Published 30 Aug 2021

ストックオプション(SO)

ストックオプション(SO)

株式会社の取締役や従業員が、自社株をあらかじめ定められた価格で将来取得できる権利のことをストックオプション (SO)と言います。取得者は株式を売却することで、株価の上昇分の報酬を得ることができます。SOの売却によって 発生する報酬額は、企業の業績から決まる株価に一致(連動)し、取締役や従業員の株価への意識は高まるため、企業 の業績向上のためのインセンティブとなります。

ストックオプション (SO)の仕組み

ストックオプションには大きく分けて、3つのプロセスがあります。




① 権利の付与

取締役や従業員は予め定められた価格で、株式を購入する権利を付与されます。


② 権利の行使

取締役や従業員が行使(株式の購入)をするためには、インセンティブ設計の観点から、ほとんどの場合は、EXIT(M&A又は上場)をすることが条件になります。


③ 株式売却

SOの権利が行使をされると、自社の株式を取得できるので、EXIT(M&A又は上場)の段階で、基本的に売却することができます。上場した場合、その後は株式が上下する可能性があるので、売却のタイミングは個人の判断に委ねられます。


導入している企業

ストックオプション (SO)は、株式を売却した際のキャピタルゲインが持ち手のインセンティブとなっているため、基本的には、EXIT(M&A又はIPO)を目指しているスタートアップや上場企業で導入されています。


メリット

・優秀な人材を獲得することができる

・従業員のモチベーションを向上・維持することができる

・現金で報酬を払わずに協力を得ることができる


デメリット

・株式の希薄化に繋がってしまう

・株式売却時点で人材が流出する可能性がある

・企業の業績の低下で、従業員の士気が下がる可能性がある


SOの種類

SOには無償/有償、税制適格/非税制適格という分類があります。



無償SOと有償SOの違い

無償SO:SOを付与する際にお金が発生しない

有償SO:SOを付与する際にお金が発生する


税制適格SOと税制非適格SOの違い

税制適格:付与対象者や行使期間などに関する厳しい適格要件を満たすことで、権利行使時の給与課税を免れる税制優遇措置を受けたもの

税制非適格:適格用件が存在しない代わりに、権利行使時の給与課税が課されてしまうもの

また、有償SOの一つで有名なものに信託型SOがあります。


信託型SO

信託型SOは、発行したSOを信託に預けて、信託満了まで保管し、SOに交換できるポイントを役員・従業員に付与していき、信託満了時にポイント数に応じてSOが割り振られるというスキームを活かしたSOのことです。利用するメリットとしては、通常のSOは必要に応じて都度発行が必要になるのに対し、信託型SOは基本的には一回の発行で済み、また割り当て先を後から決めることができるため、好きなタイミングで誰にでもSOを渡すことができることです。


導入プロセス

基本的にSOの発行は、経営の片手間で行うことはできないため、まず顧問弁護士・会計士に相談を行うべきです。

実際に導入する際の一般的な作業プロセスは以下の通りです。

1. 取締役会(非設置の場合は株主総会)での決議

2. 発行後の登記の手続き

3. 潜在的な株数を把握するための名簿の作成


導入の注意点

SOを発行する際は、経営と税務の観点から、以下の点に注意をする必要があります。


① 給与所得としての課税が行われないように設計する

SOの行使時に給与所得課税が行われると、取得者が得られる経済的利益が損なわれてしまう可能性があるため、

行使時に給与所得課税が行われない、以下のSOを選択することが望ましいです。

    1. 有償型ストックオプション

    2. 税制適格ストックオプション(無償型)

    3. 信託型ストックオプション


②  権利の行使の結果として起こる株式の希薄化を念頭に置く

権利の行使時には、新株が発行されるため、既存の株式が希薄化されます。

株主総会特別決議の可決ラインは議決権の3分の2なので、このラインを意識して、SOの発行数等を調整する必要があります。


③ SOの行使の要件を適切に設定する

取締役や従業員により長期間、会社に貢献してもらうために以下のような制限を設けることができます。

    1. 在職要件:会社の従業員ではなくなった時点で、SOの行使を認めないとする用件です。

    2. 行使期間要件(ベスティング):付与から一定期間はSOの行使を認めないとする用件です。