2018年9月に創業された、経緯を教えていただけますか。
戸田:私をハブとして、3人とも仕事仲間として長く接点を持ってきました。市川とは20年来の付き合い。当時は私がアニメ会社勤務のプロデューサーで・・・
市川:僕はフリーランスのCGクリエイターでしたね。
戸田:互いに現場の人間として、アニメの仕事をしていました。清水とは、次に勤めた会社で上司・部下の関係です。
清水:新卒入社して、初めての上司でした。
戸田:その後、ギャザリングという会社で独立した時に、清水も創業メンバーでした。
市川:僕も同時期、10年近く前にドメリカという映像会社を創ったんです。そこで、戸田と一緒に携わったキャラクターが「ぐでたま」で。もう、6年くらいになります。
戸田:市川とは昔からファミリー向けアニメ作品をやりたいねという話をしていました。今回「ぐでたまアニメ」で自信がついたというか、手応えを感じましたね。それでさらに、ファミリー向けのキャラクターアニメーション作品を手掛ける3DCGスタジオを一緒にやろうということになったんです。
3DCGに特化するのですね。
市川:ドメリカが扱うのは2Dですから、全く別に立ち上げようと思いました。3DCGという点ではゼロからのスタートですね。あえて、実績あるクリエイターを引き抜くようなことはせず、一緒に成長し、理想を形にしていくことにこだわっています。
戸田:CG自体は実写でもアニメでも、目にする機会が増えているので、映画やテレビ、ゲームといった領域の仕事も十分にありますが、今後は「VR」市場などが期待できます。そこではデバイスやモーションキャプチャー技術も急速に進化していくので、3DCGのニーズも右肩上がりを見込んでいます。
清水:3DCGというツールへの技術的な魅力もありますが、私個人としては「かわいい」キャラクターをこのメンバーで創ることにモチベーションを感じますね。「かわいい」「ファミリー向け」というと、どういうイメージでしょうか。
戸田:「ぐでたま」が一つの象徴ですね。このキャラクターを通じて私たち自身、ファミリー層というユーザーやマーケットに接することができましたから。
清水:2Dアニメ作品よりも3DCGのほうが、世界の人たちには広く受け入れられやすい傾向にあるかと思います。2Dアニメはジャパニメーションというか、アート的、サブカル的な捉えられ方をされる方も未だ多いかもしれませんね。
戸田:海外のキッズやファミリー層には、ピクサーやドリームワークスが製作する3DCG映画のほうが圧倒的に身近です。また近年は、台湾や韓国のスタジオが3DCGアニメを量産していて、アジアのコンテンツ産業はめざましい発展を遂げているんです。我々もそれに追いつかないと。
すると、目指すのはピクサーのような会社ですか。
市川:映像的には目指したいですね。ただ、大人向けマーケットだと競合がひしめいていますから、そこをあえて外して「ぐでたま」で経験のあるキッズ向け、ファミリー向けを狙っていきたいです。
戸田:ピクサーを目指すとは言うのは易しで、容易ではありません。彼らが優れている本質的な要素が3つあると思っています。まずはアート、クリエイティビティという点で、私たちもかわいいキャラクターを描く能力は磨いていきたいと思っています。もう一つは、CG技術、エンジニアリングのすごさ。高度なデータ処理能力がなければハイクオリティの映画は作れません。この2つを賄うために優秀なクリエイター、エンジニアを多数抱える必要と恒常的な設備投資がありますから、3点目は資金力になります。資金調達や投資回収など、ファイナンスの仕組みや国際マーケットが不可欠です。
このように人・技術・資金・市場がバランスよく整って初めて、ピクサーになりたいと言えるもの。ですからプロデューサー、経営者として私は、グローバルに作品展開を目指せるキッズ&ファミリー向けの3DCG市場を中心に考えています。
「モンスターズエッグ」という社名に込めた思いはどんなものでしょうか。
市川:ロゴも含めて、完全に「ぐでたま」のイメージですね(笑)。やはり第2、第3の「ぐでたま」を世に送り出したいというのが原点です。新しいもの、よくわからないものを生み出す、というという意味も裏にはありますけれど。
戸田:海外市場を視野に入れる上で、英語でも通用する名前にもしています。映画などで、クレジットとして出ることもイメージしました。「ぐでたま」を目安に例えると、どんなものを創っていきたいですか。
清水:「ぐでたま」もそうですけれど、どんなにエッジなものであっても「愛される、かわいい」キャラクターであることは大事にしていきたいですね。愛情や愛着をもっていただけるものを、この会社から送り出していきたいです。
市川:ダレていることで共感される「ぐでたま」とまた違った悩みだったり、もっと前向きさがあったりするキャラクターにもトライしてみたいですね。
戸田:私は、小学生の男の子の父なので、息子が喜びそうな男子向けキャラも考えてみたいです。乗り物キャラとか。メイド・イン・ジャパンを打ち出すなら、日本の自動車文化を扱った物語も面白いかもしれませんね。
そんなモンスターズエッグが求める仲間は、どういう方がよいでしょうか。
市川:3DCGについては未経験でも構いません。それよりもキッズ&ファミリー向けというところに興味や関心、面白みを感じてくれることのほうが大切です。ポテンシャルを見ますので、CGすら未経験でも、絵さえ描ければよいです。自主制作の映画づくり経験があるなど、僕たちの目指すものづくりに関われる要素があると思えれば、ぜひ門を叩いてもらいたいですね。僕は、ドメリカでもそうやってクリエイターを育ててきたので、ある種の自信があるんです。クリエイティブな人と仕事したいですね!
日本の3DCGコンテンツはファイナルファンタジーのようなバトル系がメインストリームですが、そうじゃない、温かかったり、かわいかったりするものを描きたいクリエイターもいると思うんです。何か違うなと思っている人、ぜひ来て、ここで発散してください。
戸田:大企業ではないベンチャーなので、製作過程のパーツでなく、全般的に関わることができます。ですから、オペレーターではなく「クリエイターとして」成長できるでしょう。むろん、待ちの姿勢では困ります。積極的、意欲的に仕事に関わっていける人を求めています。また、日本市場で希少なファミリー向けにおける映像表現のノウハウを体感できるのも当社のメリットです。
現在、2名のクリエイターを、2019年中に20名体制へと考えています。立ち上げ期のコアメンバーになるチャンスです。世界に向けて自分の手掛けたエンタテイメントを送り出す喜びやワクワク感を、ぜひ一緒に感じながらチャレンジしていきましょう。
清水:特定の資本による、しがらみみたいなものがありません。それでいて、2人がこれまで培ってきたものがある。ですから、ベンチャーらしくフレッシュだけれども、実は基盤は強固、という良いとこどりはできていますね。
そういう恵まれた環境ですが、スタッフには自分で目標をちゃんと設定し、更には昇華していけるような人であってはほしいです。日々のことに振り回され過ぎず、信念や初心を大切に突き進んでもらいたい。もちろん、私個人としても組織としてもそうありたいと思っています。