Published 07 Aug 2021

日本のスタートアップ投資のパフォーマンスがアメリカより優れている理由

日本のスタートアップ投資のパフォーマンスがアメリカより優れている理由

日本のスタートアップエコシステムは近年目覚ましい発達を迎えています。日本国内のスタートアップ資金調達額は年々と伸びており、2012年から2019年にかけて約8倍に成長しました。今後も引き続き伸び続ける可能性が高いと考えられており、今のうちから注目しておく価値があります。しかしながら言語の問題や独特のマーケット環境により多くの海外投資家にとって日本のスタートアップ投資はブラックボックス化されています。

この記事では、KSK Angel Fundとして日本のスタートアップへの投資を行い、Dreamers FundのManaging Partnerとしてアメリカのスタートアップへの投資を行ってきた私の立場から考える日本のスタートアップエコシステムとその魅力や可能性について説明します。


結論

さて、皆さんは日本のスタートアップマーケットに対してどのような印象でしょうか。

投資家の多くは、市場の小ささやユニコーン企業の少なさにより、あまり大きな投資リターンが見込めないというネガティブな印象を持っているかもしれません。


しかし実際には日本のスタートアップ投資はアメリカと比較してパフォーマンスが出しやすい環境になっています。

こちらの2019年12月末時点でのアメリカのVCと日本のVCのそれぞれのフォーマンスベンチマーク資料をご覧ください。



出典:

・Preqin-JVCA-Performance-Benchmark-Update‐December-2020-JP.pdf:https://www.preqin.com/insights/research/factsheets/performance-benchmark-update-for-japanese-venture-capital-japanese-version

・US VENTURE CAPITAL:https://www.cambridgeassociates.com/wp-content/uploads/2021/02/WEB-2019-Q4-USVC-Benchmark-Book.pdf


ネットIRRベースでは2010年から2015年ビンテージにかけて15%以上、アメリカのVCと比較しても2013年と2015年のビンテージのファンドを除いて全てアメリカを上回る結果となっています。

また、TVPIに関しては、日本のVCには未実現利益について国際基準と異なり、マークダウンのみを行いマークアップを行わない会計処理を行なっているVCも存在し、複数の時価評価基準が混在するため正確な比較はできないものの、2010年から2014年ビンテージのVCに関しては中央値が全て2倍を超えています。マークアップを行わない方法で会計処理を行っているVCが存在することを考慮すると国際会計基準に合わせた場合、日本のVCのTVPIはさらに大きくなる可能性があり、TVPIの観点でもアメリカのVCと比較して日本のVCの方が実際には良いパフォーマンスを上げていると言える可能性があります。


高パフォーマンスの理由

日本のマーケットの小ささやユニコーン企業の少なさにも関わらず、日本のVCがこのようなパフォーマンスを上げている理由は日本のエグジット環境(特にIPO環境)における大きな違いにあります。

日本には東証マザーズ市場という新興企業向けの上場マーケットが用意されており、時価総額50億円の企業でも上場が可能となっています。

2010年以降、2021年5月までにマザーズ市場に上場した315社の上場日の時価総額は平均199億円となっており、ユニコーンの基準となる1000億円の5分の1です。一方、同期間に米ナスダックに上場した1705社の上場日の時価総額の平均は935億円と、こちらも5分の1近くも差があります。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO72437420R30C21A5TCR000/?unlock=1


もちろんこういったスモールIPOが多い状況は日本からユニコーン企業が生まれにくい要因でもあり、ネガティブな側面も存在しますが(その側面についてはまた別の機会に触れるとして)、日本のマーケットの上場ハードルの低さは裏を返せば投資家にとってのエグジットのしやすさ、利益の確定のしやすさでもあります。

このように、小さな時価総額でも上場できる日本のスタートアップ市場への投資はローリスクミドルリターンであり、ポートフォリオの一部として組み込む価値があると考えられます。


終わりに

ここまでの説明で日本のスタートアップ投資に興味を持った人の一番の懸念が、言語の問題によってブラックボックス化されていて、日本のスタートアップに投資をしようと思っても難しいのではないかということだと思います。

KSK Angel Fundで現在インキュベートしているPROTOCOLという会社がこの問題を解決しようとしています。彼らは日本のスタートアップと投資家を繋ぎ、資金調達を加速させることを目的とし、海外投資家が日本のスタートアップにアクセスできるデータベース/マッチングプラットフォームのようなサービスを作っています。

興味がある人はこちらから登録するか、僕に直接連絡をください。

*このポストは投資助言や投資勧誘を目的としたものではありません。

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