Published 08 Dec 2025

「すぐに換金できない」はメリットだ。長期投資家だけが享受できる『非流動性プレミアム』の正体

「すぐに換金できない」はメリットだ。長期投資家だけが享受できる『非流動性プレミアム』の正体

資産1000万円を超え、次のステージを目指す投資家がいま注目すべきは、あえて「換金しにくい」資産を持つことです。 機関投資家や富裕層が密かにリターンを底上げしている源泉、『非流動性プレミアム(Illiquidity Premium)』。

「いつでも売れる」ことは、投資において本当に正義なのでしょうか? 


資産1000万円を超え、次のステージを目指す投資家がいま注目すべきは、あえて「換金しにくい」資産を持つことです。


機関投資家や富裕層が密かにリターンを底上げしている源泉、『非流動性プレミアム(Illiquidity Premium)』


2025年12月現在、株式市場の不確実性が高まる中で、この「不便さ」こそが最強の武器になる理由を徹底解説します。


はじめに:「流動性の罠」に気づいていますか?

投資の世界では長らく、「流動性(Liquidity)」は高ければ高いほど良いとされてきました。


スマホ一つでS&P500を売買し、クリック一つで現金を移動できる。


これは確かに便利です。


しかし、この便利さには「見えないコスト」が掛かっていることに、多くの個人投資家は気づいていません。


2025年12月現在、世界経済はAI(人工知能)主導の成長と地政学リスクによる分断の狭間で揺れ動いています。


公開市場(株式市場)は、些細なニュースで乱高下を繰り返しています。


そのような環境下で、資産1000万円以上を持つ「準富裕層・アッパーマス層」が次のステップに進むために必要なのは、「あえて資金を拘束する」という逆転の発想です。


これを金融用語で「非流動性プレミアム(Illiquidity Premium)」と呼びます。


これは、ハーバード大学やイェール大学などの大学基金(エンダウメント)が長年実践し、圧倒的なパフォーマンスを叩き出してきた「富の源泉」なのです。


本記事では、なぜ「すぐに換金できない」ことがメリットになるのか、そして2025年の今、具体的にどのような資産に投資すべきかを圧倒的な情報量で解説します。


第1章:非流動性プレミアムの正体とは

1-1:リターンの「上乗せ分」を理解する

投資のリターンは、基本的に以下の計算式で成り立っています。


期待リターン=リスクフリーレート+リスクプレミアム+非流動性プレミアム


  • リスクフリーレート:国債など、ほぼ無リスクで得られる利回り。

  • リスクプレミアム:価格変動リスクを取ることへの対価(株式投資など)。

  • 非流動性プレミアム:「すぐに現金化できない不便さ」を引き受けることへの対価。


市場で瞬時に売買できる上場株式(Appleやトヨタなど)には、この「非流動性プレミアム」は含まれていません。


一方で、未公開株(プライベート・エクイティ)や実物不動産、インフラ投資などは、一度投資すると数年〜10年は資金が拘束されます。


投資家はその「我慢」の対価として、上場株式よりも高いリターン(一般的に年率2%〜5%程度の上乗せ)を要求します。


これが非流動性プレミアムの正体です。

1-2:「売りボタン」がないことが資産を守る

非流動性プレミアムには、金銭的なリターン以上に強力な「心理的メリット」があります。


それは、「狼狽売り(パニック・セリング)の物理的な遮断」です。


2020年のコロナショックや記憶に新しい2024年の市場調整局面を思い出してください。


多くの個人投資家が、暴落の恐怖に耐えきれず、底値で投資信託や株を売却してしまいました。


しかし、プライベートアセット(非流動性資産)を持っていた投資家は違いました。


「売りたくても売れない」ため、強制的に市場の嵐が過ぎ去るのを待つことになり、結果として資産価値の回復その後の成長を享受できたのです。


「すぐに換金できない」ことは、感情による投資ミスを防ぐ最強のプロテクターなのです。


第2章:2025年12月現在、なぜ「プライベートアセット」なのか

2025年末の投資環境は、かつてないほど「公開市場(パブリック市場)」だけに依存するのが危険な状況になっています。

2-1:相関性の低さがポートフォリオを救う

現在、伝統的な資産(株式と債券)の相関が高まっています。


「株が下がれば債券が上がる」という分散投資の神話が崩れつつある今、ポートフォリオの安定化には「株式市場の動きと連動しない資産」が不可欠です。


以下の表は、主な非流動性資産(プライベートアセット)と伝統的資産の特徴比較です。


資産クラス

主な

投資対象

流動性

期待

リターン

市場連動性

特徴

上場株式

取引所の公開企業

極めて高い

中〜高

景気やセンチメントに敏感に反応する

債券

(国債等)

国や格付の高い企業

高い

低〜中

金利動向に逆相関するがインフレに弱い

プライベート・エクイティ(PE)

未公開企業

低い

極めて高

企業の成長や経営改善を直接享受できる

プライベート・デット

企業への直接融資

低い

変動金利型が多く、金利上昇に強い

実物不動産・インフラ

物流施設・発電所

低い

中〜高

インフレヘッジ効果が高く、安定収入がある


2-2:上場企業数の減少と「価値の源泉」の移動

2025年現在、世界的に上場企業の数は頭打ち、あるいは減少傾向にあります。


ユニコーン企業(巨大未公開企業)は、上場せずにプライベート市場で資金調達を行い、急成長期を終えてから上場するケースが増えています。


つまり、「S&P500などのインデックスだけに投資していては、世界で最もダイナミックな成長を取り逃がす」時代になっているのです。


1000万円以上の資産を持つ投資家にとって、この成長の果実を得るためには、プライベート市場へのアクセスが必須条件となります。


第3章:1000万円以上の投資家が狙うべき「3つの非流動性資産」

では、具体的にどのような資産に資金を振り分けるべきでしょうか。


資産規模1000万円〜5000万円クラスの投資家が、2025年から参入しやすく、かつ効果が高い3つのアセットクラスを紹介します。

3-1:プライベート・デット(Private Debt)

【概要】
銀行の代わりに、投資家(ファンド)が企業に対して直接融資を行う仕組みです。

【2025年の注目理由】
銀行規制の強化により、企業への貸し出しが抑制されています。その隙間を埋めるプライベート・デットは需要が爆発しており、年率6%〜10%程度の安定した利回り(インカムゲイン)が期待できます。多くは変動金利であるため、金利水準がある程度高い現在の環境でも有利に働きます。

3-2:プライベート・エクイティ(PE)のセカンダリー

【概要】
未公開株ファンドの持分を満期前に他の投資家から買い取る戦略です。

【2025年の注目理由】
通常のPE投資は「Jカーブ効果」(初期は手数料等でマイナスになる期間)がありますが、セカンダリー投資はすでに運用が進んでいるファンドを(場合によってはディスカウント価格で)購入するため、投資初期からプラスのリターンが出やすく、投資期間も3〜5年と比較的短いのが特徴です。初めて非流動性資産に触れる投資家に最適です。

3-3:インフラストラクチャー投資

【概要】
再生可能エネルギー発電所、データセンター、通信タワーなどへの投資です。

【2025年の注目理由】
AI普及に伴うデータセンター需要の急増と、脱炭素に向けた電力需要が2025年も継続しています。これらは景気変動の影響を受けにくく、契約に基づいた長期的なキャッシュフローを生み出すため、「債券の代わり」として機能します。


第4章:実践!「イェール大学モデル」を個人に応用する

1000万円の資産をすべて非流動性資産にするのは危険です。


ここでは、世界最高の運用実績を誇るイェール大学のエンダウメント(基金)の考え方を日本の個人投資家向けにアレンジした「コア・サテライト+非流動性」戦略を提案します。

4-1:推奨ポートフォリオ配分(資産1000万円の場合)

2025年版の理想的なアセットアロケーションは以下の通りです。


  • 流動性資産(60%):600万円

    • 世界株式(オルカン/S&P500):40% … 成長のエンジン(NISA枠を優先利用)

    • 債券・現金:20% … 即時の支払いや暴落時の買い増し用資金

  • 非流動性資産(40%):400万円

    • プライベート資産(PE・デット・不動産):30% … 非流動性プレミアムの獲得

    • その他(ゴールド・暗号資産等):10% … 通貨分散・ヘッジ

4-2:なぜ「40%」なのか?

多くの日本の金融機関は「オルタナティブ投資は資産の10%程度に」と提案しますが、これではポートフォリオ全体のリスク低減効果リターン向上効果限定的です。


1000万円以上の余剰資金がある場合、生活防衛資金(300万〜500万円程度)が別途確保できているならば、運用資産の30%〜40%を非流動性資産に割り当てることで、初めて「機関投資家レベル」シャープレシオ(投資効率)が実現できます。


第5章:どうやって買うのか?「アクセスの民主化」を活用せよ

かつて、プライベートアセットへの投資は「最低投資金額1億円〜、一部の超富裕層のみ」の世界でした。


しかし、2025年現在、フィンテックの進化により、この扉は1000万円クラスの投資家にも開かれています。

5-1:デジタル証券(セキュリティ・トークン / ST)

ブロックチェーン技術を活用し、不動産や社債を小口化したものです。


  • メリット:10万円程度から投資可能。従来のREITよりも物件の特定性が高い。

  • デメリット:流通市場がまだ発展途上であり、PEなどに比べるとリターンはマイルド。

5-2:個人向けプライベートアセット・プラットフォーム

「LUCA」や大手証券会社が提携する「ブラックストーン(Blackstone)」などの個人向けファンドが代表的です。


  • 特徴:最低投資金額が1万ドル(約150万円)〜数万ドル程度まで下がってきています。

  • 仕組みセミリキッド(Semi-Liquid)型と呼ばれる仕組みが増えています。基本は長期保有ですが、四半期ごとに一定の上限(ファンド全体の5%など)までなら解約・換金が可能という、「完全なロックアップ」「完全な流動性」の中間をとった商品設計です。これが今のトレンドです。

5-3:投資型クラウドファンディング

貸付型(ソーシャルレンディング)や不動産型などがあります。


  • 注意点:手軽ですが、玉石混交です。プラットフォーム自体の信頼性や投資先のデューデリジェンス(査定)能力を厳しく見極める必要があります。2025年現在は、大手金融機関がバックについているサービスを選ぶのが鉄則です。


第6章:投資前に知っておくべきリスクと注意点

「非流動性プレミアム」は魔法ではありません。


リターンが高い分、独特のリスクが存在します。

6-1:Jカーブ効果(J-Curve Effect)

プライベート・エクイティなどでは、投資初期(1〜2年目)は投資先企業の買収費用や管理コストが先行し、リターンがマイナスになる傾向があります。


その後、企業価値が向上して売却(イグジット)する段階で急激にリターンが上がります。


「最初の数年は赤字でも気にしない」という強い精神力が必要です。


これを理解していないと、「運用が下手だ」と勘違いしてしまいます。

6-2:情報の非対称性と透明性

上場企業のように、四半期ごとに決算短信が出るわけではありません。


評価額(NAV)の更新も月次や四半期ごとと遅く、ブラックボックスになりがちです。


信頼できる運用会社(GP)を選ぶことが、上場株選び以上に重要になります。

6-3:税制の違い

2025年現在、日本において多くのプライベートアセット(特に海外ファンドや匿名組合出資)は、上場株式のような「申告分離課税(20.315%)」ではなく、「総合課税(雑所得)」になるケースがあります。


「税制区分」を確認してください。


これが実質リターンを大きく左右します。


結論:10年後の自分への「タイムカプセル」を作ろう

資産運用において、最大の敵は「自分自身の感情」です。


株価ボードを見て一喜一憂し、暴落におびえて売買を繰り返す。


これは「流動性」があるからこそ起きてしまう悲劇です。


「すぐに換金できない」という制約は、一見不便に見えますが、実は「時間を味方につける」ための強制力として機能します。


資産1000万円を超えたあなたが次に目指すべきは、単なる現金の積み上げではなく、「質の高いポートフォリオ」の構築です。


2025年12月、これからの10年を見据えた時、以下の行動指針を持ってください。


  1. 流動性は「必要最低限」あればいいと割り切る。

  2. ポートフォリオの20%〜30%を「プライベートアセット」に配分する。

  3. 目先(1〜2年)の評価額変動を無視し、非流動性プレミアムの収穫を待つ。


「換金できない」不自由さを愛せるようになった時、あなたは真の意味で「長期投資家」となり、市場平均を凌駕するリターンを手にすることができるでしょう。


さあ、あなたの資産の一部を、未来へのタイムカプセル(非流動性資産)に移し替えましょう。


それが、富裕層への最短ルートです。

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