Yui support(ユイサポート)株式会社は、静岡県浜松市を拠点に、地元の農産物を活用したビジネスを展開している。【農×食×人を結び、新しい価値を創造し未来へつなぐ】を基本理念とし、生産者、販売者、消費者皆が地域の食に関わり協力し、共存できる仕組みを作ることにより地域の幸せ地域の発展を目指している。代表取締役の玉置麻菜美(タマキマナミ)氏は、これまでスモールビジネスとして地域に根ざした活動を行ってきた。しかし、今後はこれを全国規模のスタートアップに成長させる事に挑む。ユイサポートの理念、地域に根ざしたスモールビジネスモデルから全国規模へのスケールについてインタビュアーの福田和博氏が玉置氏に話を伺った。
浜松発、地域と共存する多角的な農産業ビジネスモデル
福田:ユイサポートさんは静岡県浜松市を拠点に、地元の農産物を活用したビジネスを展開されています。具体的にはどのような事業をされているのか、教えていただけますか?
玉置:事業内容には様々なことが書かれていますが、主軸となっているのは、地元の農産物を取りまとめ、保育園や病院、施設などに納品する「地産地消給食の卸事業」です。これはB to Bの事業で、地域密着型のビジネスです。その一方で、私たちは自社のオリジナルブランド「結苺(むすびいちご)」を展開し、いちごの生産から販売までを行い、地域に根ざした多角的な事業を行っています。この二つの柱が私たちの主要な事業です。
福田:地元の農産物を基盤としながら、地域社会との共存を目指したビジネスモデルですね。特に浜松という土地ならではの強みを活かした事業展開が印象的です。ビジョンについても教えていただけますか?
玉置:ビジョンとしては、「農×食×人を結び、新しい価値を創造し、未来へつなぐ」という理念のもと、生産者や消費者が共に地域の食に関わり、協力・共存できる仕組みを作り、地域の発展に貢献したいと考えています。
子育てからインスピレーションを得た、ユイサポート設立のきっかけ
福田:ユイサポート設立のきっかけが、出産や子育ての中で得たインスピレーションだと伺いました。もう少し詳しくお聞かせいただけますか?
玉置:私が子供を育てていた頃、地域の農産業の豊かさを実感しつつも、その未来に不安を感じる瞬間が多くありました。私がこの会社を設立するきっかけとなったのは、10年前に子供たちと一緒に散歩をしていた時です。当時、子供は5歳と3歳でしたが、散歩中にふと、この豊かな農業地域が30年後にはどうなっているのだろう?と考えたんです。実際に生産者の皆さんと話す中で、生産者からは「もう農業をやめる」という声も聞いていました。耕作放棄地が増えている状況も目の当たりにしていました。統計をみたり目の前の農地の草が生い茂る様子をみて農業をやめる人が増えている現実を体感し、地域の農業が豊かで、人々が農業を通じて繋がっている風景を未来にどう残すべきかを考えるようになりました。何とか今ある風景を未来に繋げられないかと強く思うようになりました。
自分も当時は子育てに追われて、仕事がなくて苦しい状況でしたが、再び仕事を始めたいという気持ちがありました。過去のように農業と地域が結びついて仕事が生まれ、コミュニティも形成される環境を失わせてはいけないと考えました。そして、それを単なる地域活動ではなく、事業として発展させ、次世代に引き継げるものにしたいと思ったのが、ユイサポートの設立につながりました。
ローカルからグローバルへ、農業体験を軸にした新プラットフォーム展開
福田:ユイサポートさんでは、地域の農業体験や地産地消の仕組みをプラットフォーム化して、より広範囲に展開していくという取り組みをされているそうですね。具体的にどのような形で進めているのでしょうか?
玉置:私たちの最初の事業は、地域の女性たちと協力して農業体験やフリーペーパーの制作を行うことから始まりました。現在は、地産地消の給食卸事業をBtoBの形で展開し、システムを使って農家さんと消費者をつなぐ仕組みを整えています。
玉置:今後はこれを一つにまとめたプラットフォームを作り、農業体験やイベントを含む様々な要素を統合していきたいと考えています。特に、農業体験を通じて、消費者が農業の現場を直接体感することで、農業の価値や魅力を理解してもらい、生産者との強いつながりを形成したいです。将来的には、私たちのモデルを全国展開し、農業と地域の結びつきをさらに広げていくことを目指しています。
福田:新しいプラットフォーム構想では、どのような収益モデルを描いているのでしょうか?
玉置:農家さんが農産物の生産情報や農業体験の内容を入力し、それに基づいて野菜の注文や消費者が体験チケットを購入するというシンプルな仕組みを考えています。このプラットフォームを通じて、農家さんはイベントの集客状況を予測できるようになり、必要な準備が効率的にできるようになります。また、収益モデルとしては、農産物販売マージンやチケット販売のマージンを基盤に持続可能なシステムを構築する予定です。さらに、給食卸事業と農業体験イベントの2軸を活かすことで、単発的なイベントではなく、安定した収益を農家さんに提供できるようにしています。この仕組みにより、生産者と消費者が共に価値を共有し、農産物の価格やその背景にある労力も正当に評価される社会を目指しています。
未来への展望
福田:最後に今後の展望について教えてください。
玉置:先ほどお話しした新しいプラットフォーム構想は、産直販売やイベントチケット販売の枠を超え、地産地消や農業体験を中心としたコミュニティ形成を目指しています。地元の人々が仕事を生み出し、外からの人々がその地域に魅力を感じて訪れる。そうしたサイクルを作ることが、私たちの目標です。
福田:収益モデルだけでなく、地域全体の価値向上を目指した持続可能な仕組みづくりですね。農業の未来と地域の発展が一体となったビジョンがとても印象的です。
玉置:これまでスモールビジネスとして地域に根ざした活動を行ってきましたが、これを全国規模のスタートアップに成長させるには、いくつかの課題があります。特に資金調達やマーケティングの面で、外部からのサポートが必要です。最初は主婦として始めたこの事業ですが、今では日本の農産業の素晴らしさを世界に発信するビジョンを持っています。自分たちが目指している未来に向けて、より多くの方々と協力して日本の農産業を浜松から盛り上げたいと思っています。
インタビューを終えて
ユイサポートの玉置氏が、子育てを通じて得たインスピレーションから、地域社会と農業を結びつける新しいビジネスモデルを築き上げ、また新たな大きな挑戦に挑んでいる姿にとても心を動かされた。玉置氏の挑戦し続ける姿は、私たち一人ひとりが持っている力を信じ、自らの手で未来を切り開くことができるということを示してくれているのでないだろうか。特に、地域の農業の未来に不安を感じつつ、それを次世代に継承しようとする強い決意には、女性ならではの細やかな視点と力強さが表れている。このような取り組みは、地域に根ざしながらも、グローバルに広がる可能性を持っていると強く感じた。
【担当ライター】古賀野々華
Yui support 株式会社 / ユイ サポート株式会社
ユイサポート株式会社は【農×食×人を結び、新しい価値を創造し未来へつなぐ】を基本理念とし、生産者、販売者、消費者皆が地域の食に関わり協力し、共存できる仕組みを作ることにより地域の幸せ・地域の発展を目指している。これまでユイサポートはスモールビジネスとして地域に根ざした活動を行ってきた。今後は全国規模に展開してビジネスとして更に成長させる事に挑んでいる。
社名:Yui support 株式会社 / ユイ サポート
創立年月日:2019年04月
本社所在地:〒430-0827 静岡県浜松市中央区立野町302-1
メール:yui.office@yuisupport.net
代表取締役:玉置 麻菜美(たまき まなみ)
理念:【農×食×人を結び、新しい価値を創造し未来へつなぐ】を基本理念とし、生産者、販売者、消費者皆が地域の食に関わり協力し、共存できる仕組みを作ることにより地域の幸せ地域の発展を目指します。
事業内容:
・食品卸事業
学校・病院・飲食店様向けに地産地消(静岡県内)を主としご希望、ご要望に合った食材を仕入れ納品、またご提案。
・商品開発・ブランディング
「食の6次産業化プロデュサー」(愛称:食Pro.)として、事業計画から商品開発、販路開拓まで、相談、プランニングを行います。専門家派遣の制度をご利用、また補助金の活用などのアドバイス。
・イベントプランニング
食に関わる企画、運営をお考えの皆様】農業体験、マルシェ、Cooking講座など食に関わるイベントの企画、提案、プランニング。
・販売開拓
新規就農者・生産者様向けに事業プラン作成、見直し、生産品の販売戦略を一人一人に合ったチームでサポート。
地元の野菜を、給食に!浜松近郊の農家と、子ども園・保育園・飲食店を結ぶ野菜受発注システム「nanashoku.com」です。「イベントやスポットで旬の野菜を揃えて欲しい。」「小ロットだけど届けてほしい。」「オーガニック給食を実現したい!」など取引形態をお伺いしてご要望に沿った物を用意。
・メディア事業(農業体験イベントのメディア運営)
・ママと農園Maman ①地域と食を繋げるフリーペーパー、ママと農園「Maman」の発行。②生産者と消費者を繋ぐママto農園「Maman」イベント企画運営。③子育て世代の意見や視点、消費者へのアンケート調査や座談会形式で行うリアル商品マーティング「Mamanマーケティング」。
玉置麻菜美氏プロフィール
玉置麻菜美 Yui support代表取締役
玉置麻菜美氏は高校卒業後、静岡県で就職。静岡県での出産・子育てを通じて、地域と子供たちに貢献できる方法を模索し、地域の農業と食に強い関心を持ちました。2016年には、県産品のPRや輸出支援を手掛ける市内企業に入社し、さらに知識と経験を積みました。2019年には、農業の衰退や担い手不足が進む中、静岡の豊かな自然と生産物を次世代に繋げるために独立して「Yui support」を設立し、現在も地域の農業や食文化を支える活動を展開しています。玉置氏はは地域全体で農業を発展させることで、持続可能な未来を子供たちに届けたいと考えている。
【参考】既存記事や各種SNSへのリンク集
Yui support(ユイサポート)株式会社
中日新聞の記事
インタビュアー 起業支援家/エンジェル投資家 福田和博氏 プロフィール
東北大学工学部機械知能工学科→大学院情報科学研究科を修了。
㈱東芝 研究開発センターでICT分野の研究開発に従事後、ソニー㈱でオーディオ商品の企画・戦略・事業開発を担当。
2015年に横浜で起業し、複数の新規事業の立上げとM&A Exitを経験後、起業支援家/エンジェル投資家としてハンズオン型で支援中。
(一社)日本ワーケーション協会 公認ワーケーションコンシェルジュ
iU(情報経営イノベーション専門職大学)客員教授
NEXs Tokyo(東京都スタートアップ支援施設)投資家メンター
【PROTOCOLプロフィールページ】
https://protocol.ooo/ja/users/55c8607d-f7a1-46ea-94e5-593785e8db41