Published 27 Oct 2025

サラリーマンでもできるエンジェル投資の方法

サラリーマンでもできるエンジェル投資の方法

「エンジェル投資に興味はあるけれど、何から始めたらいいかわからない」というサラリーマンの方に向けて、その魅力から具体的な始め方、成功確率を高めるための注意点まで徹底的に解説します。

「スタートアップ」「イノベーション」といった言葉が日常的に聞かれるようになった現代。


新たな技術やサービスで世の中を変えようとする情熱的な起業家たちが、次々と誕生しています。


そんな彼らを初期段階で支え、未来のユニコーン企業(評価額10億ドル以上の未上場企業)の成長を後押しするのが「エンジェル投資家」です。


かつては、事業を成功させた起業家や一部の富裕層など、限られた人々のものと考えられていたエンジェル投資。


しかし今、その門戸は一般のサラリーマンにも開かれつつあります。


本記事では、「エンジェル投資に興味はあるけれど、何から始めたらいいかわからない」というサラリーマンの方に向けて、その魅力から具体的な始め方、成功確率を高めるための注意点まで徹底的に解説します。


この記事を最後まで読めば、あなたも未来の起業家を支援し、大きな経済的リターンと自己成長を実現する「サラリーマンエンジェル投資家」への第一歩を踏み出せるはずです。



第1章:エンジェル投資の基礎知識

まず、エンジェル投資がどのようなものなのか、基本的な知識から押さえていきましょう。

1-1. エンジェル投資とは?

エンジェル投資とは、創業して間もないスタートアップ企業に対して、個人投資家が資金を提供する投資手法のことです。


 資金を提供する見返りとして、その企業の株式(未公開株)を受け取ります。


「エンジェル」という言葉の通り、資金調達に苦労している起業家を天使のように救う存在であることから、こう呼ばれています。


投資した企業が将来的にIPO(新規株式公開)やM&A(合併・買収)によって大きく成長すれば、投資家は保有する株式の価値が何十倍、何百倍にもなり、莫大なキャピタルゲイン(売却益)を得られる可能性があります。

1-2. ベンチャーキャピタル(VC)との違い

スタートアップに投資する主体として、エンジェル投資家とよく比較されるのがベンチャーキャピタル(VC)です。両者にはいくつかの明確な違いがあります。


比較項目

エンジェル投資家

ベンチャーキャピタル(VC)

投資家

個人

投資事業有限責任組合(ファンド)

資金源

自己資金

機関投資家や個人投資家から集めた資金

投資ステージ

主にプレシード、シード期

主にシリーズA以降のアーリー〜レイターステージ

投資額

数百万円〜数千万円

数千万円〜数十億円

投資判断のスピード

比較的速い(個人の判断)

比較的遅い(投資委員会の承認が必要)

投資後の関与

個人の経験や人脈を活かしたハンズオン支援が多い

組織的な経営支援、専門家の派遣など


簡単に言えば、エンジェル投資家は「個人」として、より「初期」のスタートアップに「自己資金」で投資するのに対し、VCは「組織」として、より「成長」したスタートアップに「ファンドの資金」で投資するという違いがあります。

1-3. エンジェル投資の市場規模と将来性

近年、日本でもスタートアップへの投資額は増加傾向にあります。


エンジェル投資家が活用できる「エンジェル税制」の適用を受けた投資額も年々増加しており、2022年5月時点では前年比で約40%増の120億円を超えるなど、市場の関心が高まっていることが伺えます。 


政府もスタートアップ育成を国家戦略の柱の一つと位置付けており、今後ますますエンジェル投資が活発化していくことが予想されます。

1-4. エンジェル投資のリターンとリスク

エンジェル投資の最大の魅力は、何と言ってもそのハイリターンの可能性です。


投資先が成功すれば、投資額の数十倍から数百倍、時にはそれ以上のリターンを得ることも夢ではありません。


しかし、その裏側にはハイリスクが伴います。 


スタートアップ企業の多くは事業が軌道に乗る前に資金が尽きてしまったり、想定通りに成長できずに倒産してしまったりするケースがほとんどです。


その場合、投資した資金は全額戻ってこない可能性が高いことを理解しておく必要があります。 


まさに、「超ハイリスク・ハイリターン」の投資手法と言えるでしょう。



第2章:サラリーマンがエンジェル投資家になる4つのメリット

ハイリスクではあるものの、サラリーマンがエンジェル投資を行うことには、経済的なリターン以外にも計り知れないメリットが存在します。

メリット1:大きな経済的リターン

前述の通り、投資先企業が成功した場合の経済的リターンは非常に大きいものがあります。 


給与所得だけでは得ることが難しい、非連続的な資産形成のチャンスを掴める可能性があります。

メリット2:最先端のビジネスやテクノロジーに触れる機会

エンジェル投資を通じて、様々な業界の最先端の技術や新しいビジネスモデルに直接触れることができます。


これは、日常の業務では得られない刺激的な経験であり、自身の知識や視野を大きく広げることにつながります。

メリット3:社会貢献と未来への投資

革新的なアイデアで社会課題を解決しようとする起業家を支援することは、未来の社会をより良くすることに繋がる、意義のある社会貢献活動です。


 自分が支援した企業が成長し、世の中に新しい価値を提供していく過程を間近で見られることは、大きなやりがいとなるでしょう。


メリット4:質の高い人脈形成

エンジェル投資家になると、情熱あふれる起業家はもちろん、他の投資家や各業界の専門家など、通常では出会えないような人々とのネットワークを築くことができます。 


こうした人脈は、あなた自身のキャリアや人生にとって、かけがえのない財産となる可能性があります。



第3章:【完全ガイド】サラリーマンがエンジェル投資を始める5つのステップ


それでは、具体的にサラリーマンがエンジェル投資を始めるための手順を、5つのステップに分けて詳しく解説していきます。

ステップ1:情報収集と学習

まずは、エンジェル投資に関する正しい知識を身につけることから始めましょう。


  • 書籍やウェブサイトで学ぶ: エンジェル投資やスタートアップファイナンスに関する書籍は数多く出版されています。また、投資家向けのウェブメディアやブログなども参考にしましょう。

  • イベントやセミナーに参加する: スタートアップが登壇するピッチイベントや、投資家向けのセミナーに参加することで、最新の情報を得たり、直接起業家や他の投資家と交流したりする機会が得られます。

ステップ2:投資資金の準備

エンジェル投資は、必ず余剰資金で行うことが鉄則です。


 生活に影響が出ない範囲で、最悪の場合なくなっても良いと思える金額を準備しましょう。


  • 投資額の目安: サラリーマンが初めてエンジェル投資を行う場合、1社あたり10万円〜100万円程度から始めるのが現実的です。後述する株式投資型クラウドファンディングを利用すれば、数万円単位での投資も可能です。

  • ポートフォリオの考え方: 成功確率を高めるためには、1社に集中投資するのではなく、複数の企業に分散投資することが重要です。最初は5社〜10社程度に分散することを目標にしましょう。


ステップ3:投資案件の見つけ方

サラリーマンが投資先のスタートアップを見つけるには、主に以下の5つの方法があります。

1. 株式投資型クラウドファンディング(ECF)【初心者におすすめ】


インターネットを通じて、多くの個人投資家から少額ずつ資金を集める仕組みです。 


サラリーマンにとって、最も手軽で現実的なエンジェル投資の始め方と言えるでしょう。


  • メリット

    • 数万円〜10万円程度の少額から投資できる

    • プラットフォームが事前に企業の審査を行っている

    • オンラインで手軽に投資できる


  • デメリット

    • 投資できる企業がプラットフォームに掲載されている案件に限られる

    • 人気の案件はすぐに募集が埋まってしまうことがある

主要な株式投資型クラウドファンディングサービス


サービス名

特徴

FUNDINNO(ファンディーノ)

国内シェアNo.1。

累計成約額、成約件数ともにトップクラスの実績。

CAMPFIRE Angels

大手クラウドファンディングCAMPFIREが運営。

多様なジャンルの案件が魅力。

Unicorn(ユニコーン)

ZUUやIBJなど上場企業が株主。

厳選された質の高い案件が特徴。

イークラウド

大和証券グループが出資。

プロの投資家が選んだ案件に共同投資できる。


2. エンジェル投資家グループ(シンジケート)への参加


経験豊富なエンジェル投資家がリードし、複数の投資家が共同で投資を行うグループです。


リード投資家が案件の発掘デューデリジェンス(後述)を行うため、初心者でも比較的安心して参加できます。

3. マッチングプラットフォームの活用

起業家と投資家を繋ぐ専門のオンラインプラットフォームも存在します。


 自分のプロフィールや投資方針を登録し、興味のある起業家とコンタクトを取ることができます。

4. 知人・友人からの紹介


信頼できる知人や友人から、起業家を紹介してもらう方法です。


リファラル(紹介)は、質の高い案件に出会える可能性が高い方法の一つです。

5. ピッチイベントへの参加


スタートアップが集まり、投資家に向けて事業計画を発表する「ピッチイベント」に参加し、直接起業家の話を聞いて投資先を探す方法です。

ステップ4:投資先の選定とデューデリジェンス(DD)

興味のある投資先が見つかったら、その企業が本当に投資に値するのかを慎重に見極める「デューデリジェンス(DD)」というプロセスが必要になります。 


これは、企業の事業内容や財務状況などを詳細に調査し、リスクを洗い出す作業です。

サラリーマン投資家が確認すべき評価ポイント


評価項目

チェックする内容

① 経営チーム

・経営者の情熱、ビジョン、誠実さ

・チームメンバーの経歴や専門性、チームワーク

② 市場規模と成長性

・ターゲットとする市場は十分に大きいか、今後成長が見込めるか(TAM/SAM/SOM)

③ ビジネスモデル

・どのように収益を上げるのか、その仕組みは持続可能か

・事業を拡大(スケール)させやすいモデルか

④ プロダクト/サービス

・顧客の課題を本当に解決できるものか

・競合と比べて明確な優位性(独自性)はあるか

⑤ トラクション(実績)

・既にユーザー数や売上などの実績が出ているか

・事業計画上のKPI(重要業績評価指標)の進捗は順調か


デューデリジェンスの具体的な方法

  • 事業計画書の読み込み: 企業のビジョン、戦略、財務計画などを徹底的に分析します。

  • 経営者との面談: 直接会って話をし、人柄や事業への熱意、ビジョンへの共感度などを確かめます。

  • 財務諸表の確認: 貸借対照表や損益計算書などの財務データを確認し、健全性をチェックします。

  • プロダクト/サービスの体験: 実際に製品やサービスを使ってみて、その価値を自分自身で評価します。

  • 市場調査と競合分析: 関連する市場のレポートを読んだり、競合他社のサービスを調べたりします。

ステップ5:投資契約と実行

デューデリジェンスを経て投資を決断したら、最後に投資契約を締結します。


契約書には、投資額、取得する株式数、株価、株主としての権利など、重要な項目が記載されています。


専門的な内容が多いため、不明な点があれば弁護士などの専門家に相談することも検討しましょう。


契約締結後、指定された口座に投資資金を振り込み、手続きは完了です。


しかし、エンジェル投資は「投資して終わり」ではありません。


むしろ、ここからがスタートです。自身の知識や経験、人脈を活かして投資先を積極的に支援(ハンズオン支援)していくことが、投資の成功確率を高める鍵となります。



第4章:エンジェル投資の成功確率を高めるための注意点と税金

エンジェル投資を成功させるためには、リスクを正しく理解し、賢く制度を活用することが不可欠です。

4-1. 成功のための5つの注意点

  1. 必ず余剰資金で行う: 何度も強調しますが、生活を脅かすような資金での投資は絶対にやめましょう。

  2. 長期的な視点を持つ: エンジェル投資は、投資資金を回収するまでに5年〜10年以上かかることも珍しくありません。短期的なリターンを期待してはいけません。

  3. 分散投資を徹底する: 1社への集中投資は非常に危険です。複数の企業に投資することで、1社が失敗しても他の成功でカバーできる可能性が高まります。

  4. デューデリジェンスを怠らない: 「面白そう」という直感だけで投資するのは危険です。客観的なデータや事実に基づいて、冷静に投資判断を行いましょう。

  5. 投資後の支援を惜しまない: あなたの経験や人脈は、スタートアップにとって貴重なリソースです。積極的に関与することで、企業の成長を後押しできます。

4-2. 絶対に知っておくべき「エンジェル税制」

エンジェル税制とは、ベンチャー企業への投資を促進するために国が設けた、個人投資家向けの税制優遇制度です。 


この制度を活用することで、所得税の負担を大幅に軽減できる可能性があります。 


サラリーマン投資家にとっては非常に強力な武器となるため、必ず理解しておきましょう。


エンジェル税制には、主に以下の3つの優遇措置があります。


優遇措置の種類

内容

対象となる投資家

優遇措置A

投資年に所得控除(投資額 - 2,000円)をその年の総所得金額から控除できる。(控除対象となる投資額の上限あり)

収入が多く、その年の所得税を抑えたい方

優遇措置B

株式売却時に譲渡益を非課税投資した企業の株式を売却して得た利益を非課税にできる。(控除対象となる投資額の上限なし)

株式投資などで既に利益が出ており、将来のキャピタルゲインを最大化したい方

プレシード・シード特例

投資年に所得控除(拡充版)設立5年未満の企業への投資額全額を、その年の他の株式譲渡益から控除できる。(最大20億円)

高所得者で、より大きな節税効果を狙いたい方


エンジェル税制適用のための手続きの流れ

  1. 対象企業の確認: 投資先の企業がエンジェル税制の対象要件を満たしているか確認します。 企業が経済産業省の「事前確認制度」を利用していれば、ウェブサイトで確認できます。

  2. 企業による申請: 企業側が都道府県などに申請し、「確認書」の交付を受けます。

  3. 投資家が書類を受け取る: 企業から確認書を含む必要書類を受け取ります。

  4. 確定申告: 確定申告の際に、受け取った書類を税務署に提出します。


注意点

  • エンジェル税制の適用を受けるには、投資家自身と投資先企業の双方が一定の要件を満たす必要があります。

  • 優遇措置AとBは課税の繰り延べであり、非課税になるわけではありません。

  • 手続きが複雑なため、不明な点は税理士などの専門家に相談することをおすすめします。



第5章:サラリーマンエンジェル投資家の成功事例と失敗談

最後に、エンジェル投資のリアルな姿を知るために、具体的な事例を見ていきましょう。

成功事例:友人の応援から始まった兼業投資家の道

あるサラリーマン投資家は、起業する同僚から「会社の登記費用を貸してほしい」と頼まれたことがきっかけで、エンジェル投資を始めました。 


友人関係を壊したくないという思いから、融資ではなく「出資」という形で応援したところ、その会社は見事に成長。 


これをきっかけに他の起業家やVCとの繋がりが生まれ、今では80社以上に投資する著名な兼業エンジェル投資家として活躍しています。


 この事例は、身近な人の応援という動機が、大きな成功に繋がる可能性を示しています。

失敗談から学ぶ教訓:デューデリジェンス不足とコミュニケーションの重要性

一方で、失敗談も数多く存在します。


  • デューデリジェンス不足の罠: 起業家の熱意やアイデアの面白さだけに惹かれて投資したものの、ビジネスモデルが破綻していたり、市場が存在しなかったりして、事業が立ち行かなくなるケース。

  • コミュニケーション不足の悲劇: 投資後に経営陣とのコミュニケーションを怠った結果、事業の方向性が大きく変わり、気づいた時には手遅れになっていたケース。


これらの失敗談に共通する教訓は、「投資前の徹底した調査」「投資後の継続的な関与」の重要性です。


エンジェル投資は、お金を出すだけの関係ではなく、起業家と共に事業を育てるパートナーシップであるという意識を持つことが成功の鍵となります。



まとめ:さあ、未来を創る冒険へ一歩踏み出そう

エンジェル投資は、単なる資産形成の手段ではありません。


それは、未来のイノベーションを自分の手で支援し、情熱ある起業家と共に成長していく、エキサイティングな「冒険」です。


もちろん、その道は決して平坦ではなく、高いリスクも伴います。


しかし、本記事で解説したステップを着実に踏み、注意点を守りながら慎重に進めれば、サラリーマンであってもその冒険に参加し、大きなリターンを得ることは十分に可能です。


株式投資型クラウドファンディングで少額から始めるもよし、まずはセミナーに参加して情報収集に徹するもよし。大切なのは、最初の一歩を踏み出すことです。


この記事が、あなたの「エンジェル投資家」としての輝かしいキャリアの始まりとなることを願っています。