Published 03 Oct 2024

【森島健文】日本に新たなエコシステムを築く: 次の時代のアスリートと市場を開拓する起業家

【森島健文】日本に新たなエコシステムを築く: 次の時代のアスリートと市場を開拓する起業家

esportsと聞くとどんなイメージを思い浮かべるだろうか。実は日本のesports業界は急成長中であり、非常にホットな「エコシステム」なのだ。日本におけるesports界を黎明期より牽引してきた「老舗」スタートアップである株式会社TechnoBlood eSportsの代表取締役 森島氏に、その市場の可能性と事業の展望を語っていただいた。インタビュアーは、エンジェル投資家の福田和博氏が務める。

esports開拓者が語る、教育とまちづくりへの可能性

福田: まず初めに、御社の事業の概要についてポイントを絞って教えて下さい。


森島: 大きく分けると、ゲームに関連する事業と、ゲームの開発支援事業の2つに分かれます。前者はeスポーツ事業、付随する教育事業、ゲーム配信者のライブマーケティング事業、そして施設へのコンテンツ事業をしております。後者はゲームメーカーに対するセキュリティ販売など開発に関わる様々なソリューションを展開しております。


福田:  ありがとうございます。御社は日本では黎明期からesports市場を開拓されてきたと思いますが、目をつけた経緯や、今までの市場の変化をどのようにお考えでしょうか?


森島: テクノブラット社から分社化する以前の2004年ごろから、私たちはesports事業に取り組んでおります。テクノブラット社の代表が韓国の市場に明るく、韓国が日本に先んじてesportsが進化していたことがきっかけとなり、esports大会を日本でも展開したり、ゲームコンテンツを配信する中でメーカーからもesports事業参入の要望がきたりという流れがある中で、かなり以前からesportsに取り組んできました。現在は特に教育とライブマーケティングに力を入れています。



福田: ベースとなるテクノブラット社からesports関連事業を分社化する形でTechnoBlood eSportsが独立したのですね。その中でも、事業を行う中で教育事業に可能性を感じているのはどういった観点からなのでしょうか。


森島: esports施設においてゲームと教育をセットで考えるというのは、その施設の意義を考える上で大事になるからです。 現在事業の一環として施設の立ち上げや運営を行っていますが、この初めの事例となるJR東日本さんからの依頼において教育事業をやりたいといった項目があったため、気づきを得ました。


福田: なるほど。esportsを使って子供達の教育となると、例えばどんな事例があるのでしょうか。


森島: マインクラフトを使ったプログラミング習得といったカリキュラムもありますし、よりプロ向けの講習もあります。最近は京王電鉄さんとフリースクールとesportsを掛け合わせたカリキュラムも開発しています。学校にいけない子どもたちがesportsを通して学んだり、部活動のように過ごせる場を提供しています。施設があり、そこでesportsをできる環境があるため、それを使って何ができるだろうかということを考えています。


福田: 学校に馴染めなくとも、こうした場で好きなことや強みを見つけられる可能性は広がっていますよね。そして鉄道会社にとっても、駅の有効活用やまちの活性化ができるというwinwinな関係ですね。


森島: そうですね。ゲームは子どもが好きなものとして、様々な入り口を広げたりハードルを下げたりするツールになると思います。先にあげたような鉄道会社さんたちも、そうした沿線活性化へのニーズがありうまくマッチさせることができていると思います。

ゲーム配信エコシステムを日本にも築きたい

福田: 続いて、もう一つ力を入れているとお話しされていたライブマーケティングについても伺いたいです。最近ではプロのゲーム配信者も多く活躍していると思いますが、具体的にはどういったコンテンツを提供されているのでしょうか。 


森島: 一つはポーランドのinStreamlyという配信などを行っている会社と提携しています。彼らが欧米で展開している、ユーチューブなどでの配信者にスポンサーをつけ収入をアップさせる仕組みを提供いただき、昨年7月からStreamPotというサービス名で日本で展開しています。我々がスポンサーを集め配信者に還元することで、我々にとってはメディア、配信者にとってはさらなるインセンティブになるという仕組みです。


福田: なるほど。確かに、ゲーム配信は試聴時間が長くファンの方のロイヤリティも高いので、広告事業の可能性が高まっているのですね。


森島: はい。現状ではスポンサーがつく配信者というのは最上位層のごく一部です。配信を好きでやっていてもなかなか稼げないという配信者さんたちの課題にたいして、一つのプラットフォームを作ることで収益化のチャンスを提供しています。


福田: esportsが世界的に注目されている今、本サービスや、冒頭でお話しされていた韓国との繋がりといったグローバルな視座は、御社の強みでもありますね。


森島: その通りです。そうした繋がりを生かしながら、我々にしかできない価値を提供していきたいです。


「日本人アスリート」の新たな可能性を拓く

福田: オリンピックでのメダルラッシュ、大谷翔平しかり、スポーツ界では日本人のスーパースターや若手の活躍が世界でも華々しいと思います。esportsにおいても、日本人の若い選手たちの活躍は期待できそうでしょうか?またはそういった人材の育成に関する夢やお考えがあればお聞かせください。


森島: 日本のesportsは世界に遅れをとっていたのですが、ここ2年ほどでそこへ追いつけ追い越せと急成長しています。世界上位ランクに日本チームが入ることも珍しくなくなってきました。日本人のesportsアスリートも多く排出され始めています。韓国はすでに市場が成熟してきたのに対して、日本はもともとゲーム好きな国であり、そして今急成長/拡大しているという中で、非常にポテンシャルを感じています。我々はその裾野を広げることを通して、市場の底上げや活性化を行っていきたいです。例えばテクノブラッド社から引き継いだ店舗運営ノウハウは、ただイベントを開催するのでない様々な事業可能性を持っており、我々の強みの一つだと思います。


福田: そうですね。日本でもようやく、esportsがスポーツの一つとして認知が広がり、盛り上がってきたと思います。今後人口が減っていく中で、新しい日本人アスリートを産んでいくかもしれませんし、御社の今後が楽しみです。それでは最後に投資家に向けてのメッセージや、今後の事業展開をしていきたいという構想をお願いします。


森島: 我々はesportsをより様々な方に楽しんでいただくということをミッションに据えていますので、地域活性化や地方創生とは親和性が高いと考えています。また、これからesportsに関わりたい、Z世代と繋がりたい、といった企業さんに対してのマーケティングや若者へのリーチのお手伝いもできると思います。先の京王電鉄さんの例のように、そういったことをやりたいと考えている企業さんとの資本提携や事業提携をしていきたいです。


福田: 沿線開発をしたい鉄道会社や、自治体、地域企業とのつながりは期待できそうですね。本日はどうもありがとうございました。



インタビューを終えて

esprotsやゲーム業界についてほとんど知見がない中でしたが、本インタビューだけでもその可能性について感じることができました。esportsというコンテンツや場を起点に、子どもの感性を開花させる教育事業や、老若男女交わる街の活性化、新たな日本人アスリートなど様々なエコシステムが形成されていく未来にワクワクします。今後の日本発esportsとそれを牽引する企業から目が話せませんね。

【担当ライター】Ritsuha Tanaka


株式会社TechnoBlood eSports 会社概要

株式会社TechnoBlood eSportsは、eスポーツに関するイベントの企画・運営やeスポーツ施設の開業支援事業を運営する企業。 同社は、eスポーツの大会やインターネットカフェの店舗イベントなどの企画・運営、eスポーツ施設の店内設計・機材選定・運営支援、大会のライブ配信・番組制作、ゲーム配信者の収益化を支援するプラットフォーム『StreamPot』を開発する。 そのほか同社は、インターネットカフェ向けにオンラインゲームの流通事業、オンラインゲームのセキュリティシステムを運営する。


【会社情報】

会社名:株式会社TechnoBlood eSports (TechnoBlood eSports Inc.)

URL: TechnoBlood eSports

設立:2021年4月30日

資本金 45,000,000円

代表取締役社長 森島 健文

取締役会長 柳 日栄

事業内容:eスポーツ事業・PCカフェ向けコンテンツ事業・オンラインゲーム向けセキュリティ事業


所在地:〒151-0073 東京都渋谷区笹塚1-55-7 マルエスファーストビル6階

TEL:03-5990-6644 FAX:03-5990-6645

関連会社 株式会社テクノブラッド

株式会社テクノブラッドコリア

World eSports League Inc. (韓国)


森島 健文氏 プロフィール】


森島 健文 Takefumi Morishima

1976年 長野県生まれ。大学卒業後、イベント制作プロダクション、ゲームメーカー、インターネット系広告代理店などでコンテンツビジネスやメディアビジネスに従事し、新規プロジェクトや新規事業立上げを数多く行う。その後、起業を経て2014年にテクノブラッド入社。以降、コンテンツ事業に関わるサービス企画、スマートフォンゲームセキュリティソリューションの日本展開立上げ、eスポーツ事業立上げなどを行い2016年よりコンテンツ事業を統括。


2019年 4月 テクノブラッド取締役に就任

2021年 4月 株式会社TechnoBlood eSports設立 代表取締役に就任

【参考】既存記事や各種SNSへのリンク集

TechnoBlood eSports


起業支援家/エンジェル投資家 福田和博氏 プロフィール

東北大学工学部機械知能工学科→大学院情報科学研究科を修了。

㈱東芝

    研究開発センターでICT分野の研究開発に従事後、ソニー㈱でオーディオ商品の企画・戦略・事業開発を担当。

2015年に横浜で起業し、複数の新規事業の立上げとM&A

    Exitを経験後、起業支援家/エンジェル投資家としてハンズオン型で支援中。

(一社)日本ワーケーション協会 公認ワーケーションコンシェルジュ 

iU(情報経営イノベーション専門職大学)客員教授

NEXs Tokyo(東京都スタートアップ支援施設)投資家メンター


【PROTOCOLプロフィールページ】

https://protocol.ooo/ja/users/55c8607d-f7a1-46ea-94e5-593785e8db41