SingulaNet株式会社(以下、SingulaNet)は、日本の強みの一つである漫画などのコンテンツエコノミーを進化させるデジタルサービスを開発する企業だ。クリエイターやアーティストがコンテンツの熱狂的なファンに向けて意欲的にデジタルコンテンツを販売し、同一プラットフォーム内でコンテンツを自動的かつ安全に配信できるサービスを2024年10月に開始する。そんな同社代表取締役の町浩二氏に、コンテンツ流通の課題やこれから目指すことについて伺った。インタビュアーは、エンジェル投資家の福田和博氏が務める。
2024年9月に開始したデジタルコンテンツのプラットフォームとは?
福田:最初に、御社が展開する事業の概要を教えてください。
町:私たちはデジタルコンテンツをクラウドファンディング型で販売して、ファンの皆様の力を使ってコンテンツを拡散していくサービスを2024年10月に開始します。主に漫画・アニメ系のコンテンツとアイドル・タレントのコンテンツの販売、流通システムの開発を行っていく予定です。
2019年の創業以来、コンテンツホルダーの企業に対し、コンテンツ流通システムの受託開発および、ブロックチェーン全般の事業企画支援サービスを提供してきましたが、これまで蓄積してきた弊社のコンテンツ流通関連システムを統合したシステム基盤のSaaS化に新たに取り組みます。
福田:2024年10月から始まるデジタルコンテンツのプラットフォームは、どのような方を対象としてるのでしょうか。
町:ファンの中でも上位1%ほどの重課金してでもコンテンツを楽しみたい超コアファンに向けたプラットフォームを提供します。ファン全体の1/100の人数ではあるものの、熱狂的なファンに100倍の金額を払っても手に入れたいと思ってもらえれば、コンテンツとして収益化できます。
コアファンをターゲットとする理由としては、現在のコンテンツ流通における2つの課題を解決したいからです。
1つ目はクリエイターが自分の作ってみたい領域で収益化するのが難しいという課題。クリエイターは作りたいものがあっても、資金が足りなかったり、編集者や脚本家に認められなければコンテンツ化できません。例えば、料理系のコンテンツを漫画化したくても、近年、料理系コンテンツの発信はYouTubeが主流で漫画の需要が少ないと編集者に断られてしまうと、漫画を作ることはできません。
2つ目はコンテンツを保護する技術的な課題。アートやプロフィール画像の保護は普及しているものの、未だ漫画を読む、音楽を聞くという体験に対してお金をいただくためのコンテンツ保護技術は、一部の大手メディアサービス以外には普及していません。
コンサル時代に抱いた日本経済を活性化させたいという想いと葛藤
福田:国産のコンテンツ販売プラットフォーム事業を始めようと思った理由を教えてください。
町:起業以前から「日本から世界に買っていただくようなITサービスを作りたい」とずっと考えていたからです。
前職では大手外資系コンサルティングファームでITコンサルをしていましたが、基本的にクライアントの業務効率化やコスト削減ばかりに取り組んでおり、自分の仕事によって日本経済が活性化している感触は得られませんでした。「日本独自の戦略を出していかないと、長期的には成長できないのではないか?」と上司に訴えてみたものの、外資系企業ということもあり、物価や人件費の安い地域に業務の一部を移すオフショアを進める当時のグローバル指針を覆すことはできませんでした。
その後自分のポジションや給与は上がっていくものの、日本経済へ貢献できていないことへの違和感が増し、日系のコンサルティングファームに転職。金融業界のクライアントに向けて、日本が世界に売っていくためのサービスを作るためのコンサルティングに携わっていました。
金融業界に携わっていたのは会社都合の理由であったため、独立して起業すると決めた際に、休日を返上してでも熱量高く取り組めるものを見つけなくてはいけないと考え、様々な案を考えてみました。そんな中で自分の好きな映画や音楽分野のコンテンツの保護、販売サービスなら想いをこめてやれると考え、国産のプラットフォーム開発事業を選びました。
インタビューの様子
福田:創業から4年で累計23件のコンテンツ流通関連システムの開発に携わったとのことですが、その中でも印象的だった事例はどのようなものでしたか?
町:やはり初めて自分自身の営業で契約できたビッグIPである大作SFハリウッド映画のデジタルコンテンツ配信の案件が無事に稼働した時は感無量でした。
実際に、約28,000人のSF映画ファンの皆さんにNFTの技術を採用したデジタルポスターを劇場入場者特典として配布してコンテンツを配信したのですが、X(旧ツイッター)での投稿などを通してファンの皆さんの反応を見ることができ、コンテンツを配信する仕事のやりがいを感じることができました。
国内100万人、世界では1億人規模が見込まれる超コアファン市場の第一人者へ
福田:最後に投資家の方々に向けて一言お願いします。
町:コアファンに向けたコンテンツ販売プラットフォームは、既存のサービスがほとんどありません。全体の1/100の超コアファン(日本だと約100万人、世界だと約1億人)の超コアファン市場が誕生すると、漫画やアニメに強みを持つ日本は非常に有利となります。
資金調達によって中期的な運営を安定化させることで、既に当社のサービスに興味を持って頂いている中規模・大規模ファンコミュニティを抱えるIPホルダーの信頼を得られるようになり、有力タイトルの誘致をテコとしてビジネスを加速させることができます。
ご支援のほどよろしくお願いいたします。
インタビューを終えて
漫画やアニメ、アイドルなど世界に誇るコンテンツを持つ日本だが、まだ世界へのコンテンツ流通に可能性を秘めている。海賊版サイトなどが問題となる中、日本のコンテンツが世界でアドバンテージを持ち続け、デジタル資産として価値を最大化するためには、日本がコンテンツ流通のプラットフォーム開発を主導することが必要となってくるのではないか。近年では「推し活」という言葉もよく聞かれるようになり、全体のファンの人数は少ないもののコアファンに支えられているコンテンツの存在が知られるようになっている。そんな中で、資金力はないものの自分が発信したいコンテンツを作りたいクリエイターと、重課金してでもコンテンツを楽しむ体験をしたいコアファンを繋ぐプラットフォームを開発するSingulaNetは、今後拡大が見込まれる超コアファン向けのコンテンツ販売市場を牽引する存在となるだろう。
【担当ライター】松見 梨紗
SinglaNet株式会社事業概要
2019年6月創業。IP(知的財産)などのコンテンツを保有する企業が、NFTによるプロモーションや販売促進を行うためのプラットフォームを開発・提供している。「トランスフォーマー/ビースト覚醒」劇場入場者特典でNFTデジタルポスターを配布するなど、創業から4年で累計23件の開発に携わる。2024年9月には、クリエイターやアーティストがコンテンツの熱狂的なファンに向けて意欲的にデジタルコンテンツを販売し、同一プラットフォーム内でコンテンツを自動的かつ安全に配信できるサービスを開始予定。
社名:Singula Net 株式会社
URL:SinglaNet株式会社
設立:2019年 6月6日
代表取締役社長:町浩二
本社:東京都港区六本木6丁目2−31 六本木ヒルズノースタワー17F
事業内容:エンタープライズ向けコンテンツテクノロジーサービスの提供
コレクション商品(画像・映像・音声)の販売
TwitterなどのSNSで利用するプロフィールアイコン画像に用いることができるデジタルコレクション画像を販売:
キャラクターのファンが情報発信する際に「公式から許可されたプロフィール画像」でファンコミュニティに自分自身をアピールできる。
公式のWEBサイトに他のユーザーより早くアクセスできる権利を販売:
コアファンによる熱意のこもったコンテンツの最新情報の発信ができるように。
公式デジタルコレクション:
ライブや映像配信などの特典サービスとして使うことができる。複数タイプのコレクションを全て揃えたファンの方に特別なコンテンツをプレゼントする企画なども展開できる。
町浩二氏 プロフィール
2003年早稲田大学社会科学部卒業。外資系コンサルティングファームで証券システム開発・運用を中心にシステムエンジニアリング事業に従事し、シニアマネージャーとして最大100人程度の開発組織の運営にあたる。その後、日系コンサルティングファームに転職し、金融業向けに全社ITセキュリティ強化支援、先端技術(ブロックチェーン、Open API、AI)を活用した新規事業開発を支援。独立後、2019年にSingulaNet株式会社を設立し、NFTの発行・流通サービスの企業向け企画支援・ OEMシステム提供などを手がけている。
【参考】既存記事や各種SNSへのリンク集
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インタビュアー 起業支援家/エンジェル投資家 福田和博氏 プロフィール
東北大学工学部機械知能工学科→大学院情報科学研究科を修了。
㈱東芝 研究開発センターでICT分野の研究開発に従事後、ソニー㈱でオーディオ商品の企画・戦略・事業開発を担当。
2015年に横浜で起業し、複数の新規事業の立上げとM&A Exitを経験後、起業支援家/エンジェル投資家としてハンズオン型で支援中。
(一社)日本ワーケーション協会 公認ワーケーションコンシェルジュ
iU(情報経営イノベーション専門職大学)客員教授
NEXs Tokyo(東京都スタートアップ支援施設)投資家メンター
【PROTOCOLプロフィールページ】
https://protocol.ooo/ja/users/55c8607d-f7a1-46ea-94e5-593785e8db41