Published 08 Dec 2025

円安リスクをヘッジする「実物資産」の持ち方。金(ゴールド)ETFと現物購入、ペーパーアセットとの賢い使い分け

円安リスクをヘッジする「実物資産」の持ち方。金(ゴールド)ETFと現物購入、ペーパーアセットとの賢い使い分け

株式や債券といった「ペーパーアセット」だけではカバーしきれないリスクに対し、どのように「実物資産(リアルアセット)」を組み合わせて資産を守り、増やすべきか。その最適解を徹底解説します。

はじめに:2025年12月、資産防衛の「正解」が変わった

2025年12月現在、私たちの資産を取り巻く環境は、数年前とは劇的に変化しました。


かつて「日本円で貯金していれば安心」と言われた時代は完全に過去のものとなり、長引く円安基調と国内インフレは、私たちの資産を目減りさせ続けています。


特に、金融資産で1000万円以上を保有する準富裕層・アッパーマス層にとって、この「通貨の価値下落」は死活問題です。


仮に円の価値が対ドルで20%下がれば、あなたの1000万円の実質価値は、国際的な購買力平価で見れば800万円に目減りしているのと同義だからです。


本記事では、株式や債券といった「ペーパーアセット」だけではカバーしきれないリスクに対し、どのように「実物資産(リアルアセット)」を組み合わせて資産を守り、増やすべきか。その最適解を徹底解説します。


特に、実物資産の王様である「金(ゴールド)」について、ETFと現物の賢い使い分けから、税制面での有利不利まで、網羅的な情報をお届けします。


第1章:なぜ今、資産1000万円以上の層に「実物資産」が必要なのか

1-1:ペーパーアセットの限界と信用リスク

株式、債券、預金。これらはすべて「ペーパーアセット(金融資産)」と呼ばれます。


これらは「発行体の信用」の上に成り立っています。


  • 株式: 企業の業績と信用

  • 国債: 国家の信用

  • 預金: 銀行の信用

2025年の現在、地政学リスクの高まりや、各国の債務膨張により、この「信用」そのものが揺らぐリスク(カウンターパーティリスク)が意識され始めています。


一方、「実物資産」は、それ自体に価値があり、誰の負債でもありません

1-2:インフレと円安のダブルパンチ

資産が1000万円を超えると、生活防衛資金(半年〜1年分の生活費)を除いた「余裕資金」が生まれます。


この余裕資金を円のまま放置することは、インフレ率が預金金利を上回る現状では「確実な損」を意味します。


「卵を一つのカゴに盛るな」という格言通り、通貨分散(外貨)だけでなく、「資産クラスの分散(ペーパーか実物か)」が不可欠なフェーズに入っているのです。


第2章:実物資産の王道「金(ゴールド)」の徹底比較

実物資産の中で最も流動性が高く、歴史的信頼があるのが「金(ゴールド)」です。


しかし、保有方法には大きく分けて「現物購入」「ETF(上場投資信託)/投資信託」の2種類があり、それぞれメリット・デメリットが異なります。


資産1000万円以上の投資家が知っておくべき、決定的な違いを解説します。

2-1:金(ゴールド)ETF・投資信託:機動性と低コスト

証券口座を通じて、株式と同じように売買できる形式です。


  • メリット

    • 手数料が安い: 買付手数料や信託報酬が低廉。

    • 保管コストゼロ: 物理的な管理が不要。

    • 少額から投資可能: 100円単位や1株単位で購入可能。

    • NISA対応: 成長投資枠を活用すれば、売却益が非課税。


  • デメリット

    • 手元にない: 有事の際に物理的に持ち出せない。

    • 交換リスク: 厳密には「金価格に連動する証券」であり、現物との交換(兌換)が保証されていない銘柄が大半。

2-2:金(ゴールド)現物購入:究極の安全資産

地金商(田中貴金属や三菱マテリアルなど)から、物理的なバーやコインを購入する方法です。


  • メリット

    • 所有権の完全性: 発行体の倒産リスクがゼロ。

    • 有事の強さ: デジタルシステムがダウンしても価値を維持。

    • 税制上の優遇(長期保有): 5年超の保有で譲渡所得の課税対象が半額になる(後述)。


  • デメリット

    • スプレッド(手数料)が高い: 購入時・売却時の価格差が大きい。

    • 保管リスク: 盗難・紛失の対策が必要(貸金庫コストなど)。

    • 流動性がやや低い: 店頭に行く、または郵送の手間がかかる。

2-3:【比較表】ETF vs 現物購入


項目

金ETF・投資信託

金現物(地金・コイン)

主な目的

・短期〜中期の値上がり益

・リバランス

・超長期の資産保全

・財産分与

・有事への備え

購入コスト

低い(0.1%〜)

高い(スプレッド数%〜)

保管コスト

信託報酬

(年率0.1〜0.4%程度)

・自己管理なら0円

・貸金庫なら年間数万円

流動性(換金性)

非常に高い(即時売買)

普通(営業時間内に店舗等へ)

税金区分

申告分離課税(20.315%)

譲渡所得(総合課税) 

※特別控除あり

NISA利用

可能

不可

1000万円層への推奨

ポートフォリオの調整弁として

資産の「底荷(バラスト)」として



第3章:資産1000万円以上の「賢い使い分け」ポートフォリオ戦略

資産規模が大きくなればなるほど、攻めと守りのバランスが重要になります。


2025年のトレンドを踏まえた、具体的なポートフォリオ配分を提案します。

3-1:コア・サテライト戦略への組み込み

基本は、世界の経済成長を取り込む「全世界株式(オルカン)」「米国株式(S&P500)」コア(核)としつつ、守りの資産として金を組み入れます。


推奨ポートフォリオ例(資産1000万円~3000万円想定)

  • 株式(ペーパー):60%

    • インフレに強い企業の株、全世界株式ETFなど。

  • 債券・現金(ペーパー):25%

    • 流動性確保のための現金、米国債など。

  • 実物資産(リアル):15%

    • ここが重要です。 この15%の内訳をどうするかで、資産の堅牢性が変わります。

3-2:ETFと現物の「ハイブリッド保有」

結論として、1000万円以上の資産家は「ETFと現物の併用」が最強のソリューションです。

  1. 調整用としてのETF(資産の10%)

    • リバランス用です。株が暴落して金が上がった際、ETFならすぐに売却して安くなった株を買い増すことができます。NISA口座を活用し、非課税メリットを享受します。

  2. 金庫代わりの現物(資産の5%~)

    • これは「売らない資産」です。子や孫に残す、あるいは国家破綻レベルの危機が起きた際の保険として、500gや1kgのバー、あるいはメイプルリーフ金貨などで保有します。自宅の耐火金庫や銀行の貸金庫で管理します。

3-3:その他の実物資産という選択肢

金以外にも、富裕層が注目する実物資産があります。


  • 不動産: インフレヘッジの代表格ですが、流動性が低く、維持費がかかります。1000万円台の資産規模では、現物不動産への集中投資はリスクが高すぎるため、REIT(不動産投資信託)で代用するのが現実的です。

  • 高級腕時計(ロレックス等)・ワイン・アンティークコイン: 趣味と実益を兼ねた資産ですが、真贋鑑定の知識保管環境(ワインセラー等)が必要です。「好きであること」が大前提であり、純粋な投資としては上級者向けです。


第4章:見落としがちな「税金」の落とし穴

資産運用において、税金知識はリターンを左右する重要な要素です。


特に金投資は、「ETFか現物か」で税金の計算方法が全く異なります

4-1:ETF・投資信託の場合

  • 区分: 株式等に係る譲渡所得等

  • 税率: 一律20.315%(申告分離課税)

  • 特徴: 株式や投資信託の損益と「損益通算」が可能です。株で損をして金ETFで利益が出た場合、相殺して税金を減らすことができます。

4-2:金現物の場合

  • 区分: 譲渡所得(総合課税)

  • 計算式

    • 短期譲渡(保有5年以内)売却益 - 特別控除50万円 = 課税対象額

    • 長期譲渡(保有5年超)(売却益 - 特別控除50万円)× 1/2 = 課税対象

  • 特徴

    • 年間50万円の特別控除があります。つまり、利益が50万円までなら税金はかかりません。

    • 5年以上持てば税金が半分になります。

    • 給与所得などと合算されて税率が決まる(累進課税)ため、高年収の年に売却すると税率が高くなるリスクがあります。

4-3:1000万円プレイヤーの最適解

高所得者(年収1000万円超など)の場合、総合課税の税率が高くなるため、現物の売却タイミングには注意が必要です。


逆に、定年退職後などで所得が下がったタイミングで、長期保有していた金現物を少しずつ売却(年間50万円の利益以下に抑える等)すれば、実質非課税で現金化できる可能性があります。


これが現物保有の隠れたメリットです。


第5章:2025年版 アクションプラン

ここまで読まれたあなたが、明日から実行すべき具体的なステップをまとめました。


  1. 現状のポートフォリオを可視化する

    • 現在の資産(預金、株、保険など)のうち、「円資産」が何%を占めているか確認してください。80%を超えているなら、黄色信号です。


  1. NISA枠の確認と金ETFの購入

    • まだNISAの「成長投資枠」が余っているなら、まずはコストの安い金ETF(例:GLDMや国内の金ETF)を、資産全体の5%~10%を目安に購入します。


※一括購入は避け、数ヶ月に分けて購入する「時間分散」を推奨します。金価格は高値圏にあるためです。


  1. 「純金積立」または「コイン購入」の検討

    • 現物が欲しいが、まとまった資金を一度に出すのが怖い場合は、地金商の「純金積立」を利用し、毎月3万円~5万円程度を積み立てます。ある程度貯まったら、現物(バー)として引き出すことが可能です。

    • 記念として1オンス(約31.1g)の金貨を1枚買ってみるのも、実物資産の手触りを知る良い第一歩です。


  1. 出口戦略(売却時)のシミュレーション

    • 「いつ使うお金か」を決めます。老後資金なら長期保有優遇のある現物、数年以内の教育資金や住宅資金なら流動性の高いETFと色分けしてください。


おわりに:不確実な未来を生き抜く「重石」を持て

2025年の今、円安は単なる一時的な現象ではなく、日本の構造的な課題として私たちの前に立ちはだかっています。


1000万円以上の資産を持つあなたが恐れるべきは、目先の株価の上下ではなく、「気づかないうちに資産の購買力が失われること」です。


デジタル全盛の時代だからこそ、物理的に存在する「実物資産」の価値が際立ちます。


流動性に優れた「ペーパーアセット(ETF)」で機動力を確保しつつ、資産のアンカー(錨)として「現物」を持つ。


このハイブリッドな戦略こそが、これからの不安定な時代を生き抜くための、賢明な大人の作法と言えるでしょう。


まずは、ご自身の資産の10%を「金」に変えることから始めてみませんか? 


その「重み」が、あなたの資産と精神安定をもたらしてくれるはずです。

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