Published 02 May 2023

【PROTOCOL独占インタビュー】新しい時代の法律事務所を作る

【PROTOCOL独占インタビュー】新しい時代の法律事務所を作る

「失われた30年」からの自由を手に入れ、新しい時代の法律事務所を作る。

今井健仁氏は、東京大学を卒業後、五大法律事務所のTMI総合法律事務所を経て、弁護士法人XP法律事務所、X-border Partners株式会社をはじめとする、XPグループを立ち上げた。

今井氏は、弁護士として活動する中で、AIや各種テクノロジーも利用しながら、士業間や国境のクロスボーダーを当たり前にすることで、「法的知見によって社会をデザインする」という新しい時代の法律事務所を作るため、独立を決意した。

このたび、そんな今井氏に、インタビューを実施し、その壮大な野望に迫った。


-------今井さんの幼少期の夢はなんですか?


幼少期の夢は総理大臣になることでした。


-------総理大臣!幼少期から総理大臣を目指すこととなった、何かきっかけがあったんですか?


物心つき、新聞を読んだり社会制度を学んでいったりするうちに、

「このままの社会の仕組みでは、世の中が良くならないのではないか?」

という違和感を強く感じるようになりました。

周囲を見渡しても、「この課題に真剣に取り組もうとしている人はほんの一握りだ」という事実に直面し、自らがこの世の中を変える使命を持たざるを得ないと感じました。そして、気づいてしまった自分自身、世界をよりよくするために行動を起こさなければならないという思いが、一層強まっていきました。


-------すごい使命感ですね。ご両親の影響はあったんですか?


両親がインテリアデザイナーであることもあり、小さいころから、デザインが持つ影響力というものを意識することが多くありました。

しかし、私の興味は芸術よりも世の中そのものに向いていました。そして、政治こそ世の中をデザインすることであり、自分のやりたいことなのではないかと思うようになった、という意味では、両親の影響もあったように思います。





-------世の中のデザイナーが政治家、とすれば、インテリアデザイナーのご両親からも色々な影響を受けてらっしゃるということですね。学生時代は勉強漬けの毎日だっだんですか?


中学高校時代は、一貫校だったこともあり、勉強はそこそこで、学校行事に打ち込んだ6年間でした。生徒会長をやったり、音楽祭というクラス対抗の合唱祭では6年間指揮者をやったりして、高3の時には自分のクラスが優勝できたのも懐かしい思い出です。

大学時代は、世間で言われる典型的な日本の大学生活を過ごしてしまい、ロースクールでようやく法律に真面目に向き合い始めた、というのが正直なところです。


-------筑波大学附属駒場中・高等学校卒、東京大学卒と伺っていたので勉強ばかりの日々かと思ってました。


世の中をデザインするようなことに関わっていきたいな、という想いはあったものの、世の中のデザインには言葉を使うことが必要不可欠だ、ということに気づき、話すことをはじめとするコミュニケーション力が自分には全然足りないな、という課題を個人的にずっと感じていました。

とはいえ、ロースクールまでは、勉強の出来不出来で評価される世界にいたので、もっと勉強にフォーカスしておけば、もっと別の人生もあったかなとは思います。


-------総理大臣を目指していて今は弁護士の今井さんが、話すことに課題感を感じていたというのはある意味興味深いですね。


小学校の頃は、教室で友達たちが話しているのを聞いて、「どうやったら面白い流れで話ができるんだろうか、楽しく雑談するって結構難易度が高いんだな」と感じていました。

中学高校時代、リーダー的なことを積極的にやろうと思った背景には、人をまとめなくてはいけないポジションにつくことにより、何か変わることができるかもしれない、という思いもありました。

親戚の多くが関西人で、オチのない話をしたり、ツッコミを入れたりしないとどこか気持ち悪い、という雰囲気で育ったのも、もしかしたら関係あるかもしれません(笑)。


-------大学在学中には参考書を執筆したと聞いており、東進ハイスクールの林修先生の授業で取り上げられたという噂も伺っております。


『現代文の解法 (東京大学への道)』という、大学受験用の現代文の参考書を執筆しました。

現代文とは、究極的には日本語の論理パズルでしかないのに、ロジカルに解くための参考書や塾の講義がほとんど存在しない、という現実に、受験生時代から半ば憤りを感じ、ご縁もあって参考書を書かせてもらうことになりました。

解法がないものは問題として成立しないのであり、論理パズルである現代文という科目を「文章の流れ」などと言ってごまかすような風潮はなくなってほしい、という変な使命感もあって、「現代文の解法」というタイトルの本になりました。

これらの執筆活動も、「世の中にとって必要なことが行われていないのであれば、自分がやる」という思いがあったと思います。






-------ご自身で世の中にあるニーズを見つけ、学生時代から取り組んできたんですね。大学・ロースクール卒業後は、ファーストキャリアとして日本の五大法律事務所と言われている事務所に所属されたんですよね?


TMI法律事務所という大手事務所に入所しました。規模は大きかったものの、自由な風潮があり、代表の田中先生が「やってみなはれ」の精神を大事にされている方であることもあり、他の大手事務所にはない良さがありました。また、在籍中には、スタートアップ企業にも出向し、事業会社の経営陣と一体となって法務業務を行う機会ももらいました。

TMIやスタートアップ企業での出向で得た知見は、独立後、今でも活きているなと思うことが多々あります。


-------弁護士業務を行っている中で、明確になった課題はありましたか?


士業間の連携の不十分さや、日本法と各国の法制度間のハードルの高さというものは、常に感じてきました。

クライアントにとっては、士業に依頼することはなるべく一本化したいというのが本音であるところ、士業間の連携というものは大手事務所でもなかなか難しいと感じました。

また、クロスボーダー取引やグローバルビジネスに関する法律業務を行う際には、各国の法制度間の違いや異なるビジネス文化に対する理解が必要であり、高いハードルが存在することを痛感しました。

独立時から、税理士や社労士といった士業間の連携は大事にしてきましたが、弁護士法人や税理士事務所、社労士法人に加え、クロスボーダーに強みを持つスタートアップ・ファンド等の支援事業を行う事業会社を「XPグループ」という形で統合し、各士業・事業の連携を高め、トータルソリューションを提供できるような組織体制を整えてきました。


-------今回、法律事務所を拡大していくと決断した背景には何がありましたか?


オンライン会議やリモートワークの普及により、働き方の本質について問われている中、ChatGPTに代表されるAIサービスの高度化によって、弁護士という職業の本質的な価値について、改めて向き合わざるを得なくなっていると痛感します。

私としては、弁護士や法律事務所の存在意義の見直しが急務で、抜本的な変革が求められていると考えており、強い危機感があります。

その危機感のもと、新しい時代の法律事務所を作り、社会に貢献していかなくてはいけない、という強い使命感を持ったということが背景としてあります。





-------詳しく聞かせてください。


AI時代における弁護士の価値とは、

「1 トータルソリューションを提供するリーガルコンサルタント」

「2 テクノロジーによる法的知識のリーズナブルな提供」

の2つだと考えています。

知識そのものの価値が一気に下がった今、単なる法的知識を提供するだけでは弁護士の存在意義がありません。企業法務、一般民事、いずれの分野にせよ、課題解決のために、商習慣を踏まえ多方面との交渉を含んだトータルソリューションを提供するコンサルティングサービスこそが、AI時代に求められる弁護士の価値のコアな部分です。

一方で、AIなどのテクノロジーによって法的知識自体はコモディティとなっていく中で、整理された情報をリーズナブルな価格帯で提供し、世の中全体のリーガルマインド向上に寄与する、ということも、弁護士の価値としては求められていく部分だと考えます。

XP法律事務所は、「1 トータルソリューションを提供するリーガルコンサルタント」と「2 テクノロジーによる法的知識のリーズナブルな提供」の2つを両方達成することで、次世代の法律事務所の在り方と価値を提供していくことができればと思います。


-------XPが掲げている「法的知見によって社会をデザインする」というキャッチコピーも、次世代の法律事務所像を表しているということでしょうか?


おっしゃる通りです。トータルソリューションと一言で言っても、どのような順番でどのようなアプローチを誰に向かって行うか、ということの組み合わせをどのように決めるか、という業務の本質は、目的を達成するための計画を行い実現化することであり、まさにデザインそのものの営みです。

また、コモディティ化していく法的知識をどのように整理し、どのような人たちを想定して、どのように届けるか、ということも、デザイン的思考が強く求められます。

弁護士が今後もプロフェッショナルとして、価値ある職業であるためには、自身が身に付けてきた知識と経験を、社会課題を解決するためのソリューションへとデザインして、社会に貢献し続けることが必要です。


-------最後になりますが、どのような人と一緒に働きたいですか?


次世代の法律事務所像を追求することに、真摯に向き合うことのできる人を歓迎します。

単なる法的知識の提供を超えて、社会のデザインということに挑戦し、国際社会に貢献しようとすることで、新たな価値を創造する、積極性をもった方と、一緒に未来を作っていきたいです。

私たちは、所属するメンバーが、心の底から「弁護士になって良かった」「この法律事務所のメンバーで良かった」と感じ、誇りを持って活動する、そのような組織であり続けたいと考えており、そのような意味での事務所像にも共感してくれる人にジョインしてほしいと考えています。

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