Published 08 Jan 2025

【小林隆洋】RPAと人材育成で労働力不足の解消に挑む起業家

【小林隆洋】RPAと人材育成で労働力不足の解消に挑む起業家

株式会社RPA NEXT(以下、RPA NEXT)は、業務の効率化を追求するだけでなく、RPA(Robotic Process Automation)を通じた人材育成に力を入れている企業だ。今回のインタビューでは、RPA NEXTの代表取締役である小林社長に、同社の事業内容や目指す未来について伺った。インタビュアーはエンジェル投資家の福田和博氏が務める。



RPAビジネスの鍵はツールから人材へ

福田:まず、RPA NEXTの事業概要について教えていただけますか?


小林:弊社はRPAを中心とした業務自動化支援を行っています。RPAは人の手作業をロボットに置き換える技術で、業務効率化や生産性向上に役立っています。ただ、近年の生成AIやローコードツールの台頭もあって、RPA市場が縮小しているとか、オワコンだとかという論調の文章を見かけることもあります。ですが実際にはRPA市場は国内だけでも年率20%という勢いで拡大中です。大企業だけでなく中小企業にも導入されるようになって一般化が進んでいると言って良いでしょう。もちろん弊社も現在では、RPAだけでなく、ローコードツール(例:Kintone、Power Platformなど)を用いた自動化ソリューションにも取り組んでいます。こうした技術を活用することで、企業の労働生産性を高め、業務の「見える化」や効率化を実現するのが私たちのミッションです。


また、弊社では業務自動化支援だけでなく、技術初心者向けの研修も行っています。RPAもローコードツールもノンテクと呼ばれるテクノロジー未経験者がいきなり使いこなすのにはハードルが高いことも事実です。弊社ではツールを使えるようにし、彼らが自分で自動化を実現できる環境を整備し、DX推進や業務の自動化には欠かせない人材育成のお手伝いをしています。


福田:具体的には、どのような業務が自動化されるのですか?


小林:例えば、経理業務のデータ入力や在庫管理、ウェブ上の情報収集など、反復的な作業が挙げられます。こうした業務の流れを一つひとつ確認し、自動化に適した業務を選定し、ツールの特性を考慮した上で実行していくことが重要です。。また、せっかく自動化を進めても導入後の保守や運用が足りないために、頓挫してしまうことがあります。弊社では導入後のサポートも行っています。導入から保守・運用、人材育成まで一貫して支援しています。



創業のきっかけ

福田:創業が2017年とのことですが、RPAに注目された理由は何だったのでしょうか?


小林:私は人材業界で20年間活動してきました。その中で、少子高齢化による労働力不足は避けられない課題だと実感しています。当時はAIも注目されていましたが、まだ実用化には至っておらず、一方でRPAは業務要件を明確にし置き換えをすることで、確実に人の手作業を減らせる技術という認識を持っていました。

また、RPAのような先端技術を学ぶことで、自分自身の働き方や価値を変えていける社会を実現したいとの想いから会社を創業しました。そのため、先端技術を人々に教え、伝えていくことを会社の根幹に据えています。


運輸業界と通信業界での成果

福田:これまでに導入された中で、特に効果があった事例について教えてください。


小林:一つは運輸業界の事例です。社内の経理業務や在庫管理などを自動化し、合計で約3万5千時間分の作業を削減しました。このプロジェクトでは、さまざまな部署の課題を一つひとつ洗い出し、それぞれに最適な自動化ソリューションを導入しました。


もう一つは通信業界での事例です。国内最大手の通信企業において、RPAチームを立ち上げるプロジェクトに参画しました。このプロジェクトは約3年にわたり進められ、営業コンサルタントやエンジニアを含む従業員に対して、RPAのノウハウを全て教え込みました。その結果、社内で外販が可能な体制を構築するとともに、業務効率化を進められる仕組みを整えることができました。


特に、このプロジェクトに参加した若手コンサルタントや、ノンテクの業務に従事していた40代の従業員が、先端技術を学ぶことで大きく成長を遂げたのが印象的です。40代の従業員は開発部門でリーダーシップを発揮する立場となり、若手コンサルタントも営業部門で成果を上げ、それぞれが早期に課長職に昇進しました。これにより、企業内での人材の価値が見直され、さらに人材への投資が活性化する流れを生み出すことができました。


先端技術を学ぶことで人の価値が変われば、企業の姿勢も変わっていきます。こういった取り組みを通じて、従業員の成長を支援し、それが企業全体の成長につながると考えています。また、こうした流れを日本市場全体で広げていくことが非常に重要だと感じています。


全国規模の教育体制を目指して

福田:地域展開についてはどのような取り組みをされていますか?


小林:弊社ではeラーニングや動画コンテンツを提供し、全国どこからでも学べる環境を整えています。これにより、地方の方がスキルを習得して東京で弊社に入社して働いたり、東京で力を付けて都外へ行き、起業して活躍するケースも増えています。また、RPAだけでなく、汎用的なローコードツールを学べるプログラムも用意しています。こういったもので労働者一人ひとりにアプローチをかけることを想定しています。


福田:資金調達後の具体的な計画について教えてください。


小林:RPAやローコードツールは、学んで終わりではありません。学んだ内容を業務で実践し、その中で壁に当たってもさらに学習を繰り返すことでスキルが身についていきます。しかし、学習を終えて運用に入った際に相談できる先がないと、そこでスキルが止まってしまいます。大手企業では、社内教育体制の支援を行い、研修の質を高めることで社員の成長をサポートしていますが、市場全体ではサポートが薄い環境が多く見られます。特に今後導入が広がっていく中小企業においては、その影響が特に顕著に現れるでしょう。


今回の資金調達では、全国規模でのサポート体制を構築し、個人が情報収集やスキル改善に役立てられるプラットフォームを作りたいと考えています。このプラットフォームでは、安価に参加できる形を整え、誰でも気軽にスキルアップを目指せる環境を提供します。


また、教育コンテンツの充実にも取り組んでいきます。現在、パワープラットフォームや自動化に関連する教育プログラムをまとめた総合サイトやプロダクトが市場にほとんど存在していません。大手企業で教育投資が進む中で、一人ひとりの労働生産性を向上させるためには、企業の規模や個人のスキルセットにかかわらず、汎用的に使える教育コンテンツも含むプラットフォームが必要だと考えています。今回の資金調達で、それを実現していきます。


生成AIと業務効率化への取り組み

福田:突如現れた生成AIに対してどのようにお考えでしょうか?


小林:RPA NEXTでは、生成AIを活用した教育と研修にも注力しており、既にChatGPTに関するウェビナーや個人向けコンテンツを展開しています。これらのサービスは1万円以下で受けられる手軽さが特徴で、多くのユーザーが参加できる環境を整えています。


今後、生成AI分野においても、汎用的に使えるツールと、難しすぎたり成果が出にくいツールの仕分けが進むと考えられます。RPA NEXTでは、業務効率化や仕事への取り組み方を変革するために、広がりやすいツールに投資し、関連コンテンツを開発する方針です。これにより、従来の「自動化」という枠組みを超え、より大きな生成AI分野でも教育体制を構築していくことを次のフェーズの目標としています。




人材を育てることで社会を変える

福田:最後に投資家に向けてメッセージをお願い致します。


小林:RPA NEXTが注目しているのは、先端技術を活用しながら「人の可能性」を引き出すことです。弊社は、技術だけではなく、それを使いこなせる人材を育てることが最も重要だと考えています。人が成長することで、企業や社会そのものを変える力となるため、事業の根幹に「人材育成」を据えて取り組んでいます。


先端技術に取り組むにあたっては、誰よりも早く技術を理解し、活用することを目標としています。そこから生まれるサービスや人材が、企業や社会に新たな価値を生み出し、労働者が持つ力を最大限に引き出す仕組みを構築することを目指しています。


福田:素晴らしいお話をありがとうございました。今後のご活躍を楽しみにしています。


インタビューを終えて


今回のインタビューを通じ、小林社長が描く未来へのビジョンに触れることができました。RPAや生成AIを活用し、業務効率化だけでなく、人材の成長と価値向上を目指す同社の取り組みは、これからの社会に大きな可能性をもたらすと思います。株式会社RPA NEXTの今後の展開がとても楽しみです。

【担当ライター】中西祐樹


株式会社RPA NEXT事業概要



会社名:株式会社RPA NEXT

URL:https://rpanext.co.jp/

設立:2017年10月

代表取締役社長:小林隆洋

本社:東京都目黒区下目黒1丁目8-1 アルコタワー7階

事業内容:RPA関連事業・Microsoft PowerPlatform関連事業・研修事業・受託開発・SES事業



小林隆洋氏 プロフィール



株式会社RPA NEXT 代表取締役社長
新卒から20年間一貫して人材、採用、教育関連事業に従事。

人の働き方、キャリア構築などの人事コンサルティング領域をはじめ、業務コンサルティング、新規サービス開発など幅広い実務経験をもつ。

2017年10月にRPAのサポート専門会社「株式会社RPA NEXT」を設立し代表取締役に就任。

「正しいRPA」を標榜し、お客様の環境に合わせたRPA導入支援を得意としており、講師や講演活動による啓発活動にも携わる。


【参考】既存記事や各種SNSへのリンク集

HP

https://rpanext.co.jp/


セミナー情報.com

https://www.seminarjyoho.com/teacher_show_140843.html


PROTOCOL

https://protocol.ooo/articles/rpa-next


startiaraise

https://www.startiaraise.co.jp/news/release/a77



【PROTOCOLプロフィールページ】

https://protocol.ooo/companies/rpa-next


インタビュアー 起業支援家/エンジェル投資家 福田和博氏 プロフィール


東北大学工学部機械知能工学科→大学院情報科学研究科を修了。

㈱東芝 研究開発センターでICT分野の研究開発に従事後、ソニー㈱でオーディオ商品の企画・戦略・事業開発を担当。

2015年に横浜で起業し、複数の新規事業の立上げとM&A Exitを経験後、起業支援家/エンジェル投資家としてハンズオン型で支援中。

(一社)日本ワーケーション協会 公認ワーケーションコンシェルジュ 

iU(情報経営イノベーション専門職大学)客員教授

NEXs Tokyo(東京都スタートアップ支援施設)投資家メンター


【PROTOCOLプロフィールページ】

https://protocol.ooo/ja/users/55c8607d-f7a1-46ea-94e5-593785e8db41