Published 15 Mar 2023

【独占】全貯金を投じてデジタルアートを購入。NFTコレクターの関口メンディー

【独占】全貯金を投じてデジタルアートを購入。NFTコレクターの関口メンディー

カルチャーは進化している。文化・芸術は、いつの時代も、科学・技術の発展と共に進化してきた。2022年の今もまさに、カルチャーの震源地を揺るがす「新しいテクノロジー」が台頭している。「NFT」だ。

NFTとは、つまり「唯一無二のデジタルデータ」だ。NFTは、人々が購入して保有することができるため、カルチャーとの相性が良く、デジタルアート、デジタルグッズ、デジタルカードなどとして近年活用されている。

近年のNFTの爆発的な盛り上がりとともに、とあるNFTプロジェクトが世界を賑わせている。「Bored Ape Yacht Club」、略して「BAYC」だ。BAYCは、世界最大級のWeb3企業「Yuga Labs」が手掛ける、猿人がモチーフのNFTコレクションである。

BAYCは、2021年4月に1万体限定で販売が開始されたものの、販売当初は全く売れなかった。しかし、世界中の有名人が次々に高値で購入し、自身のソーシャルメディアのプロフィール画像にしたことで、その奇抜なデザイン性と希少なステータス性から、BAYCは一気に世界にその名を轟かせた。

バスケ選手のSteph Curryに始まり、テニス選手のSerena Williams、サッカー選手のNeymar Jr.、アメフト選手のTom Brady、歌手のJustin Bieber、歌手のMadonna、ラッパーのSnoop Dogg、ラッパーのEminem、DJのSteve Aoki、コメディアンのKevin Hart、モデルのParis Hiltonなど、世界トップのセレブリティ達がBAYCの保有者に名を連ねる。

その結果、BAYCは、2022年初頭には最低でも90ETH(当時約2700万円)が必要なほど価格が高騰し、OpenSeaでの流通総額は現在(2022年11月)までに、60万ETH(約1800億円)を超えており、CryptoPunksに次ぐ歴代2位の規模になっている。

BAYCの波はここ日本にも押し寄せることになった。2021年10月、BAYCをある日本の有名人が購入したのだ。その額はなんと48ETH(当時約2300万円)。彼の名は、他でもない、関口メンディーだ。関口氏は、BAYCの購入を振り返り、以下のように言った。

「貯金をBAYCに全つっこみしたんです。めちゃくちゃ怖くて、さすがに手が震えました」


関口メンディーという男

関口氏は、アメリカ出身の日本人で、日本を代表するダンス&ボーカルグループ「EXILE」と「GENERATIONS」のパフォーマーとして兼任で所属する一流のアーティストだ。その他にも、ラップ、俳優、モデル、バラエティなど、その才能と人柄を活かしてマルチに活躍している。

関口氏は、以前から積極的にNFTをコレクションしており、日本の有名人としては珍しかったため、日本のNFT界の中でその行動が注目を浴びていた。そんな中、世界中で話題沸騰中のBAYCを関口氏が購入したことで、日本のNFT界に激震が走った。

関口氏は、BAYC購入をきっかけとしてNFTに本格的にハマり、驚くことに、現在(2022年11月)までに200個ほどのNFTを購入しているという。購入経路は、知り合いからの紹介や、クリエイターからのDMだ。関口氏はNFTを購入する基準として「最終的には人です」と言う。

「その『人』が好きになれるかどうかです。そのクリエイターさんが。僕は、NFTの作品を買ってはいるんですけど、その向こう側にいる『人』にお支払いしているという感覚を持っています。そのクリエイターさんの普段の発信や理念を見て、共感したり、応援したいと思えるかが決め手です」

関口氏は、もともと、「HUMAN MADE」などのストリートウェアブランドを着こなすファッション通として知られ、カルチャーとも積極的に交流を図っていたことから、アートにも精通しており、気鋭のアーティストや知り合いのアーティストを「応援」するためにも、その作品を購入していたという。

知られざる若き才能のクリエイターを応援していた関口氏にとって、まだまだ未開拓の「NFT」は、まさしくフロンティアだった。関口氏とNFTの出会いは、2020年に遡る。その年、関口氏にとって今後の人生を見つめ直す出来事が起こったのだった。


NFTとの出会い

新型コロナウイルス感染症の出現だ。日本をはじめ、世界中のエンタテインメント業界が大打撃を受け、会社の存続さえ危ぶまれる危機的な状況の中で、エンタテインメントに関わる人々は途方に暮れた。

日本を代表するエンタテインメント企業の「LDH JAPAN」も例外ではなかった。EXILEとGENERATIONSのメンバーとして同社に所属する関口氏は、ライブ・コンサートもできず、今後の人生について改めて考えることになった。

「コロナが始まって、リアルに仕事がなくなり、収入も貯金も減り、会社も危ぶまれる可能性もあった中で、『まじで勉強しなきゃ』と思ったんです。その危機感から、本を読んだり、YouTubeを見て、商売とかお金について勉強しました」

勉強の結果、関口は「S&P500」に投資して見事に資産が増えた。しかし、資産運用のある種の正解を見つけた関口氏は、さらなる冒険を求めた。

関口は、YouTubeを見て回る中で、YouTuberの鴨頭嘉人氏とお笑い芸人の西野亮廣氏の対談動画を発見し、西野氏のチャンネルに辿り着いた。西野氏の動画を日々視聴する中で、音声プラットフォームの「Voicy」の存在を知った関口氏は、情報収集の場を移した。そこで話題の的だったのが「NFT」だった。

関口氏は、以前からNFTの存在に関心を持っていた。GENERATIONSのメンバーと会話する中で、The Weekndというアメリカの歌手が自身の楽曲をNFTにしたことが話題に上がっていたこともあり、自身の今後のアーティスト活動でNFTと触れる未来がぼんやりと見えていたからだ。

もともとテクノロジーなどの新し物好きだった関口氏は、Voicyを通してNFTの勉強を本格的に始め、どんどんとのめり込んでいった。NFTの可能性を確信した関口氏はついに口を開いた。2021年9月、自身のTwitterのアカウントで以下のように投稿したのだった。

「NFT買ってみたー!Crypto Girlという日本のアーティストさんです!買ってみて分かったけど、この世界はメチャクチャ面白い!」

関口氏が最初に手にしたNFTは、イラストレーターのCHAI CHAI氏が手掛ける「CryptoGirl」という作品だった。そのポップな作風に惹かれたという。この購入の背景には、1人のキーマンがいた。ブロガーやYouTuberとして知られるイケダハヤト(以下、イケハヤ)氏だ。

イケハヤ氏は、いち早くNFTの可能性に気付き、2021年9月から手掛ける「CryproNinja(クリプト忍者)」を、現在までに日本を代表するNFTコレクションに成長させている。Voicyでイケハヤ氏の存在を知った関口氏は、同氏のウォレット(購入履歴)を見る中で、CryptoGirlが目に留まったのだった。

関口氏は、Twitterでの公表を通して、イケハヤ氏との交流が始まり、CryptoNinjaの購入に至った。CryptoNinjaは、オンラインで「NinjaDAO」というコミュニティを運営しており、国内外からNFTのクリエイターや投資家が集まっていた。関口氏は、コミュニティ内の日々のやり取りを見る中で、気に入った作品を次々と購入していった。

そんなある日、NinjaDAOにどよめきが走った。


全貯金を投じてNFTを購入

コミュニティで「BAYCを一体売りたいのですが、誰か買う人いませんか」という投稿がされたのだ。Atoza氏というアジアのNFT投資家が発した一言だった。NFTに関わる者であれば喉から手が出るほど欲しいBAYCだが、さすがの高額さが故になかなか手を上げる人はいなかった。

そこで、イケハヤ氏が動いた。関口氏に直接オファーしたのだ。関口氏は、以前からBAYCを探しており、知り合いからの紹介というご縁もあって、またとないチャンスが訪れたが、悩みに悩んだ。その金額は、関口氏がS&P500で運用して貯めた総資産とほぼ同じ価格になるからだ。しかし、関口氏は決断した。

BAYCを買う決断をしたのだ。購入金額は48ETH(当時約2300万円)。関口氏のこれまでの人生の中で一番高い買い物だったという。関口氏は「震えました」と言う。

「S&P500で運用した貯金をそのままBAYCに全つっこみしたんです。めちゃくちゃ怖くて、さすがに手が震えました。日本でBAYCを持っている著名な人はいないし、日本のNFT界にヒーローが求められているような気がしたんです。僕が買えば、日本のヒーローになれかもしれないし、日本のクリエイターさんを応援できるかもしれないと思って、買う決断をしました」

日本のNFT界に激震が走った。関口氏は、日本のNFTクリエイターに喜びをもたらし、願い通り、日本のNFT界のヒーローになったのだった。2300万円という金額は、ファッション感覚の生半可な気持ちでは手を出せない。関口氏のNFTに対する本物の情熱と期待が伺える。

関口氏のBAYC購入は、NFT界を超えて話題を呼び、業界の知人や事務所の先輩などもNFTに興味を持つきっかけになったという。LDH内でも、BAYCをきっかけに関口氏のもとにチャンスが舞い降りた。新たにNFTのプロジェクトが発足されたのだ。「THE HEART BOYS」だ。

THE HEART BOYSは、GENERATIONSの関口氏、白濱亜嵐氏、佐野玲於氏の3人と、NFTコレクション「The Heart Project」のコラボレーションプロジェクトだ。The Heart Projectは、LAのクリエイター2人が手掛け、ハートのキャラクターとして知られる世界的なNFTコレクションだ、

もともと関口氏ら3人が、The Heart Projectのクリエイターと親交があったこともあり、LDHのVERBAL氏がきっかけを作った。VERBAL氏が、彼らクリエイターと「何か一緒に面白いことやりたいよね」と話す中で、BAYCを購入した関口氏を筆頭に、クリエイティブなことが好きな白濱氏、佐野氏の3人に目をつけ、声をかけたのだった。

VERBAL氏は、伝説的な音楽グループの「m-flo」と「Teriyaki Boyz」のメンバー、世界的なファッションブランドの「AMBUSH」のCEOでありながら、LDHでも執行役員として国際事業部プロデューサーを務めており、NFTのプロジェクトを管轄しているのだ。

THE HEART BOYSは、1500個のNFTで構成され、それぞれ0.033ETHで、2022年11月に販売されたが、販売23分で完売した。NFTのホルダーは、限定グッズの購入権や限定ライブの参加権をはじめ、調達した資金で制作された音楽の視聴権などの特典が入手可能になるという。

関口氏は、BAYCの購入から1年ほど経つが、THE HEART BOYSをはじめ、今後は海外でも、BAYCのホルダーとしてのステータスやネットワークを活用した動きに期待を膨らませている。

「もともと僕は、体験とか人の繋がりを作ることに投資してきました。僕はファッションが好きなんですけど、今考えると、洋服やアクセサリーって人の繋がりを作ることができるんです。NFTもまさしくそうでした。NFTは購入履歴が見えるので、もっと言うと、その人の履歴書であり、価値観であり、哲学なんです」


「自分の作品を持ちたい」

現在、NFTのコレクションに続き、スタートアップへの投資に関心を見出すなど、コロナ禍の中でビジネスやテクノロジーの知見を吸収したことで、めきめきと進化している。一方の本業でも、アーティスト活動を「起業」として捉えており、プロデューサーのような視点で、GENERATIONSのグロースに集中している。

関口氏は、パフォーマーという職業柄、アスリートと同様に体力の限界があるため、自身のセカンドキャリアに対して常々考えを巡らせている。関口氏は、最終的な目標として、絵本作家として映画制作まで成し遂げた西野亮廣氏も例に出し、「物語を作れる人になり、自分の作品を持ちたいです」と言う。

「『サピエンス全史』という本を読んだ上で、今後AIの発展に伴ってあらゆる仕事が代替される中で、絶対になくならないものが『エンタテインメント』だと思っています。つまり『物語』です。僕は、これまでダンスと音楽をやってきて、今は絵の勉強をしているのですが、最終的には総合エンタテインメントの『映画』を作って自分の物語、作品を持ちたいと思っています」

関口氏には、これまでの活動やこれからの目標から、一貫して「クリエイターへの尊敬と応援」という強い想いが根底に溢れていることがわかる。その想いを関口氏は以下のように語る。

「僕が年齢を重ねておじさんになった時に、若い人をどんどん応援できるような人になりたいんです。才能を潰す側にいたくない。若い感性だったり、新しい風は、世の中に必要だと思うので。そういう意味でも、新しくて、風通しが良くて、才能が集まるNFTに僕は今います」


出演:関口メンディー
https://protocol.ooo/u/mandysekiguchi