Published 28 Oct 2024

美味しく楽しい食で世界を繋ぐ、新時代の「まちの魚屋さん」に挑む起業家

美味しく楽しい食で世界を繋ぐ、新時代の「まちの魚屋さん」に挑む起業家

皆さんは最近「まちの魚屋さん」へいったことがあるだろうか?新鮮な魚を仕入れ、捌いてまちの人々に届ける魚屋さんは年々その姿を消してしまっている。しかし、ここに技術を駆使して、まちの魚屋さんをアップデートし続ける会社がある。今回はその企業、株式会社epocが新たにDtoC事業を展開するということで、代表取締役佐藤信之氏に、事業の展望を語っていただいた。インタビュアーは、エンジェル投資家の福田和博氏が務める。


グローバルにまちの魚屋さんをアップデートしてきたからこそできる、DtoCサービス

福田: まずは御社の事業の概要を教えてください。

佐藤: 日本の水産品を海外に輸出して、現地の飲食店に販売するという事業を行っています。横浜中央卸売市場での仲卸免許をもっており、国内の飲食店に対しても同様の事業を展開しています。タイには現地法人もあり、日本での仕入れから輸出入手続き、現地飲食店へのデリバリーまでを一気通貫したサプライチェーンを築いています。そうした知見を生かした輸出に関するコンサルティングなども行っております。


toC


福田: これまではtoBの事業がメインでしたが、この度toCの事業を展開しようとなった背景を教えてください。

佐藤: 関連会社として、タイでは飲食店も経営していますが、toB向けには市場や産地から箱単位で入れて輸出する際に、どうしても余りが出てしまっていました。横浜では、それをオンラインで地元の方に販売するというサービスを試験的に展開してみたところスーパーへ買い物に行くのが大変な方やより美味しい魚、さまざまな種類の魚を食べたいという方に好評でした。こうしたニーズは他にもあると考え、新しいサービスとしてtoC向けのサブスクリプションという形で魚をお届けすることを企画しました。


福田: 確かに、新鮮な魚を市場から仕入れた時に、3枚などにおろして消費者へ届けるというのが従来の「まちの魚屋さん」ですが、そうしたお店が減ってきてスーパーの切り身売りしか無くなった際に、不便さを感じる方のニーズに応えたわけですね。


佐藤: はい。近頃はミールキットのようなものが流行っていますが、そうした中でも新鮮さを求める声や、逆に自分で手間をかけて料理を作りたいという声があります。また、小さいお子さんに新鮮な美味しい魚を食べてほしいという食育的観点や、日本の資源を食すという自給自足的観点でもニーズがあると考えています。


日本の食文化そのものをサステナブルに提供することで、食べる・作る新たな魅力を味わってほしい

福田:これまではそうしたtoB, toCの事業を1つの会社でおこなってきたものを、この度DtoC側の事業を分社化して成長させるという判断をした背景を教えてください。資金調達以外にも理由があるのでしょうか。


佐藤: toCにおける私たちのミッションは「まちの魚屋さんをアップデートする」ことです。魚屋さんといえど、仲卸的なtoBと、消費者と会話するtoCでは、それぞれ見ているものや想定するお客様が違いますし、サービス展開に必要な技術や人材も異なってきます。それぞれに特化してよりよいサービス開発をしていくために、分社化するのが最適だと考えました。


福田: よく理解できました。DtoC事業を考えた時に、すでに鮮魚を仕入れて一時加工し、toCで販売するといった同様のサービスはいくつか出てきているかと思いますが、どういった差別化を図っていくのでしょうか。


佐藤: 「時短」を第一の提供価値にした際には、すでに多くのサービスがありますが、私たちは「美味しく魚を食べる」ことを第一の提供価値としています。例えば、生でも食べられるアジをアジフライにするととっても美味しいのです。こうした加工品では届かない魚のおいしさや、調理する楽しみを知っていただきたいです。もともと和食にとって魚は外せないものですし、食文化を啓蒙しながら売っていくというのが我々の存在意義であると考えております。


福田: 今後の展開予定として、横浜を中心にしていくのか、どのようにお考えでしょうか。


佐藤: 全国各地で展開したいと思います。横浜から全国へ新鮮な状態のまま配送するには限界がありますし、地方各地の魚が取れる場所にそれぞれのニーズがあると考えております。


福田: ありがとうございます。ではここからそうした構想へ向け資金調達を行うと思いますが、具体的にどんな投資家さんに伴走してほしいなど、お考えありますでしょうか。


佐藤: まずは分社化してシードラウンドからになりますので、事業モデルを考えるところから伴走していただくことになります。ですから、やはり魚が好きな方が嬉しいです。伴走ついて一緒に考えていけたら嬉しいです。


福田: ぜひこの記事を通してそうした魚好きの投資家さんに情報が届けられると良いです。最後になりますが、これから新しい事業も展開していくにあたり、将来どういった世界を描きたいか教えてください。


佐藤: やはり日本人が魚を食べなくなってきている中で、魚を食べたいという人が増え、誰もが美味しい魚を食べられるような世界をつくりたいです。自分たちの国の身の回りで日本人食材を食すことで、日本が抱える食品自給率の問題や、フードロスにもアプローチできると考えています。また各産地の人との連携も大切にしていきたいです。消費者にとって産地の方の顔がみえるというのは大事なことですし、その間にある一次加工などの工程をわれわれが正しく担うことで、生産と消費の良い循環を描きたいです。そして、私たちのミッションは「食で世界を繋ぐ」ことです。タイでは最近富裕層を中心に自ら料理をしてホームパーティをするような流れがありますが、このように食のあり方はこれからも変化していくと思います。こういった変化を活かしながら、日本の魚を世界に届けていくことも続けたいです。


福田:最近は訪日外国人も増えていますし、「日本で食べた美味しい魚を家でも食べたい」といったニーズも出てくるかもしれませんね。今回の分社化を通してより一層そうした未来へ前進されることを期待しています。

インタビューを終えて

ひとりの魚好きとして、佐藤氏の感じる課題感や描く未来に共感しながらインタビューを拝見しました。海外から日本に帰ってくるたび体に沁みる日本食や出汁の味、新鮮で美味しい魚を食べられることには喜びを感じますし、これらは私たち日本人のDNAに刻まれたものかもしれません。街の魚屋さんをアップデートした形で、こうした食の喜び、楽しみが、地方から海外までさらに多様に行き渡ることに期待しています。

【担当ライター】Ritsuha Tanaka



【会社概要】

会社名: 株式会社epoc(エポック 英語名:epoc inc.)※「魚スク」事業向けに新会社を設立予定

代表取締役 : 佐藤信之

東京オフィス: 〒107-0062 東京都港区南青山3-8-40 青山センタービル2F THE HUB南青山

設立年月: 2012年6月 ※新会社の設立時期は2025年1月を予定

事業内容: 食品の海外流通プラットフォームの構築・展開

グループ会社: 株式会社epocトレーディング

関連会社: epoc (Thailand) Co., Ltd./ Harvest Japan Co., Ltd.

従業員数: 10人〜100人未満

資本金: 3千万円〜1億円未満


【事業概要】

「食で世界をつなぐ」をミッションとし、日本から海外への食の流通プラットフォーム企業として、日本の生産者、自治体、飲食企業等を支援している。

①マーケットプレイス事業

主にアジア地域を中心に、日本食マーケットプレイス(飲食・物販複合型施設)の展開を進めている。日本から直輸入の食材を活かした、日本食店での料理としての提案だけでなく、食べた食材をその場で買える食材販売やインターネットによる販売(EC)、地域の食材・旅のプロモーションの企画・運営などを通じ、美味しく、安心・安全で、多様な食の楽しみ方を提案。

②トレーディング事業

海外事業では、生鮮品を中心に高品質な食材の輸出・販売、国内事業では、食品の企画・開発・輸入・販売、食品物流のコンサルティングなど、食材流通に関わるソリューションを提供。

③海外進出支援事業

飲食店の海外進出を出店計画から開業準備、開業後のサポートまで一貫して行うほか、海外でのテストマーケティング等の支援を行う。



【佐藤信之氏プロフィール】


代表取締役 佐藤信之

外資系コンサルティング会社、外資系会計事務所等を経て、上場外食企業の副社長として株式上場を指揮。その後、株式会社epocを設立。1972年生まれ


略歴

1996年 アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア入社)

1998年 GEインターナショナル入社

2000年 Deloitte & Touche LLP ニューヨーク事務所入社

2002年 株式会社プラン・ドゥ・シー入社

2005年 株式会社ゼットン取締役副社長

2012年 株式会社epoc代表取締役就任(現任) 

2014年 株式会社串カツ田中ホールディングス 社外監査役

2017年 株式会社epocトレーディング代表取締役(現任)

2019年 株式会社エー・ピーホールディングス 社外取締役監査等委員

2018年 株式会社ギフトホールディングス 社外取締役監査等委員



【参考】既存記事や各種SNSへのリンク集

https://epoc-inc.jp/


この人に聞きたい:第746回 (週刊水産タイムス:20/07/27号)

https://www.suisantimes.co.jp/cgi-bin/interview.php?n=746



起業支援家/エンジェル投資家 福田和博氏 プロフィール

東北大学工学部機械知能工学科→大学院情報科学研究科を修了。

㈱東芝

    研究開発センターでICT分野の研究開発に従事後、ソニー㈱でオーディオ商品の企画・戦略・事業開発を担当。

2015年に横浜で起業し、複数の新規事業の立上げとM&A

    Exitを経験後、起業支援家/エンジェル投資家としてハンズオン型で支援中。

(一社)日本ワーケーション協会 公認ワーケーションコンシェルジュ 

iU(情報経営イノベーション専門職大学)客員教授

NEXs Tokyo(東京都スタートアップ支援施設)投資家メンター


【PROTOCOLプロフィールページ】

https://protocol.ooo/ja/users/55c8607d-f7a1-46ea-94e5-593785e8db41