に占める「金(および貴金属)」の比率を計算してください。
もし0%〜1%であれば、明らかに「インフレ・円安・有事」に対する防御力が不足しています。
ステップ2:5%へのロードマップ策定
目標を「総資産の5%」に設定し、そこに至るまでの購入計画を立てます。
例:総資産2000万円 → 金の目標保有額100万円
現在保有0円の場合、月5万円ずつ20ヶ月かけて積み立てる、あるいは手元資金から30万円分を初期投資し、残りを積み立てる。
ステップ3:リバランスの徹底
金価格がさらに高騰し、ポートフォリオの10%を超えてしまった場合は、一部を売却して株式などの割安な資産に戻す(リバランス)。
逆に金価格が暴落し、比率が3%を切った場合は買い増す。
この機械的な売買こそが、感情に左右されずに資産を増やす秘訣です。
まとめ:金は「儲けるため」ではなく「生き残るため」に持つ
「金は配当を生まない」「単なる石ころだ」という批判は、平和でインフレのない時代には正論でした。しかし、2025年の世界において、その前提は崩れつつあります。
資産1000万円以上の投資家にとって、金投資の目的は「億万長者になること」ではなく、「築き上げた資産を、いかなる環境下でも守り抜くこと」です。
最高値圏にある今だからこそ、逆説的に「価値が認められている資産」としての信頼性が高まっています。
まずは資産の数%から。
あなたのポートフォリオに、最強の「保険」を組み込んでみてはいかがでしょうか。
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