このSociety5.0時代において、私たちに必要な力は何か?そんな誰もが一度は考えたことがある疑問への「解」ともいえるサービスを提供しているのが、天才プログラマー関社長率いる株式会社ロジカ・エデュケーション (以下、ロジカ式)だ。
「子どもたちの輝ける未来を創造する」ため開発された、子どもから大人まで幅広い層をカバーするプログラミングをベースとしたロジカ式教材をはじめとし、社会人研修やAI開発など様々な事業を手掛けている。本インタビューでは、天才プログラマー/スーパークリエイタとして、IPAからも認定されたロジカ式の社長、関愛氏に、ロジカ式の優位性や今後の事業の展望、そして「仕事ができる人」とはどんな人かなどを伺った。インタビュアーは、エンジェル投資家の福田和博氏が務める。
ロジカ式とは?民間教育と公教育の二刀流教材
福田:まずは、御社の事業の概要について教えてください。
関:はい、私たちはプログラミング教育という事業の中でも、民間の教育事業と公教育と二つ行っています。民間の事業は、下は未就学児から上は社会人まで使える一気通貫型の15年分にもなるプログラミング教材を提供しています。幼稚園児が手元でカードのブロックを並べてそれをタブレットで読み込むアプリを使いながら、家で親子一緒に学べるB2C向けのプログラミング教材や、小学生になるとロジカ式パワードリルという無学年学習方式のドリル教材があります。ロジカ式パワードリルは、各学習内容や課題が細かく細分化されていて、「教える」という手間がほぼかからないため、未経験のママさんでも自宅でプログラミング教室を開講できるような教材になっています。
また、女の子などプログラミングに興味関心がもてない子どもたちも非常に多いので、アニメや漫画を使った教材もたくさん作っています。こういったところから楽しく学んで、「気付いたらこれプログラミングだったんだ」という風に、プログラミング教育に触れていってもらえればいいな、と思っています。漫画教材は、公教育の分野でも学校に寄贈し、各クラスの図書として置いていただくといった取り組みもしています。
関氏へのオンラインインタビューの様子
中学生からは、Javaなどの本格的に英語を使ってプログラミングを学習するコースも提供していますし、2025年に新設される情報Iという科目に対応して、大学入試の対策教材も開発しています。その大学入試の25%は、実際のプログラミングの問題も出題されるので、それにも対応できる教材をオンデマンドで提供し、困ったときにはチャットで講師が答えてくれる仕組みもあります。
ロジカ式の教室は、基本FCで、現段階で全国40教室くらいあります。また、各地にそのエリアの代理店があって、例えば、北海道だと元日ハム野球選手の田中賢介さんと提携してエリア展開しています。他にも、パソコン教室アビバの子ども向けスクールのバレッドキッズと全国的に全面提携しながら教材提供したり、色々な大手企業とコラボしながら教材作り、イベントなど様々な事業をやらせていただいております。
公教育の分野では、ロジカ式 for SCHOOL というプログラミング教材(主に小学校向け)を提供しています。現在、基本の科目とプログラミングを絡めた学びが小学校では必修化されているので、A・B分類という各学年で科目と連動した学びが得られる教材に加え、C・D・E分類という総合の時間に対応するような内容も提供しています。また、小学校では、教材があっても教えられる先生がいないという問題が大きく、プログラミング教育が全然進んでいないのが現状なので、弊社は講師派遣サービスも行っています。そこでOJTのような形で先生を現地で訓練しながら一緒に授業を作っていくのですが、これも人気のサービスとなっています。
プログラミングは人間力を磨く
福田:ありがとうございます。私は小学校時代にBASICを入力して、プログラミングをしたりしていて、この情報系の世界には馴染みがありますが、そうではない人が大半だと思います。そして今、全員がITを学ばなければならない時代で御社の事業は社会貢献的であると同時に未来を見据えていますね。一つ気になるのは、なぜプログラミングの世界から入って、教育の分野に焦点を当てられたのかな、ということです。
関:私が23歳の時からずっとやっている企業研修の講師としての経験がきっかけです。コミュニケーションが苦手で人に教えられないエンジニアが非常に多い中で、私は元々人とのコミュニケーション能力は結構ある方だったので、お声がけいただきました。23歳の時の最初の新入社員研修は大手メガバンクの講師で、皆さん学歴も高い同い年の方ばかりだったので、私は自分の学歴と年齢をひた隠しにして講師をしていた記憶があります。
講師をしている中で、色々な課題を感じましたが、そのうちの一つが、どんなに高い学校教育でも働き方は教えないので結局社会人になった途端に、みんな一年生に逆戻りしてしまうということでした。そして気付いたのが、プログラミングを学ぶ人は学ばない人より社会人としての成長速度がものすごく速い、ということです。なぜこんなに急成長できるんだろうって不思議に思っていたのですが、今になって考えるとやはり、プログラミングが非認知能力、人間力みたいなものを育ててくれていたのだな、と思います。当時は、よく分かっていませんでしたが、それを感覚として感じていました。
ロジカ式で鍛えられる人間力(社会人基礎力)
福田:やはり、ロジカルに考えられるようになるということですか?もう少し詳しく、ビジネススキルとして何がプログラミングで育てられるか、教えてもらってもいいですか?
関:具体的にいうと、プログラミングではトライアル&エラーを何万回も繰り返すので、試行錯誤する、間違っても諦めないという習慣の力が鍛えられます。また、小さいことを諦めずにできれば大きいこともできるようになるとも思います。こういう風に問題解決力や、人間として基本的に必要な力が習慣として身に着くので、それはすごいメリットだと思っています。
福田:それは面白いですね。単にITツールを使いこなすだけでなく、生きていくための力が身に付くっていうところが情報教育の効果でもあるんですね。
このプログラミングが人間力を鍛えるという話にもつながってきますが、Missonにもある「仕事ができる人」とは、関さんのお考えではどのような人ですか?
関:指示待ち人間にならない、自分で考えて行動できる人だと思います。
「何をすればいい?」で終わらずに、「なぜその仕事をやるのか?」という目的意識を持ち、自分で仕事を考えて生み出したり、提案していける力を持っているということです。なので、私たちはプログラミング教育の中で、常に目的意識を持つよう子どもたちに勧めていて、そのための30分くらいのトレーニングもあるくらいです。将来の目標に向けてのマイルストーンを作りつつ、今週の目標も設定して、それらをアプリに登録して、管理できるようになっています。
福田:それもプロジェクトマネジメントツールや進捗管理的手法として、教育、人づくりにも活きてきますね。
強みはカバレッジの広さ:主要教科から総合の時間まで全てこれひとつで
福田:スマイルゼミなど、大手企業もプログラミングと教科の学びを組み合わせた教材を提供していますが、御社の製品の優位性は何だと思いますか?
関:ロジカ式の教材は、教科の学びと組み合わせたA・B分類の授業と総合学習に対応したC・D・E分類の授業が両方揃っているところが強みです。まず、A・B分類の科目と連動した教材を作っている会社は非常に少ないですし、一年生から六年生まで全学年に対応した教材というのもあまり見かけません。教科も算数や理科に偏りがちになりますが、ロジカ式はより幅広い教科に対応しています。
福田:確かに。例えば、家庭科の「おいしいご飯をつくろう」という授業とプログラミングの課題を組み合わせるっていうのは中々面白いですね。
各教科にも総合の時間にも対応できる教材
関:そうなんですよ。またもう一つ強調したいのが、総合の時間や放課後のクラブでやるような内容をカバーしたC・D・E分類も充実しているという点です。結局A・B分類の中でできることって、年間4コマとも言われていて、本当にごくわずかで。でもそれで、「本当にプログラミング教育になってるのか」という疑問があります。なので、C・D・E分類の教材もすごく必要なんです。その点、例えば他社さんの場合は、A・B分類だけの教材とかC・D・E分類だけの教材になっていて、両方はできないんですね。でもロジカ式なら、A・B分類とC・D・E分類がアプリを使って全部できるようになっていて、それで自宅学習もできます。実際に利用されている学校からは、両方できて、しかもちゃんと連動できるから困らないと、ご好評いただいております。
福田:なるほど、この辺のカバレッジの広さというのが御社の特徴なんですね。
関:はい、さらに、講師派遣サービスも他社と比べた弊社の特徴です。弊社からしたら正直コスパは非常に悪いですが、プログラミング教育が普及しない講師不足というボトルネックの問題解決のため、ここまでやりますよ、という覚悟でいます。
大学入試新設科目「情報I」はロジカ式で対策
福田:業界初の大学入試向けのプログラミング教材「ステラリア」を開発されていますが、手ごたえはどうですか?
関:今色々な塾や学校にかなり関心は持っていただいていて、10月からはとある上場企業と一緒に全国で販売網を広めていく予定です。ただ、塾の場合は、情報Iの試験が来年の1月行われるのが初めてなので、半分くらいはまだ様子見、といった感じですね。結局情報Iという新たなコースで、収益化できるのか、生徒が集まるのかというリスクも結構あるので。なので、私たちもまずは、情報Iの模試から作って、それを営業することにしました。模試だけなら、一部数百円だけでご購入していただけるので、まずは塾の生徒に模試を受けてもらって、そこから危機感を感じて情報Iのコースを受講する、といった動線を作ろうと思っています。
福田:なるほど、さすがですね。やはり、皆さんどう市場開拓していけばいいか分からない中で確かに模試は一番効果的な入り口ですね。
関:模試は現在、大手学習塾の夏期講習で使っていただいたりしています。あとは全国のコンビニで利用できるeプリントサービスと組んで、コンビニで弊社の模試を印刷できるよう、今提携して、進めています(秋くらいを予定) 。
福田:すごいですね、関さんのお話からはビジネス展開力もすごく感じます。コンビニのネットワークを使えば地域差もなく、幅広くアプローチできますしね。
未来を、そして世界を見据えるロジカ式の今後
福田:講師派遣や教材開発、研修と非常にアイデア豊富な関さんでいらっしゃいますが、今後の展開に関しても教えていただければと。
関:直近で力をいれているのが二つあります。一つは、企業向けのリスキリング研修です。現在、子どもたちのITリテラシーが高まってきている中で、今働いている世代のITリテラシーの低さが課題になっています。今の子どもの世代が新入社員になる2030年頃には、このギャップが社内で生まれて、コミュニケーションが取れなくなってしまうと言われています。なので、今の働く世代がリスキリング(学びなおし)を行っていく必要がある、ということは経産省も訴えている通りです。
その点、弊社は子ども向け教材を作っていることもあって、他社よりはるかに分かりやすい教材を提供できるといった強みがあります。こういった強みを活かしたプログラミング教材に加え、ChatGPTやSNSといった需要がありそうな内容もeラーニングの教材化して展開をしています。ここら辺は、次年度以降弊社の主力になってくると思います。
もう一つ力を入れているのが、「感情に寄り添うAIアシスタント」という生成AIと感情分析を絡めたサービスで、特許も取得しています。これは、パソコンやスマートフォンのカメラによって測定された人の生体反応と、入力された音声やテキストから、人の感情を推測し、その情報をベースに生成AIが感情に寄り添ったメッセージを作ってくれるというものです。実はこの生体反応による測定はかなり精度が高くて、表情でごまかせる感情もごまかしきれないようになっています。
この技術を使うと、AIが人の感情を理解して声かけをしてくれるような仕組みが出来上がります。例えば教育の分野なら、AIアシスタントが画面の中から能動的に困っているのを察知し、声をかけてきてくれる、といったこともできます。こういったAIコーチングができるようになれば、プログラミングの講師不足という問題も解決できます。また、取得した特許も「生体反応による感情分析と生成AIを使ってメッセージを作る」という内容なので、教育以外の労務や福祉といった分野でも活躍できると思います。今は、特許管理士兼プログラマーでもある私の父を中心にこの特許ビジネスが大きく動いていて、複数の関連特許や国際特許の出願も行っています。
「感情に寄り添うAIアシスタント」
福田:親子でタッグを組んで、素晴らしいですね。
最終的にはアフリカの貧しい子どもたちにもロジカ式教育を提供したいと仰っていますが、それに関してはどうですか?
関:はい、これもAIビジネスに繋がってきます。AIコーチングができれば、講師の人件費を削減できるので、色々な外国の子どもたちがプログラミングや情報スキルをしっかり学んで成長できるようになると思います。私は、そういう土壌を築き、彼らが自分で稼げるような仕組みを作りたいと思っています。実際今アフリカで学校をやっていらっしゃる日本人の方などと組んで、試験的に導入していくというお話をさせていただいたりしています。
福田:素晴らしいですね。人口を考えても、アフリカの人たちがそういう高度なスキルを身に付けて収入を得られるようになったら本当に変わってくると思いますね。
最後に、今後調達する資金はどのような用途で使っていきたいとお考えですか?
関:次のシリーズで5億円程の資金調達を検討していますが、主にAI開発とその国際特許の取得に充てていきたいと考えています。
福田:なるほど、日本だけじゃなく、海外にも打って出るぞ、ということですね。
本日はありがとうございました。
インタビューを終えて
ITリテラシーが現代社会を生きる上で必要不可欠なスキルとなった今、ロジカ式の目指す教育の姿は私たち国民全員が目指すべき姿と一致していると感じました。関さんがロジカ式の事業を通じて伝えたいのは、ただのスキルとしてのITやプログラミングではなく、人間としての高みを目指す力そのものであるということがインタビュー全体を通じて伝わってきました。近年社会の変化のスピードが加速する中、「人間力」という不変的に使えるスキルを磨けるロジカ式の教育はきっと今後の教育のスタンダードとなっていくことでしょう。
【担当ライター】Hinako Saito
株式会社ロジカ・エデュケーション事業概要
「すべての子どもたちが経済的に自立できるチャンスをプログラミング教育を通して提供する」ことを目的に2018年に設立。幼児から大人まで幅広い層を対象にしたプログラミング教材、ロジカ式をはじめとし、動画制作、イベント開催、AI開発など様々な事業を手掛ける。日本電気株式会社、LINE株式会社など大手企業をはじめ、元野球選手など、多方面とコラボしながら様々なイベントや事業も行う。日本中小企業大賞2022も受賞した今注目のスタートアップ企業。
【PROTOCOL プロフィールページ】
株式会社ロジカ・エデュケーションのプロフィール - PROTOCOL
社名: 株式会社ロジカ・エデュケーション
所在地:大阪府池田市室町4-49COZY 室町1F
設立:2018年11月12日
代表者:代表取締役CEO関愛
資本金:5,995万円
事業内容(サービス紹介 – ロジカ式 (logica.education)):
●教材開発
・ロジカ式(対象:教室オーナー)
・ロジカ式 for SCHOOL(対象:小学校)
・ロジカ式LITE(対象:学童保育)
・ロジカ式PBL(対象:中学校・高校)
・ロジカ式pre SCHOOL(対象:幼稚園・保育園)
・ロジカ式ベンチャー(対象:中高生)
・情報科目大学入試対策教材「ステラリア」
●動画撮影・制作
●イベント・セミナー運営
●システムコンサル・開発
●プログラミング研修
Misson: 子どもたちの輝ける未来を創造する
Value(行動指針):
①Givers Gain:与える者は与えられる。受けるよりも与える者となろう。
②Pursue Quality:どんな時でもクオリティは大事。常に質の高い仕事を意識しよう。
③Bring Change:安定よりも変化を楽しもう。世界にイノベーションをもたらそう。
関愛氏 プロフィール
1984年、大阪府箕面市生まれ。12歳のときに北海道士幌町へ家族で移住。家庭の金銭的な事情により高校へは行けず、15歳から肉体労働の傍らプログラミングを独学で学び始める。18歳で開業しシステム開発の道に進む。19歳で経済産業省の政策実施機関・IPAより、天才プログラマー/スーパークリエータの認定を受け、23歳からは大手有名企業にて新入社員研修の講師を務める。企業研修講師としてYahoo Japan、UFJ 銀行、日本生命をはじめとする大手企業で1,500名以上の現役プログラマーを育成してきた。「人として真に成長できる、価値ある教育をすべての子どもたちに届けたい」という想いから、34歳で株式会社ロジカ・エデュケーションを設立。現在はプログラミング教育ブランド「ロジカ式」を全国展開する他、AI事業なども手掛けている。
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インタビュアー 起業支援家/エンジェル投資家 福田和博氏 プロフィール
東北大学工学部機械知能工学科→大学院情報科学研究科を修了。
㈱東芝 研究開発センターでICT分野の研究開発に従事後、ソニー㈱でオーディオ商品の企画・戦略・事業開発を担当。
2015年に横浜で起業し、複数の新規事業の立上げとM&A Exitを経験後、起業支援家/エンジェル投資家としてハンズオン型で支援中。
(一社)日本ワーケーション協会 公認ワーケーションコンシェルジュ
iU(情報経営イノベーション専門職大学)客員教授
NEXs Tokyo(東京都スタートアップ支援施設)投資家メンター
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